『オッペンハイマー』クリストファー・ノーラン＆『ゴジラ-1.0』山崎貴によるアカデミー賞監督スペシャル対談が実現

クリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』(3月29日公開)より、ノーラン監督と山崎貴監督による特別対談映像が到着した。

第96回アカデミー賞で、作品賞、監督賞を含む最多7部門に輝いた本作。第二次世界大戦下、世界の運命を握った天才科学者J・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)の栄光と没落の生涯を実話にもとづいて描く。2023年7月の全米公開を皮切りに、世界興収10億ドルに迫る世界的大ヒットを記録し、実在の人物を描いた伝記映画としては歴代1位となっている。ノーランが監督、脚本を務め、主演のキリアン・マーフィーほかエミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナーらが出演する。

このたび、自身初となるアカデミー賞作品賞(エマ・トーマス、チャールズ・ローヴェンとともに受賞)、監督賞に輝いたノーラン監督と、日本初の視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』(公開中)の山崎監督による対談が実現。本作を「パーフェクトに近いスペクタクル」と讃える山崎と、『ゴジラ-1.0』を「とても刺激的で細かいこだわりが感じられる、観る者を引き込む映画」だと語るノーラン。そんな彼らの対談を捉えた映像は、山崎の「知的好奇心を刺激されました」という感想から始まる。「パンドラの箱を開けてしまった人間が、どのような社会的な立ち位置でいたのか。時系列を組み替えながら描いていて、ハードなテーマのエンタテインメントになっている。凄く面白い、素晴らしい作品。オッペンハイマーが残酷な幻影をみるという、栄光と悲惨さが同じ画面に収められている作り方が凄い」という山崎の評価に対し、ノーラン監督は「私が物語のなかで興味があるのは頭脳明晰な人たちが世界を理解し驚くべき創造性を飛躍させテクノロジーを用いてどのようなことを可能にするのか、そしてその裏に潜む恐ろしい暗示です。そのコントラストを映画に映し出し観客のみなさんに直で感じてもらいたい」と応じ、「開発を進めていく先に待ち受けている恐ろしさの片鱗が既に見えているわけです。しかし時代の状況ゆえに行動するしかなかった。その緊張感を観客のみなさんに体験してほしいと思いました」と振り返る。

また、「悪い人間、素晴らしい人間を決めつけていない、その両方が渾然一体となっている」描写に驚嘆したと話す山崎に、ノーラン監督は「それは物語を伝える上で大切にしたことでオッペンハイマー役のキリアン・マーフィーともよく話し合いました。観客にはオッペンハイマーを裁くのではなく理解してほしかったのです。みなさんにこの人物の両面を体験してもらい、彼がした選択について自分だったらどうするか考えてみてほしかった。自分とは考えや立場が全く違う人の、考えや思いがわかるというところが映画の魅力です」と、どう受けとめるかは観客ひとり一人の判断に委ねることを最優先したとコメント。さらに本作に触発された山崎監督が「日本が返答の映画を作らねばならない」と宣言すると、「アンサー映画を作るのであれば山崎監督以上にふさわしい監督は思い浮かびません。ぜひ実現していただけたらと思います。これからも山崎監督の作品を楽しみにしています」とノーランは笑顔で応じた。

映像へのこだわりについてノーラン監督は、「観客の感覚に訴えかける映画を常に作りたいと思っています。いままで多くの映画をIMAX用の70ミリフィルムで撮影してきました。驚くほど鮮明で色の再現度が高いからです。大きなスクリーンに投影するとスクリーンの枠が消え映画に没入することができます。劇場の様々なサウンドシステム音響や音楽との融合によって観客を物語に引き込むことができるのです。こういった没入感をこれからも映画制作で大事にしていきたいです」と語り、それを受け山崎は「すごい伝わってきました。IMAXならではの作品だと思います」と対談を締めくくった。

あわせて、本作を鑑賞した渡辺謙や原田眞人監督、森達也監督ら各界の著名人からのコメントが到着。『バットマン ビギンズ』(05)、『インセプション』(10)でノーラン監督作品に出演した渡辺は、「『クリス・ノーラン』僕にとってだけでなく、多くの観客の脳内をかきまわす監督である。いまも、この世界を終わらせてしまうかもしれない爆弾を作った男が、細やかに、エキセントリックに描かれていた。彼の幻覚のなかにある、被曝の実態を世界はどう見てくれたのか。日本の観客にとっても観ておくべき作品なのだと思った」とコメント。カイ・バード、マーティン・J・シャーウィンによる上中下三巻に及ぶ「オッペンハイマー」を原作に、緻密に脚色したノーランの脚本について、『日本のいちばん長い日』(15)の原田監督は｢ノーランの緻密な映画力学に圧倒される｣、『福田村事件』(23)の森監督は「断言できる。間違いなくノーランの最高傑作だ」と話す。

また、IMAX65ミリと65ミリ・ラージフォーマット・フィルムカメラで撮影された没入感について、白石和彌監督は「凄まじい映画体験」、樋口真嗣監督は「かつて体験したことのない人生が体感できる」と驚嘆し、女優、作家、歌手の中江有里も「見る芸術じゃなく、体感する芸術だ」、政治学者の前島和弘も「オッペンハイマーの心の動きを追体験できる」と語った。計算機科学者の落合陽一は、難しい映画という先入観に対して、「難解か？そんなことはない。なにより単純に原子爆弾の圧倒的エネルギーの暴力性が音と光で満ち溢れ、我々の脳裏に様々なカタルシス、畏怖や悲しみを想起させる」、物理学者の橋本幸士も「人類に問いかける、傑作」とし、緻密な脚本と演出力に対して、評論家の芝山幹郎は「ノーランはめざましい手腕で描き上げる。情感やオブセッションを『積み重ねる力』に眼をみはった」とコメント。ほかにもモデル、タレントのトラウデン直美は、「被爆国日本に住む私たちはこの映画からなにを感じ、どんなメッセージを世界に伝えられるのでしょうか」と問いかけるメッセージを寄せた。

そして、広島と長崎からもコメントが届いた。元広島市長の平岡敬は「彼が感じた世界の破滅への危惧は、いま現実となってわたしたちの世界を覆っている」、広島出身で｢この世界の片隅に｣の漫画家、こうの史代は「『核兵器は狂気の天才のしわざ』なんて逃げ道は、この映画にはありませんでした」、長崎県被爆者手帳の会友の会、会長の朝長万左男は、「これは核なき世界が遠のきつつある現在の世界の根本問題にもつながる。ここにノーラン監督の政治家の責任を追求する秘めたメッセージが感じられるのである」とそれぞれコメントを寄せている。

天才科学者オッペンハイマーの人生を圧倒的スケールと映像経験で描きだす『オッペンハイマー』。世界の運命を握った彼の行動のはてに待つものとは？ぜひスクリーンで見届けてほしい。