『映画 マイホームヒーロー』佐々木蔵之介&宮世琉弥を直撃!「善悪の在り方について問われる作品」
「娘よ、君の彼氏を殺しました」――。この衝撃的なキャッチコピーとともに、娘を守るために殺人犯となった普通のサラリーマンが、半グレ犯罪組織を相手に頭脳戦を繰り広げる姿をバイオレンスに描いたドラマ「マイホームヒーロー」。原作は累計発行部数370万部を突破した同名の大ヒットコミックで、主人公の鳥栖哲雄を演じた佐々木蔵之介をはじめ、齋藤飛鳥、高橋恭平、木村多江、音尾琢真らキャスト陣の熱演、一癖も二癖もある登場人物たちの再現度の高さも大きな話題に。ドラマシリーズは2023年10~12月にかけて放送され、ひとまずの完結を迎えたものの、最終話の7年後を描く『映画 マイホームヒーロー』(公開中)にて哲雄の最後の戦いが幕を開ける。
娘、零花(齋藤)の彼氏で半グレ組織のメンバーだった延人(内藤秀一郎)を殺してしまった哲雄は、自身を犯人と疑う組織との熾烈な攻防を生き抜いた。それから7年が経過し、妻の歌仙(木村)との間に新たに男児を授かり、大学を卒業した零花は警察官となっていた。一方で哲雄は、山中に埋めた延人の父親で組織の幹部でもある麻取義辰(吉田栄作)の遺体が見つからないかが、心の中でずっと気がかりに。そして、土砂崩れによって、ついに遺体が発見される。警察、零花からも疑いの目を向けられるなか、麻取が所持していた10億円の行方を捜す組織のボス、志野(津田健次郎)に目を付けられ、家族の命と引き換えに10億円を要求されてしまう。再び窮地に陥った哲雄の前に現れたのは謎の青年、大沢隼人(宮世琉弥)。大沢はなぜか哲雄の秘密を知っており、組織を潰すために共闘することを持ちかけられる…。
本作が観る者を惹きつける理由の1つとして挙げられるのが、推理小説で培った知識をフル動員して状況を打開し、半グレたちを出し抜くしたたかさも持った哲雄の行動力。『映画 マイホームヒーロー』で哲雄は、素性のわからない大沢と行動を共にすることになり、その関係性や組織にどう立ち向かっていくのか?という点が物語の軸になっていく。そこで今回は、主演の佐々木蔵之介と、重要キャラクターの大沢を演じることになった宮世琉弥へインタビューを敢行。撮影期間中は一緒に食事にも行ったという2人が、作品や役への想い、お互いの印象、倫理観を揺さぶるテーマ性についての見解も語ってくれた。
「7年間、哲雄は1日たりとも安らぐことはなかったと思います」(佐々木)
――ドラマ最終話から本作の間には、“7年”のタイムジャンプがあります。この7年をどのように意識して哲雄を演じられましたか?
佐々木「この7年間はやっぱり、(哲雄の中には)後悔や罪悪感が渦巻いていたと思うんですよね。でも環境的には、人を殺めたけれども新しい命を授かり、娘は警察官になっている。笑ったりする瞬間もあるでしょうけど、心の中にはずっとザワザワするものがあったと思うし、1日たりとも安らぐことはなかった。その事実や状況を念頭におきながら演じました。ドラマの撮影が終わって、映画に入るまでの期間は2週間ぐらいでした。当初はもう少し短い予定でしたが、期間を空けてほしいとお願いしたんです。それで一度、リフレッシュして真っ白に…。いや、真っ黒やな(笑)。とにかく、準備する間があったのはよかったですね」
――精神的に追い込まれ、肉体的にもきついシーンが多かったと思います。
佐々木「僕はあまり役に引きずられないんですよ(笑)。でも、みなさん心配してくださいますね。血のりを付けていることが多いので、弁当が食べにくい!みたいなことはありましたけど(笑)、現場はすごく楽しかったです」
――宮世さんは本作からの参加ですね。途中から加わることになった心境はいかがでしたか?
宮世「出来上がっているチームに参加させていただくということで、プレッシャーはありました。クランクインの時はこれまでのどの現場よりも緊張したと思います。感覚も掴めていない状況だったので、セッティングの待ち時間などでスタッフさんとお話ししながら慣れていこうとしていました」
――宮世さんが演じた大沢は原作漫画にインスパイアされた登場人物ではあるものの、本作オリジナルのキャラクターですね。
宮世「台本をいただいたタイミングで原作を読んだのですが、(大沢と基になった原作の登場人物は)けっこう似ているというか、近いと感じました。なので、台本を読みながら大沢を演じるイメージも感覚的にスッと入ってきたんです。大沢は(半グレ犯罪組織の)間野会を潰すことに執着しています。復讐を果たすためなら手段は問わない、といったことを強く心に留めながら役を構築し、お芝居をさせていただきました」
「佐々木さんの背中はすごく大きくて、いろいろなことを吸収させてもらいました」(宮世)
――共演シーンも多かったと思います。お互いの印象を教えてください。
佐々木「大沢は過去に深い傷を負っていて、どこか陰がある人物です。水族館に哲雄を呼び出し、初めて対面することになりますが、その時の彼はとてもハツラツとしていて活力があるように見えます。敵か味方かわからないところも含め、そんな大沢の複雑なキャラクターを宮世くんはうまく表現していました」
宮世「最初は段取りから探り探り演じさせていただいていました。佐々木さんには、大沢が哲雄に近付くタイミングだったり、対峙した時の立ち位置などのアドバイスもいただきました。佐々木さんの背中はすごく大きくて、いろいろなことをこっそり吸収させてもらっていたんです」
――どんなところに佐々木さんの背中の大きさを感じましたか?
宮世「スタッフさんとの接し方や現場での立ち回り方、お芝居に対する向き合い方などですね。僕はあまりアクションをやったことがなかったので、アクションシーンに対するアプローチも。現場ではとにかく、メモを取っていました」
佐々木「メモ取ってたんだ!」
宮世「思ったことをなんでもメモするクセがあるんです。それこそ、電車に乗っていた際の、スマホをいじっている女性の爪が長くて打ちにくそうだな…みたいな日常の細かいことまで」
――佐々木さんのことでメモしたことは?
宮世「スタッフさんに対して優しい、とか(笑)。座長として引っ張ってくださって、自然と付いて行きたくなるような求心力が佐々木さんにはあるんです。僕とも初対面でしたけど、ボケたり、ツッコんでくださったりして」
佐々木「関西人やからな(笑)」
宮世「あと、まさかご飯のお誘いをいただくとも思っていなかったです!現場に入った当初、僕はすごく固くなっていて…。一番年下でちょっと内に引きこもっちゃったりもしたので、それで打ち解けられたような気がします」
佐々木「間野会を潰す!って意気込んでたから」
宮世「そうですね(笑)。その目的だけを持って臨んでいたので、人の優しさに触れることになるとは思っていませんでした」
――食事もご一緒されたということですが、印象に残っているお話などはありますか?
宮世「いろいろ教えてくださいました」
佐々木「日本酒?」
宮世「いろいろ種類があることとか業界のこととか」
佐々木「お酒の種類や日本酒業界のことかな。そんな話をしていたんだね」