時々レッサーパンダになって爆発しても…「そこそこ頑張ってると思うことが大切」!心理学教授が解説する“生きやすくなるヒント”

映画ニュース

時々レッサーパンダになって爆発しても…「そこそこ頑張ってると思うことが大切」!心理学教授が解説する“生きやすくなるヒント”

第88回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した感動作『インサイド・ヘッド』(15)の続編『インサイド・ヘッド2』が8月1日(木)に公開される。その公開を記念し、劇場未公開だった『私ときどきレッサーパンダ』が公開中だ。本作は、怒ったり焦ったり興奮したり、“感情“をコントロールできなくなってしまうとモフモフのレッサーパンダに変身してしまう女の子メイの物語だが、その魅力やテーマを、法政大学文学部心理学科の渡辺弥生教授が専門家の立場から解説する。

楽しいだけでなく怒ったり、どうしようもなく不安になったり、モヤモヤして人につらく当たってしまったり。自分の気持ちを抑えられなくなってしまうメイのように、生きていくうえで様々な感情に左右され心が疲れてしまう人は少なくない。渡辺教授はそんな自分の感情と上手につき合って明日からもっと生きやすくなるヒントは「できない自分を受け入れること」だと説く。

近年、感情をコントロールする方法について注目が集まっているが、渡辺教授によると「そもそもコントロールするのが難しいと受け入れる」ことがその第一歩となるという。特に、「コントロール」というと「抑えよう」と思いがちだが、調節していくコツをだんだんつかんでいくことが大切だそう。感情とは、成長していくなかで、自分の経験と、その際に親などからかけられる『怒ってるの?』『悲しいの?』というような気持ちを表す言葉がリンクするようになるところから理解し始めるもの。自分がいま感じている心の状態について、まずは気持ちを表現する言葉を通して理解し、そこから自分で表現できるようになっていくものだと、渡辺教授は解説する。

【写真を見る】感情をコントロールできず、つらい思いをしたことがあるすべての人に刺さる、『私ときどきレッサーパンダ』
【写真を見る】感情をコントロールできず、つらい思いをしたことがあるすべての人に刺さる、『私ときどきレッサーパンダ』[c]2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

だからこそ、メイがレッサーパンダになってしまう時に抱いている、家族や友人に対する複雑な気持ちについて「怒りは単純な『怒り』として捉えてしまいがちですが、たいてい心の奥底には悲しみがあったり、悔しさがあったりと入り混じっているものであり、メイの場合もそうです。過保護なお母さんのことも好きだけど、自分は好きなものを我慢しているし、本当は友だちと一緒にいたいと思ったりもしています。家族や友人などいろんな人との関係が増えた分だけ、心の中に出てくる感情をたくさん抱えこむようになり、それを上手く表現できなくて苦しいんです」と解説。

仲間たちと共に成長していくメイ
仲間たちと共に成長していくメイ[c]2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

本作ではメイを心配するお母さんに反抗したり、仲良しの友人とハメを外してはしゃいだり、いろんな場面でレッサーパンダになってしまうメイが、そんなありのままの自分を受け入れて成長していく姿が描かれている。渡辺教授は心理学の観点から本作のテーマについても言及しており「いまの子どもたちは、“いい子でないといけない(very good)”に縛られて自分を抑え込んでしまいがちで、自己肯定感が低くなってしまいます。むしろ、レッサーパンダになって時々爆発したり、なんだかコントロールできないダメな自分がいるけど、そんな弱いところやダメなところ、全部ひっくるめてありのままの自分に対して“そこそこ頑張ってる(good enough)”と思うことが大切です。自尊心を育てるために、発達心理学で強調されている考え方なのでとても興味深かったです」と語る。


待望の続編『インサイド・ヘッド2』は8月1日(木)公開!
待望の続編『インサイド・ヘッド2』は8月1日(木)公開![c]2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

できない自分のことも受け入れる大切さを描く本作を観れば、生きやすくなるヒントがきっと見つかるはず。本当の自分らしさに悩みながらも自分と向き合おうとするメイの姿に勇気と元気をもらえて、“明日は自分をもっと好きになれる”かもしれない。この春は、本作を大スクリーンで体感できる貴重な機会に映画館へ足を運んでもらいつつ、8月に公開を迎えるヨロコビやカナシミなど感情たちが巻き起こすストーリー『インサイド・ヘッド2』の新たな冒険を楽しみに待とう。

文/山崎伸子

関連作品