ジミーの足跡で「青春にサヨナラを告げる旅」をたどる『青春18×2 君へと続く道』聖地巡礼【日本編】
同郷と遭遇する「信州・松本なわて通り商店街」と夜空に浮かぶ「松本城」
回り道をして長野県のJR松本駅に降り立ったジミーは、そこから徒歩10分ほどの、個性的な店が長屋風に軒を並べる「なわて通り商店街」に立ち寄り、「一休みはより長い旅のため」と看板に書かれた居酒屋に足を踏み入れる。そこは、偶然にもジミーと同郷の台湾人のリュウ(ジョセフ・チャン)が営む店だった。すっかり意気投合した2人は、閉店後、リュウの案内でライトアップされた松本城周辺を散策する。ちなみに、「なわて通り商店街」のシンボルは、街のいたるところに点在するカエルの石像。「藤井組」の常連俳優である横浜流星が出演する『流浪の月』(22)のロケ地にもほど近い。
「JR飯山線」の車内で18歳のバックパッカーと出会い「上境駅~上桑名川駅の大雪原」で青春の記憶を取り戻す
翌日、松本駅から長野駅に向かったジミーは、長野県と新潟県を結ぶローカル線で、信濃川と千曲川沿いの日本有数の豪雪地域を走る、JR飯山線に乗車。長いトンネルに差し掛かったころ、明るくフランクな18歳のバックパッカー、幸次(道枝駿佑)に話しかけられる。トンネルを抜けた途端、彼の目の前に広がったのは、かつてアミと一緒に観に行った映画『Love Letter』(95)の世界を彷彿させる一面の雪景色。「1回降りちゃいます?」という幸次の誘いに乗ったジミーは途中下車。大雪原へ駆け出す幸次の後を追い、無邪気に雪合戦に興じたあと、18年前のアミとの映画デートの結末を語る。
再び願い事を書き込むランタンを飛ばす、新潟ランタンまつり「ニュー・グリーンピア津南」
隣の上桑名川駅から再びJR飯山線に乗り込み、そこから30分ほど電車に揺られ、森宮野原駅のホームで幸次と別れたジミーは、JR飯山線の終点、越後川口駅からJR上越線に乗り換え、新潟県長岡駅に到着する。幸次に教えてもらった「ネカフェ(ネットカフェ)」に立ち寄り、店内のポスターで日本にもランタン祭があることを知ったジミーは、かつて彼が作ったゲームをプレイしていたネカフェの店員、由紀子(黒木華)の案内で、ランタン祭りの開催地である「ニュー・グリーンピア津南」へと向かう。ちなみに長岡から津南までは、車でおよそ1時間半。台湾と同様、人々の願いを乗せて舞い上がるランタンを目にしたジミーは、かつてアミと交わした約束に思いを馳せる。なお、ネットカフェの店内は、東京世田谷区の「まんがの図書館ガリレオ三軒茶屋」で撮影されたという。
アミの故郷にたどり着く「福島県只見町」
翌日、長岡駅から再びJR上越線に乗り、新潟県魚沼市の小出駅でJR只見線に乗り換えたジミーは、そこから1時間20分ほど東に移動し、アミの故郷、福島県の只見駅へと降り立つ。アミを幼少期から知る中里(松重豊)の案内でアミの実家へと向かったジミーは、アミの母親(黒木瞳)から18年前のアミの本心を告げられる。新潟と福島・会津若松とを結ぶ、秘境を走る“絶景路線”として鉄道カメラマンからも人気の只見線の車窓からは、澄み切った清流や深く美しい渓谷、どこまでも続く田園風景などのパノラマが楽しめる。
ジミーの旅のフィナーレを飾る桜並木「隅田公園」
東京に戻ってきたジミーは、ちょうど「さくらまつり」が行われていた向島の「隅田公園」で、「青春にサヨナラを告げる旅」の終わりを迎える。下町のシンボルである「東京スカイツリー」の麓のエリアで、毎年春になると、吾妻橋から桜橋付近までおよそ1kmにわたりソメイヨシノなどの桜並木が広がり、屋形船や水上バスからも花見ができる。
ジミーや幸次が目にした風景を追体験するには来年の春まで待つ必要があるが、「それまで待ちきれない」という人は、Mr.Childrenの桜井和寿が本作のために書き下ろした主題歌「記憶の旅人」や、大間々昂が手掛けたサウンドドラックを聴きながら、四季折々の美しさに彩られたロケ地を巡る、「ひとり旅」を楽しんでみてはいかがだろうか。
文/渡邊玲子