「鬼平役は天命」松本幸四郎が『鬼平犯科帳 血闘』完成披露上映会で市川染五郎らと鬼平愛を語る
劇場版『鬼平犯科帳 血闘』(5月10日公開)の完成披露上映会が4月23日、丸の内ピカデリーにて開催され、十代目松本幸四郎、八代目市川染五郎、仙道敦子、中村ゆり、本宮泰風、浅利陽介、山田純大、久保田悠来、志田未来、北村有起哉、山下智彦監督が登壇。自身にとっての「鬼平とは?」のテーマで、それぞれの鬼平愛を語った。
池波正太郎生誕100年を記念し、時代劇作品の金字塔「鬼平犯科帳」を映像化。テレビスペシャル「本所・桜屋敷」、劇場版の本作、連続テレビドラマシリーズ「でくの十蔵」(6月8日放送)「血頭の丹兵衛」(7月6日放送)の計4作品を製作。本シリーズでは、幸四郎が“鬼平”こと長谷川平蔵を、染五郎が若き日の鬼平(長谷川銕三郎)を演じ、江戸時代後期、悪党どもから“鬼の平蔵”と恐れられた火付盗賊改方長官、長谷川平蔵の捕物を軸に、濃厚な人間ドラマを描きだす。
上映後の熱気に包まれる場内に登場した幸四郎は「よってたかってものすごいものを作りました!」と胸を張る。イベントではキャスト陣が「私にとっての鬼平とは?」のテーマでトークを展開。「天命」と答えた幸四郎は「『鬼平犯科帳』という映像作品は、いつの時代にも存在するということを示さなければいけない。そいて、長谷川平蔵という人物を演じることは、自分の天命なんだと思い込ませる必要がありました」と並々ならぬ覚悟で役に挑んだと明かした。
“本所の銕(てつ)”と呼ばれる若き日の鬼平を演じた染五郎にとっての「鬼平」とは「職人たちのこだわりの結晶」と回答。「役者のみなさんはもちろん、監督、スタッフのみなさま、関係者のみなさま、職人たちが結集してこだわって作っている作品だということを現場で感じていました」という染五郎のコメントをどう思うかと尋ねられると「すばらしい!」と満面の笑みを浮かべた幸四郎。照れくさそうにする染五郎の隣で「私のせがれです」と客席に向けても自慢の息子をしっかりとアピールし、大きな拍手を浴びていた。
「しなやかな強さ」と答えた久栄役の仙道は「幸四郎さんの殺陣を見て、とにかく美しいと思いました。柳の木のようなたくましさ、しなやかさ、強さを感じました」と微笑む。撮影中に殺陣のシーンを実際に見ることはできなかったが、出来上がった映像でそのすばらしさを堪能したと絶賛していた。「付き合ってみたい人」と回答した志田は「幸四郎さんの鬼平、かっこよくないですか?」と問いかけ、「色気もすごいし、絶対に守ってくれる安心感があります。付き合ってみたい、あの時代に自分が生きていたら、妻になりたいです!」とゾッコン。志田の公開プロポーズへの意見を求められた妻役の仙道も「その通りだと思います!」と同意。幸四郎からすかさず、「そこは(妻として)反論したほうがいいと思いますよ(笑)」とツッコミが入ると、「そうだ、私が妻ですので!」とハッとした表情で切り返し、笑いを誘っていた。
中村が「男女共に惚れさすモテ男」と話したように、男性陣からのラブコールも。平蔵の宿敵、網切の甚五郎役の北村は『鬼平犯科帳』の大ファンと告白。「吉右衛門さんの時の『鬼平』を観ていて。お亡くなりになられた時、『鬼平』がどうなるのかファンとして心配していました。でも、幸四郎さんが演じられると聞いてホッとした」といちファンとして安心したことを明かす。自身にヒール役のオファーが来た時には「これは大変なことになったぞ、と思いましたが、斬られた時にみなさんがスカッとしてくれたら一番いいと思っていました。ファンだったので、最後の一太刀でズバッと斬られる瞬間は本当に痛快でした」とファンの心に寄り添った役作りをしたことを明かし、大きな拍手を浴びていた。
“初代”長谷川平蔵を初代松本白鸚(八代目松本幸四郎)が演じ、丹波哲郎、萬屋錦之介、二代目中村吉右衛門と受け継がれ、紡いできた物語『鬼平犯科帳』は山下監督にとっては「バイブル」なのだそう。「吉右衛門さんのシリーズでカチンコを打っていました。学んだことはたくさんあります。助監督の仕事、俳優部への立ち居振る舞い、所作、小道具、衣装の選び方、殺陣、刀の扱い。『鬼平犯科帳』からすべてを教わってきたつもりでいます。一番良かったのは、役者さんの芝居を一番近くで見れたこと。それが一番勉強になりました。いまに至るまで、時代劇をやる時には自分のお手本になっています」と作品への感謝と思い出を語っていた。
最後の挨拶で幸四郎は「傑作が出来上がりました」とニッコリ。「『鬼平犯科帳』は、人と人とが繋がり合って起こるドラマを色濃く描く人間物語。過去の作品と見比べていただきたいと思いますし、初めて作品に触れる方も、ぜひ楽しんで観ていただきたいです」と呼びかけイベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ