54か国でナンバーワン!スパイダーマンはどうして特別なのか?“オタク”をキーワードに解説!![スパイダーマン・タイムズ#9]
8月11日に公開され、2週目に突入した『スパイダーマン:ホームカミング』。本作から、スパイダーマンは本格的に「アベンジャーズ」を軸とした連作シリーズ“マーベル・シネマティック・ユニバース”に合流。アイアンマンに憧れ、アベンジャーズになりたいと願う15歳の高校生ピーター・パーカーが、壁にぶつかりながらも、がむしゃらに頑張り、真のヒーローへと成長していく姿が、軽快なテンポで描かれている。
先に公開された世界53か国でナンバーワンを獲得するヒットを記録していた本作だが、日本でも連休3日間でおよそ50万人を動員、ダントツのナンバーワンを記録。ユーザー数国内1位を誇る映画レビューサービス・Filmarksでの星評価は、夏興行の中でナンバーワンをマークした。
以前、国内のウェブサービス会社が行った「思わず応援したくなるアメコミのキャラ」というアンケートでは、2位以下のヒーローにダブルスコア以上で圧勝するなど、スパイダーマンはアメコミ文化のない我が国においても別格の人気を誇っている。スパイダーマンの何が、観客を惹きつけるのだろうか。
もちろん、人気の秘密の裏には、映画作品そのものへの支持があるのは間違いない。世界中の映画評論を集積しているサイト、ロッテン・トマトによれば、実に92%の評論家が『スパイダーマン:ホームカミング』を絶賛している。これは、現在までに16本が公開されている“マーベル・シネマティック・ユニバース”作品の中でも、1作目である『アイアンマン』(08)に次ぐ数字だ。
当サイトのコラムでも以前述べた事だが、スパイダーマンがここまでの人気を集めるに至ったのは、1962年の初登場時、他のアメコミヒーロー作品の主人公が、成人した逞しい男性ばかりである中で、精神的に未熟で、肉体的にもさして特徴的と言えない高校生がヒーローであるという設定が、特別になれない、普通の少年たちの心を掴んだのだろう。
それから半世紀以上が経過し、原作コミックに描かれたスパイダーマン像も変化、また、彼に追従するように、アメコミにも多くの悩めるヒーローたちが登場した。それでも何故、2017年の今もなお「スパイダーマンは別格だ」と皆が考えるのか。その答えは、まさに映画の中にあった。
本作を観た観客の多くが口をそろえて語るのが「以前より暗くない」「前向きでポップ」という印象だ。それもそのはず、本作のスパイダーマン=ピーター・パーカーは、原作のキャラクターをきちっと守り、クモの糸を出すウェブシューターを自作するくらいの理数系オタク設定ではあるのだが、オタクである自分を哀れんだり、イケてる同級生を羨んだりはしないのだ。
なぜなら、原作が描かれた当時はもちろん、過去のシリーズが公開された時代とも違い、ITスキルや理数的論理性を持った人間と比べて、運動神経や体力で勝る人間の方が、必ずしも称賛を浴びる時代ではないからだ。
スティーブ・ジョブズの出現が、世界に大きな変革をもたらしたことは誰もが認めるところであると思う。それを象徴するように、本作のピーターは、人工知能のアプリケーションやスマートデバイスを駆使し、より迅速に、効率的に、物事を収拾しようとする。
その上で、本作のピーターは、体育会マインドに無理に反抗せず、筋トレにも励んでおり、劇中では見事に6つに割れた腹筋を披露してくれる。
ITスキルに優れたオタクが、アベンジャーズに憧れて筋トレに励む。ピーターは、自己憐憫するより合理的解決を優先する、非常に現代的な若者の理想像を体現しているのだ。
どの時代のスパイダーマンも、それぞれの時代の若者の心に響くヒーロー像を提示してきた。本来の設定と時代性のバランスが取れたヒーロー像を更新できている事こそが、スパイダーマンがナンバーワン・ヒーローで居続けられる理由なのだろう。【MovieWalker】
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