旅心を大いにくすぐられる『青春18×2 君へと続く道』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、「台湾×日本」「18年前×現在」を舞台に描かれるラブストーリー、第二次世界大戦中の上海で繰り広げられるスパイの攻防、ユ・ヘジンが初めてラブストーリーに挑んだロマコメの、アジアを舞台にした3本。
愛され続ける作品になる…『青春18×2 君へと続く道』(公開中)
台湾の紀行エッセイ「青春18×2 日本慢車流浪記」を藤井道人監督が映画化した美しいラブストーリー。日本と台湾、18年前と現在が交錯し、旅心を大いにくすぐられる。日本から台湾にやってきたアミ。初恋の彼女が忘れられず、日本を訪れるジミー。儚げななかにも強い芯を持つヒロイン、アミ役の清原果耶も素晴らしいが、舌を巻くのは18歳と36歳を演じた台湾のスター俳優、シュー・グァンハン。彼が一人で高校生時代と現代の実業家のジミーを見事に演じているおかげで、過去と現代の物語が混乱することなく、地続きで感じられる。
暑い台南で始まった初恋が冬の日本の雪国で完結する。バイクの二人乗りをはじめ、胸キュンシーン満載の台湾編と人生の悲喜交々にしっとり浸る日本編。今村圭佑撮影監督の映像美が今回も冴え渡る。アジア圏、特に台湾で人気の高い岩井俊二監督の『Love Letter』(95)が劇中、効果的に使われており、重なりに唸らされる。本作も間違いなく、同様に愛され続ける作品になるだろう。(映画ライター・高山亜紀)
俳優陣の静かなせめぎ合いに思わず身を乗り出してしまう…『無名』(公開中)
1940年代の上海を舞台にしたスパイ・サスペンス。日本政府の意向を汲む中国、汪兆銘政権の諜報員フー(トニー・レオン)と部下イエ(ワン・イーボー)は、大日本帝国陸軍と協力しながら敵対する国民党や中国共産党の諜報員と熾烈なスパイ戦を繰り広げる。タイトルの無名とは、素性を隠して暗躍するスパイたちのこと。情報収集から暗殺、敵陣営から寝返った諜報員のリクルートなど彼らの日々の活動が緊張感たっぷりに描かれる。感情を押し殺し淡々と過酷なミッションをこなすフーたちが、時おり激しい感情をのぞかせる姿は怖いほどの迫力。凜とした空気をまとったレオンはじめ、俳優陣の静かなせめぎ合いに思わず身を乗り出してしまう。
本作が特徴的なのは、時間軸を行き来していく構成にもある。とつぜん時間や場所が切り替わっていく展開にはじめは驚かされたが、パズルのピースを埋めるようにそれぞれの真の任務や心情が明かされていく様が小気味よい。当時の上海を再現した緻密なセットや絢爛な衣装、凝ったカメラワーク、そして痛みが伝わるほどリアルなアクションなどビジュアルも見応えあり。まさに大人のスパイ映画だ。(映画ライター・神武団四郎)
豪華なカメオ出演も必見…『マイ・スイート・ハニー』(公開中)
スナック菓子の開発に人生のすべてを賭けてきた製菓会社の研究員と、借金を返すために金融会社で働くシングル・マザー。あるいは、恋愛とは無縁の男と恋愛になんの希望も持たない女。どこから見ても共通点のない2人が、ひょんなことから出会い、次第に掛け替えのない存在となっていく姿がたまらなく愛おしい。
誰もが好きにならずにはいられない奥手の主人公役は、ヒョンビン演じる刑事の相棒を軽妙に見せた『コンフィデンシャル/共助』(18)、狂気をはらんだ王に扮した時代劇『梟ーフクロウー』(24)など、作品ごとにまったく違う姿で楽しませるユ・ヘジン。さらに、90年代を代表するラブコメ・クイーン、キム・ヒソンが往年の魅力そのままに、絶妙な演技で笑いを誘う。イ・ハン監督の過去作に出演してきた俳優たちの豪華なカメオ出演も必見。(映画ライター・佐藤結)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼