濱口竜介監督、ヴェネチア銀獅子賞受賞作『悪は存在しない』のキャスティングのコンセプトを語る
4月26日、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて、映画『悪は存在しない』の初日舞台挨拶が開催され、主演の大美賀均をはじめ、メインキャストの西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、濱口竜介監督が登壇した。
濱口竜介監督は本作で第80回ヴェネチア国際映画祭・銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞したことで、カンヌ映画祭、ベルリン映画祭のいわゆる3大映画祭のグランドスラムを果たしている。濱口監督と、音楽を手掛けた石橋英子との共同企画となっている。
不器用な父と娘の関係を描いた同作の舞台は長野県水挽町。代々そこで暮らす巧の役を大美賀が、そしてその娘・花の役を西川が演じている。イベントではMCが、西川に対して「撮影中や撮影が終わった後、またヴェネチア国際映画祭などで印象に残っている思い出はありますか?」と質問。すると西川は「ヴェネチアに行ったことが1番印象に残っていて。向こうの人も陽気で楽しくて。ご飯もおいしかったです」と回答。
MCが「撮影チームとしては楽しげな雰囲気だったんですね」と声を掛けると、濱口監督が「そうですね。アットホームな雰囲気で。キャストとスタッフを集める時のコンセプトが“人柄のいい人”なので」と答えた。
また、西川はオーディションで選ばれたそうで、そのオーディションについては「短い台本を(大美賀と)2人で何回も読むという感じでした」とコメント。これに濱口監督は「大美賀さんとしゃべってもらうという。親子の役なんですけど、いい感じの距離感があって。西川さんが大人としてしゃべっているような感じもあって、それがすごくいい気がしました」と、キャスティングのエピソードを振り返った。
西川は「家で自分のお父さんと話すみたいに、緊張せずに普段通りに話したら楽でした」と話し、大美賀は「いや、素晴らしいと思います。そんないきなり、なかなか他人と普段お父さんと話すようには話せないと思いますので。僕も助けられました」と感謝していた。
本作は、ひと足先にフランスで公開。現地にいたという濱口監督は「(作品を観ているフランスの人たちから)笑いもたくさん起こるし、でも集中する時には集中するし、ちゃんと受け止めてもらっているんだなという印象。すごく好意的に受け入れていただいている印象があります。2週間で7万人ぐらい入っているらしいです」とアピール。続けて「この映画を支えているのはスクリーンに映っている人たち。本当にひとり一人が輝いていたので、本当にすごいなって思いながら。そのひとり一人のありようとか仕事とか、そういうのを見ていただきたいなと思っております」と、観客に呼び掛けていた。
取材・文/平井あゆみ