高山一実&結川あさきが『トラペジウム』に掛けた想いを告白「“夢を持てない人”に寄り添いたい」
「アイドルという職業自体が、光を放つものだと思っています」(高山)
――ポスターのキャッチコピーにも採用されている、「はじめてアイドルを見たとき思ったの。人間って光るんだって」という、ゆうのセリフがとても印象的で…。応援するファン1人1人の小さな光が集まって、アイドルを輝かせているのか。それとも、そもそもアイドルとしてデビューする前から、人は光っているものなのか。お2人はどうお考えですか?
高山「『トラペジウム』を書く前に、私が『人って光るんだ!』と明確に思った瞬間は、ライブのステージ上でガムシャラに踊っているアイドルと、それを客席から応援しているファンの方たちがいらっしゃって。その会場を斜め上からねらっているカメラの映像を見た時なんです。特定の誰かを見て思ったというより、ステージで踊っているアイドルがちょっと引きで映った時に、そこにいる全員がみんなキラキラして見えて。アイドルって光るんだ!って思ったんです。光って見せるためにはきっと素質が必要だけど、私はそのアイドルという職業自体が、光を放つものなんだと認識した記憶があって。ファンの方によってアイドルは光るものだとも思うけど、そもそも1人1人のアイドルも、光る要素を持っていないと、ファンの方に光らせてもらえないんじゃないかなと思っています」
――いまのお話を聞いて結川さんはどう感じました?
結川「深いなあって思いました。やっぱりアイドルって、普通の人とは決定的になにかが違う気がします。舞台の上で歌って踊っている女性や男性を、みんなで盛り上げている図って、冷静に見るとちょっと特殊だったりするじゃないですか。それでもなぜみんなあんなに熱狂するのかというと、ステージの上にいる1人1人が、すごく本気だからなのかなと。内に秘めている熱い想いとか、いろんな輝きを纏っていて。アイドルという存在になった瞬間、それらが一気に放出されるから、あんなにも輝いて見えるのかなって。でも、今回の作品を通じても答えが見つからず、未だに考えあぐねているような状態だったので、いまの高山さんのお話を伺って、腑に落ちました」
「夢は、1個叶えたら終わりじゃなくて、ずっと続いてくもの」(結川)
――夢や叶えたいものがあるからこそ、アイドルは光っているのかもしれません。お2人にとって、いま思い描く新たな夢はありますか?
高山「いやあ、それが困ったもので…。新たな夢を抱くのって、意外と難しいんですよ。それこそ、年齢的なものなのか、時代的なものなのかよくわからないのですが、私の夢はアイドルになることだったから、夢って、人生で何個も持てるものではないんだなということを、身をもって知れたことはよかったなとは思います」
――まさに、夢を叶えた人にしか言えないセリフですね。
結川「本当に!」
高山「そう考えると、本当にありがたい話ですよね。というのも実は、アイドルだった時からすでに私にはこうなる未来が見えてはいたんですよ。だからこそ、悔いなくやり遂げようと思っていて。それで、実際にアイドルをやめてみたら、案の定、次の夢が見つからない…」
――どこか、“燃えつき症候群”のような?
高山「そうですね。でも、悲しいというよりも、本当に大きな夢が叶ったからこそ一区切りついたというか。第1章が終わったな、と思っていて。ここから先は、自分の夢のためにではなく、誰かの夢のために生きるのもいいのかもしれない。実はいろいろと考えている真っ最中なんです。大切な人のために生きる、友人のために生きる、あるいは見ず知らずの誰かのためや、地元のために生きる…とか。選択肢はきっとほかにもあると思いますし、どれか一つに限定する必要もないとは思うのですが…。いまの私の正直な気持ちとしては、まだ迷っていて。それこそ、『トラペジウム』を書いた時は、いま夢を持っている人の背中を押すようなものにしたいと思っていたのですが、いまとなっては、夢ってそう簡単に浮かぶものじゃないよなって。むしろ“夢を持ちたくても持てない人”に寄り添いたい気持ちがあるんですよね。そういう方たちと『夢、欲しいよね』って、語り合いたい」
――結川さんは、どう感じましたか?
結川「私が感じているのは、逆に『夢って、叶ったらそこで終わりじゃなくてずっと続くんだな』ってことなんです。これまで携わらせていただいた作品についてもそう感じていますし、これから『トラペジウム』 が公開されて、私自身がこの作品に直接かかわる機会が少なくなったとしても、いまこうして高山さんと一緒に取材を受けていることも含めて、私はこの作品を通して本当にいろんな経験をさせていただいたので。きっとこれからもこういう時間を思い出して、大切な作品たちを抱えて歩んでいくんだろうなって思うんです。そのことが、私にはとてもうれしく感じられていて。自分が夢のためにそれまで頑張ってきたことや、夢を叶えて得たものは、絶対に消えてなくなったりしないはずだよなって。だから、夢って1個叶えたらそこで終わりじゃなくて、ずっと続いてくものなんじゃないかなって…。なんだかちょっと大人びた視線で、夢について考えたりしています(笑)」
高山「うわあ、すごい…!しかもそのステキな言葉を、東ゆうが結川さん越しに私自身に語りかけてくれているような、そんな不思議な感覚になりました。なんか、鳥肌が立ってきた!」
結川「でも今回、こんなにステキな作品と出会えたことで、『私のこれからの人生は、絶対明るいものになる!』って本気で思えたので。出会って、収録して終わりじゃなくて。出会えたからこそ、この『トラペジウム』という作品が、今後の私の糧になってくれるんだろうなって。いま、高山さんとお話ができたことで、さらにその想いが強くなりました!」
取材・文/渡邊玲子