高山一実&結川あさきが『トラペジウム』に掛けた想いを告白「“夢を持てない人”に寄り添いたい」

インタビュー

高山一実&結川あさきが『トラペジウム』に掛けた想いを告白「“夢を持てない人”に寄り添いたい」

「小説版より、確実におもしろいものになっていると思っています」(高山)

――小説をアニメ化されるうえで、新たにキャラクター造形が必要になると思うのですが、高山さんが小説を執筆された際は、どこまで具体的にキャラを思い浮かべていたんですか?

高山「それぞれのキャラクターの性格は、自分なりの明確なイメージがありましたけど、映像化するにあたってさらに深掘りしていく必要があったので、スリーサイズから、靴のサイズ、血液型や誕生日、家族構成に至るまで、一つずつ考えていきました」

結川「確かに、オーディション用の資料にもキャラ設定がかなり細かく書いてあった記憶があります。『東ゆうは、○○に影響を受けている』『ゆうの憧れの人物は、○○』みたいな感じで」

長い年月をかけて丁寧に映像化されたキャラクター
長い年月をかけて丁寧に映像化されたキャラクター[c]2024「トラペジウム」製作委員会

――そうだったんですね。高山さんは、アニメ化について率直にどう感じていますか?

高山「本当に、光栄すぎる!という気持ちでいっぱいなんですが、4年近い歳月をかけて皆さんと作り上げてきた作品を公開するにあたって、正直、不安要素も少しあって…」

――どのような不安ですか?

高山「小説を買って読んでくださる方は、私を応援してくださるファンの方々も多かったと思うのですが、本作に触れていただく方はおそらくもう少しカジュアルな層になってくる。となると、また受け取り方が変わりますよね。スタッフの方と小説版からさらにいろいろな要素を加えてグレードアップさせたことで、自分としては確実におもしろいものになっていると思っているからこそ、もしこの映画をご覧になった方々が『おもしろくなかった』と感じたら、自分の価値観が世の中と解離していることになるので。その事実に直面するのは悲しいなと思っていて。そこはちょっと不安ですね」

――世間の反応とご自身の感覚にズレがないかどうか、不安だと。

高山「そうなんです。私のなかには、『これからもクリエイティブにかかわるお仕事を続けていきたい』という切なる想いがあるので。たとえ、自分にとってそれがどれだけ耳が痛いことだったとしても、世の中の声には敏感にセンサーを働かせておかないわけにはいかなくて…」

2人の受け答えからは、お互いへのリスペクトの気持ちがにじみ出ていた
2人の受け答えからは、お互いへのリスペクトの気持ちがにじみ出ていた撮影/河内彩 衣装協力/ブラウス¥55,000(SHIROMA) コート¥41,800(BASE CALM) スカート¥31,900(BASE CALM) リング(左)¥1,430(OSEWAYA/お世話や) ブレスレット¥1,430(OSEWAYA/お世話や)

――なるほど。創作や表現に真摯に向き合っているがゆえに、湧き上がる不安ということですね。結川さんは、高山さんが執筆された原作小説のどんなところに魅力を感じていますか?

結川「知られざるアイドルの世界の裏側や、アイドルを目指す過程がここまでリアルに綴られている小説は、なかなかないなと感じました。私が演じた東ゆうを始め、登場人物たちが使う言葉や感情が、いい意味で取り繕っていない、高校生たちのリアルがそのまま描かれているので、感情移入しやすいうえに、世界観にも入っていきやすい。アイドルというキラキラしたものと、まさに青春真っ只中にいる高校生たちの少し青い感じが、いい具合に折り重なって入っているところが魅力だなと思います。アニメでも、高山さんを筆頭にスタッフの皆様がものすごい熱量で作られていて、目にするたび圧倒されています。完成版を観てくださる方たちもきっと心動かされるものがあるはずなので、先程高山さんは心配されていましたが、絶対に杞憂に終わると私は思います!」

高山「ありがとうございます!!」

「ゆうみたいに、“やれることは全部やってみる”体当たり精神がなにより大事」(結川)

――ちなみに、高山さんが思い描く“アイドル像”というのは、本作で東ゆうがアイドルに求めているイメージと近いですか?

高山「実は、『トラペジウム』を執筆する前は、いわゆる“アイドルの定義”みたいなものが、自分のなかでまだ定まっていなくて。書きながら見えてきたらいいな、くらいに考えていたんです。実際に小説を書きあげて、グループを卒業したいま、私のなかでようやく見えてきたアイドル像は、ゆうの掲げていたものとは少し変わってきましたね」

アイドルになるためには手段を選ばない、強気な性格のゆう
アイドルになるためには手段を選ばない、強気な性格のゆう[c]2024「トラペジウム」製作委員会

――具体的にどのような変遷を辿られたのでしょうか?

高山「プロットの段階では、1回挫折を味わわせてから、改心する流れにしようと考えていたので、最初はゆうをもっと嫌われる要素の強い子からスタートさせようと思っていたんです。でも最終的にゆうにはアイドルとして成功してほしいから、『根っから悪い子だと成功しないよな』と思い直して逆算して作った結果、『彼女みたいな子が実際にいたら、本当にトップアイドルまで登り詰めるんじゃないか』と思えるような子になりました」

――なるほど。結川さんは、ゆうに共感する部分はありましたか?

結川「叶えたいものやなりたいものがある人は、その想いが本気であるがゆえに、ゆうと同じように、周りが見えなくなったり、空回りしちゃったりすることもあると思うんですよ。でも、本気にならないと見えてこないものも、世の中にはたくさんあって…。自分の心のなかになにか強い想いがあるのなら、周りとぶつかることを恐れずに、ゆうみたいに“やれることは全部やってみる”体当たり精神がなにより大事なんだなってことを教えてもらった気がしています」

高山が考える”アイドルになれる条件”

――では、改めて本作を通じて辿り着いた、お2人にとってのアイドルの定義とは?

「東西南北」の4人は、高校生活をかけて夢の実現へと突き進んでいく
「東西南北」の4人は、高校生活をかけて夢の実現へと突き進んでいく[c]2024「トラペジウム」製作委員会

高山「“可愛い”“誠実である”“爆発力がある”…もしくは、“それらすべてに憧れている”という4項目のうち、2つ以上に当てはまる子なんじゃないかなと思っています。可愛くなくても、アイドルに憧れて、誠実であればなれると思うし、可愛くて爆発力さえあれば、誠実じゃなくても、別に憧れてなくてもイケると思うんですよね。それが、私のアイドル論。結果的にその条件に当てはまっている東ゆうは、すばらしいアイドルだったなと思います」

結川「説得力がすごい!私はアイドルの経験はないので、あくまで自分から見たアイドル論になるのですが、一言でカッコよく言うなら、“愛さずにはいられない存在”でしょうか。歌やダンスが上手というのももちろん魅力の一つだとは思うのですが、できないところさえ愛おしく思えるからこそ、あんなにもアイドルを好きになるんだろうなとも思います」



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