第2回新潟国際アニメーション映画祭、コンペ部門監督が新潟で受けた刺激「マジカルな時間。力をもらった」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
第2回新潟国際アニメーション映画祭、コンペ部門監督が新潟で受けた刺激「マジカルな時間。力をもらった」

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第2回新潟国際アニメーション映画祭、コンペ部門監督が新潟で受けた刺激「マジカルな時間。力をもらった」

新潟市で開催中の第2回新潟国際アニメーション映画祭で3月20日、長編コンペティション部門の監督記者会見が行われ、『スルタナの夢』(スペイン)のプロデューサーであるディエゴ・エルグエラ、『アザー・シェイプ』(コロンビア)のディエゴ・フェリペ・グスマン監督、『アダムが変わるとき』(カナダ)のジョエル・ヴォードロイユ監督が出席した。

【写真を見る】笑顔でフォトセッション!第2回新潟国際アニメーション映画祭、コンペティション部門の会見が行われた
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新潟国際アニメーション映画祭は、世界で初となる⻑編アニメーションを中心とした映画祭。今年の長編コンペティション部門には、昨年の倍以上となる29の国と地域から49作品が集まり、12本がノミネートされた。

『スルタナの夢』(スペイン)のプロデューサーであるディエゴ・エルグエラ
『スルタナの夢』(スペイン)のプロデューサーであるディエゴ・エルグエラ

主人公であるインドに住むスペイン人画家のイネスが、女性が平和に暮らせる場所を探す旅に出る姿を描く『スルタナの夢』のプロデューサー、エルグエラは「すばらしいセレクションのなかで上映することができて光栄。同じフィロソフィーを感じる」と集まった気鋭の監督たちにシンパシーを寄せた。監督のイザベル・エルゲラはアートに長けていると語り、「メヘンディ、影絵、水彩を使って本作を制作しました。メヘンディはインドに何百年も伝わるアートですが、映画に取り入れたのは私たちが初めてだと思います。そして影絵で人形を動かし、デジタル水彩画も取り入れています。美を追求していくうえで、これらの技法を使ったのは私たちにとって自然のことでした」と手の込んだ技法を詰め込み、美しい世界を映しだしたという。

『アザー・シェイプ』(コロンビア)のディエゴ・フェリペ・グスマン
『アザー・シェイプ』(コロンビア)のディエゴ・フェリペ・グスマン

『アザー・シェイプ』は、人類が月面に四面的理想郷を建設した近未来を舞台に、主人公のピーターが自分の本質に迫っていく物語。「小さなころから絵を描いていた。初めての長編である本作には、ファインアートの経験もアニメに注ぎ込んでいます」というグスマン監督は、「15年前からアニメーションを作り始めましたが、アニメーションは世界を表現するのにベストなフォーマットだと思っています」とアニメへの信頼を吐露。「今敏監督には、生涯をかけて影響を受けています。湯浅(政明)監督からの影響もありますが、新潟でお会いできました」と喜びをにじませた。本作のキャラクターは矯正器具によって四角四面になっていくのが特徴だが、「本作のキャラクターは楽しみながらデザインしました。どのように四角になっていくのか、キャラクターの一人一人、別のやり方で四角になっていくようにしています。奇妙な映画です」と200人ほど出てくるキャラクター、それぞれにあらゆるアイデアを込めていると楽しそうに話していた。

『アダムが変わるとき』(カナダ)のジョエル・ヴォードロイユ監督
『アダムが変わるとき』(カナダ)のジョエル・ヴォードロイユ監督

『アダムが変わるとき』は周りの人たちからの嘲笑や否定的な発言で、身体が変化するという奇妙な特異性を持つティーンエイジャー、アダムの人生を描く。「初めて長編アニメーションとしてつくった作品」と紹介したヴォードロイユ監督は、「アニメーションの経験は20年になりますが、独学で学び、楽しんでつくってきました。自分のバックグラウンドとしては、ドキュメンタリーの編集や音楽を担当していて、それらの経験すべてを注ぎ込んだ作品になります」という。変化していくキャラクターのビジュアルも目を引くが、「なぜ見た目が変化するのかは、自由な捉え方をしてほしい。人生は思った通りにいかないもの。自分ではコントロールできないことにぶち当たった時に、人生や自分が変わっていく。それを感じてほしいと思っています。人生は学ぶものだという想いを込めて、作品にしました」と明かした。


シンパシーを寄せ合った
シンパシーを寄せ合った

これまでの人生経験を捧げた作品になったと口を揃えた3人。同映画祭では若い世代と触れ合う機会もあり、ヴォードロイユ監督は「士気が高い若者と会うことはいつも楽しい。技術を教えながら、同時にインスピレーションももらって、すごく楽しかった。自分が若い時にも、こういった機会があったらよかったのに」とにっこり。「すばらしい体験」と切りだしたグスマン監督も、「誰かと自分の経験を共有するのは、とてもパワフルなもの。お互いの情報を交換することができた。また間違った経験をシェアすることで、同じ間違いをすることを防げるメリットもあります。若い人たちの視点やアニメに対する考え方を聞いて、力をもらいました」と振り返る。そしてエルグエラも「マジカルな時間だった」と続き、「友情や親交を深められた、すばらしい時間になった」と刺激的な来日になったと熱を込めていた。

取材・文/成田おり枝

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