岡田准一が時代劇に特別な思い入れを感じる理由とは?
豊臣秀吉、徳川家康ら戦国時代の武将が描かれる時代劇で、常に脇にいた豊臣政権の官僚・石田三成。映画『関ヶ原』(8月26日公開)では、岡田准一演じる三成の人となりにスポットが当てられる。原作は司馬遼太郎の同名歴史小説。『日本のいちばん長い日』(15)の原田眞人監督と待望のタッグを組んだ岡田にインタビュー。
わずか6時間で勝敗が決まったと言われる関ヶ原の合戦。石田三成は、純粋に正義を貫いた武将として、対する徳川家康は野心あふれる策略家として描かれる。
「僕は歴史が好きですし、戦国時代について調べたことが何回もあるので、これまで脇役として描かれてきた三成はちょっと違うんじゃないかと思っていました。敗戦の将ですが職業軍人の官僚ですし、今回は難があるけど真っ直ぐすぎるという人間らしい三成像にしたかったです」。
撮影が始まる前に、石田三成のお墓参りをしたという岡田。「三成については敵役として対立したことがあります」と言うとおり、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の官兵衛として三成と反ばくし合っていたことも記憶に新しい。「お墓参りは、三成役をやるのでお寺にお願いして行かせてもらったんです。行ってご挨拶をし、過去のことを詫びました。今回、三成のイメージが少しでも変わることで喜んでもらえたらいいなとも思います」。
岡田は三成の武将としての器については「決して天下人になれる人ではなかった」と冷静に俯瞰で見ている。「やっぱり天下人になるのは徳川家康のような人でしょう。それでも三成は優秀な人だったとは思うし、今回足りない部分や人間くさい部分も出せる脚本だったので、自分の思う三成像に近いなと感じました。それが正しいかどうかはわからないけど、そうだったのかなと思わせる内容になればと思って演じました」。
家康を演じたのは『蜩ノ記』(14)でも岡田と共演した役所広司。風貌まで見事にたぬきオヤジになりきり、ふんどし姿まで披露している。「僕は役所さんのことが大好きなんですが、今回始まる前に『三成は敵役なので、あまり近づけないのが寂しいです』とメールしました。実際に寂しかったけど、いい距離感で撮影できたと思います。役所さんについて、三成としては嫌いだけど、僕としては好きなので、その好きと嫌いの狭間が現場では面白かったです」。
役所について「現場では、すごく楽しそうでした」と何とも嬉しそうに笑う。「最初はマーロン・ブランドみたいに、口に綿をつめるとおっしゃっていたそうですが、しゃべりづらいからやめたそうです。マウスピースを作って練習しているという噂も聞いていました。前作の時に役所さんがすごく真摯に役と向き合われている姿を見ていたので、きっと今回もそのように向き合われていらっしゃるんだろうなと。お会いした時、自由に暴れている家康を見たので、それに相対する三成も弱くならないように意識しました」。
『関ヶ原』はもちろん、岡田は時代劇について特別な思い入れがある。「僕は時代劇を演じる上で、多くの先輩方から色々なことを教わりました。『自分が持っている強さをちょっと大きく演じないと時代劇では負けるよ。ナチュラルにやるだけが芝居じゃないぞ』といったことです。『関ヶ原』やこの後に続く『散り椿』(2018年公開)は、そういう先輩方に観てほしい作品です。そういうものを受け継いでいく。ちょうど今、僕はそういう年齢に入ったのかなと思っています」。【取材・文/山崎伸子】