ガイ・リッチー監督、『コヴェナント/約束の救出』に込めた「他者のために自分を犠牲にする思いやり」
「人間の特性がもつ本質的な面を掘り下げることが好き」
負傷して自力では1歩も歩けないキンリーを見捨てることなく、長い道のりをほぼ歩いて連れて帰ってくれたアーメッド。キンリーはその恩に報いるべく、アーメッドを救うために、再び戦火へと飛び込んでいく。「この作品では、僕たちが自分のなかにあったらいいなと思う肯定的な性質を表現しました。また、自分の中に人として欠かせない資質があるのかどうかが試されるという環境が舞台になっています」と熱弁するリッチー監督。
「もちろん、自分がどういう行動を取るのかはその時になってみないとわかりません。もし誰かが自らを犠牲にしてまでなにかをしてくれたら、その行為を受けてどんな恩義を感じるのでしょう?それは心地の良い重荷であると同時に、不快な重荷でもあると思います。なぜなら恩義を返さなければならないと考えるから。その人自身に関心があるからではなく、その自己犠牲的な行為に対して借りがあると感じるんです」と監督は受け止めたよう。
絶対に守らなければいけない約束“コヴェナント”が、骨太な映像で活写された『コヴェナント/約束の救出』。本作のテーマについて監督は「僕は、アフガニスタンの地でまったく違う文化をもった人間が、お互いに対して自らを犠牲にするという行動にとても興味を持ちました。人間の特性がもつ本質的な面を掘り下げることが好きなんです。異なる2つの文化の間で、他人本位の行動が交わされるというのは、とてもおもしろいテーマだと思いました」と、米軍兵士とアフガン人通訳との深い絆に心を大いに揺さぶられたようだ。
ガイ・リッチー監督が放つ渾身の1作は、観終わったあと、多くのものを雄弁に語りかけてくる。異国で痛ましい戦争が続いているいまだからこそ、1人でも多くの方々に観ていただきたい。
構成・文/山崎伸子
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