ここまで本格的にやるのか!『陰陽師0』VFX制作の極意と加門七海が考案した6つの“呪”
これまで映画やアニメ、舞台など様々なコンテンツの題材になってきた“陰陽師”。そのブームの火付け役となった夢枕獏の小説「陰陽師」の主人公で、平安時代に実在した“最強の呪術師”安倍晴明の知られざる学生時代を完全オリジナルストーリーとして描く『陰陽師0』が公開中だ。
『ゴールデンカムイ』(23)での熱演も記憶に新しい山崎賢人が主人公の安倍晴明を演じ、「アンフェア」シリーズなどで知られる佐藤嗣麻子監督がメガホンをとった本作は、日本映画を支えるプロフェッショナルたちの総力が結集して生みだされた美しく、細部まで抜かりのない平安時代の世界観が大きな見どころの一つとなっている。そこで本稿では、VFXと“呪術”にフォーカスしながら、その注目ポイントを紹介していこう。
呪いや祟りから都を守る陰陽師の学校であり省庁でもある“陰陽寮”が政治の中心だった平安時代。呪術の天才と呼ばれる若き安倍晴明は、陰陽師を目指すほかの学生たちとは真逆で、陰陽師になる意欲や興味がまったくない人嫌いの変わり者。ある日晴明は、貴族の源博雅(染谷将太)から、皇族の徽子女王(奈緒)を襲う怪奇現象の解決を頼まれ、彼と衝突しながらも共に真相を追っていくことに。
日本屈指のVFXクリエイターたちが生みだした、“誰も見たことのない平安時代”
本作のVFXには、「白組」をはじめ日本映画界を支え続けてきた多くのVFXクリエイターたちが参加。VFXプロデューサーを務めた「白組」の井上浩正は「平安時代の再現と、龍や大樹に飲み込まれるシーンなどのエンタメとしてのVFXに力を入れました」と、本作のVFX制作の極意を語る。
「佐藤監督は打ち合わせの段階から具体的で独創的なイメージを持っていました。いままでの時代劇と一線を画すためには、その具現化が一番だと思って取り組んでいきました」と振り返ると、一番苦労したカットとして平安時代の光景を俯瞰で映す空撮カットをあげる。「何度も繰り返し修正を重ね、最後まで調整をしていきました。スタッフも粘り強く作業をしてくれて、誰も見たことのないような平安時代を作ることができたのではないかと思っています」。
一方、晴明が見る夢のなかの風景を手掛けたのは、佐藤監督が「日本で一番マット画が上手い」と太鼓判をおす「fude」の江場左知子。「監督がイメージされていたスコットランドのハイランド地方の景観を参考に、美しくも不可思議で壮大な風景を目指しました」と、佐藤監督の希望で美術部門にも取り入れられたヨーロッパのエッセンスが、このVFXでも重要な役割を果たしていたことが明らかに。
また、「サンティー」の山口任弘と三浦大河が手掛けたのは、博雅と徽子の周りに花が咲き誇る部屋のVFXカット。これは京都の瑠璃光院をイメージして作られたもので、「リアルすぎるとホラー映画のようになってしまう。そうならないようにディテールや形状を調整しています」というこだわりのポイントが。そして佐藤監督が最もこだわったという龍の描写は米岡馨率いる「StealthWorks.」が制作。
「火龍は悪意の象徴としての攻撃的な荒々しさを。水龍は守護獣としての穢れの無い水の荘厳さと圧倒的な力を表現することに尽力しました」と語られるように、プロフェッショナルたちの腕が光ったハイクオリティなVFXの数々によって、本作の世界観がより強固なものにされていった。