ソン・ガンホ、「サムシクおじさん」で人生初のドラマ出演!“新人”としての会見に「緊張しています」と笑顔
韓国の名優、ソン・ガンホがドラマ初主演を務める「サムシクおじさん」の製作発表会見が5月8日に行われ、ガンホをはじめ、ピョン・ヨハン、チン・ギジュ、ソ・ヒョヌ、ユ・ジェミョン、チュ・ジンモ、ティファニー、オ・スンフン、シン・ヨンシク監督が出席した。
『ベイビー・ブローカー』(22)で第75回カンヌ国際映画祭男優賞受賞したソン・ガンホが、30年を超えるキャリアのなかで初のドラマ出演を果たした本作。ガンホが演じるのは、1960年代の激動の韓国で、謎の政治フィクサーであり、“サムシクおじさん”の愛称で呼ばれる男パク・ドゥチル。自国の運命をなんとか好転させようと奔走する野心あふれる理想主義的な青年キム・サン(ピョン・ヨハン)と共に、誰もが1日3食を食べられる豊かな国に変えるという野望を抱きながら、欲望渦巻くなかで奮闘する姿を描く。イ・ギュヒョンは、アキレス腱を負傷したために会見を欠席した。
「舞台や映画で活動をして、35年になります」とこれまでのキャリアについて切りだしたガンホは、「ドラマシリーズに初めて参加します。いま緊張もしていますし、一方でワクワクもしています」と新境地に笑顔を見せ、司会から「緊張した様子のガンホさんは初めて見ます」と声をかけられると、「わかりますか?緊張しています」と素直に吐露。
なぜドラマへの参加を決めたのかという質問には、「私たちは、たくさんの視聴者、観客の皆さんとコミュニケーションを取って、作品の価値を共有することになる。私たちは多様性に富んでいる時代を生きていると思います。そのなかで一番大事なのは、ファンの皆さんとのコミュニケーションであり、触れ合い。さまざまなチャンネルを通して、そのための試みをすることを受け入れる時代なんじゃないかと思います。監督とも話しましたが、本作には膨大な動画配信で公開されているドラマとはまた違ったものがある。だからこそ挑戦であり、新鮮に映るのではないかと思い、好奇心と共に意欲が芽生えました」と力強く語る。また「今回はガンホさんのどのような新しい顔が見られるのか?」と問いかけられると、ガンホは「映画や舞台、今回の作品もそうですが、いつも基準となるのは、その作品がなにを求めているのかということ」とキッパリ。(自分が)新しい姿を見せるというよりは、どれくらいこの作品に溶け込むかが大事で、毎回そういう想いで演じてきました。本作もその過程の一環だと思っています」と俳優として作品第一主義の姿勢を明かしていた。
周囲のキャスト陣も「ガンホさんのデビュー作に参加したかった」「歴史的瞬間」と話すなど、誰もがガンホへの並々ならぬ敬意を表していたこの日の会見。ドラマは初出演とあって、ガンホについて共演者たちが「後輩」と楽しそうに表現しながら、「後輩との共演なのに緊張した」「後輩なのによくおごってくれた」と笑顔を見せ合う場面もあり、撮影現場の雰囲気もとてもいいものだった様子。
ガンホは「いろいろな先輩たちと共にできて、本当に勉強になりました」とにっこり。さらに「チュ・ジンモさんは、35年ほど前に舞台でデビューした時にご一緒した。私のメンターでもあります。俳優としての姿勢、価値観など、私に大きな影響を与えた尊敬する先輩です。また一緒にお仕事をできたことは、個人的にもまた違ううれしさがありました」と特別な想いを打ち明け、感無量の面持ちでジンモとハグ。ジンモは「一緒に演技ができて夢がかなった。本当にうれしかった。ガンホさんは、リラックスさせてくれた。助けられた」と目尻を下げた。俳優としてはこれが初めて経験する会見となったティファニーは、エリートを育成する財団の理事・レイチェル役を演じた。「一緒に仕事ができて光栄でした。私も新人なので、できるだけ勉強させていただこうと思った。劇中でもガンホさんのスーツ姿がかっこいいんですが、私服もとてもかっこいいんです。ガンホさんの私服を見るのを楽しみにしながら、現場に向かいました」とこちらもガンホとの共演に感激しきりだった。
これまでにもガンホとタッグを組んできたヨンシク監督は、「本作を書く時には、当て書きをした。彼と一緒にやりたいなと思いながら、そのイメージを投影しながら脚本を書きました」と明かしつつ、「モニターで見ていても、想像以上に楽しかった」とガンホが唯一無二の俳優だと実感すると共に、手応えもたっぷり。“サムシクおじさん”とは、家族を飢えさせないために、戦争中も毎日3食(サムシク)を与えたことに由来する愛称。食を大切にする韓国ならではの情緒が込められた作品だと分析したガンホは、「キャラクターの姿を通して、いろいろなことを考えさせられるドラマになると思います」と期待を込めたガンホは、「60年代というのは、一食一食に切実な想いがあった時代。食べるということは胃袋を満たすということですが、このドラマは胃袋から始まって、頭までのぼって、ハートで終わる物語。頭でしばらく泊まりますが、最終的にはハートに降りてくる作品」と心情に訴える作品ができたと胸を張っていた。
「サムシクおじさん」は、「Disney+(ディズニープラス)」の「スター」で、5月15日(水)から独占配信。全16話/初週5話一挙配信、以降毎週水曜日2話ずつ、最終週3話配信。
取材・文/成田おり枝