新垣結衣、「やさしい気持ちになってもらえたら」と『違国日記』に込めた願いを吐露。親友役の夏帆とは久々共演も息ぴったり!
ヤマシタトモコの同名漫画を映画化した『違国日記』(6月7日公開)の公開直前イベントが5月29日に東京・神楽座で開催され、新垣結衣、夏帆、瀬田なつき監督が登壇した。
新垣とオーディションで選ばれた早瀬憩がダブル主演を務める本作。人付き合いが苦手な小説家の高代槙生(新垣)と、両親を亡くした姪・田汲朝(早瀬)という対照的なふたりが同居し、なかなか理解し合えない寂しさを抱えながらも、生活を育むうちにかけがえのない関係になっていく姿を描くヒューマンドラマだ。司会は青木裕子が務めた。
槙生の友人である醍醐奈々を演じたのが、夏帆だ。新垣とは10代の頃に仕事を共にしているが、芝居での共演は本作が初めてだという。「10代の時にお仕事でご一緒していて、そこから10年以上共演することはなかった」と振り返った新垣は、「でも、ずっと昔から知っている人という意識があって。(この作品では)ホン読みが初顔合わせだったんですが、その時から『わー、久しぶり!』みたいな感じ。距離がもうないみたいな感じだったので、夏帆ちゃんが醍醐を演じると聞いた時に、すごくキャラクター的にもぴったりだなと思ったのもありますし、シーン的にはそんなに一緒のシーンは多くないけれど、醍醐と槙生の歴史、一緒に過ごした時間みたいなものを表現する時に、すごく安心感があるなと感じていた」と親友役がしっくりと来ていたと、2人で顔を見合わせた。
「同じことを思っていた」と照れ笑いを見せた夏帆も、「映画のなかでは、原作ほど2人の関係が描かれていないので、この2人の空気感を短い時間でどう表現できるかなと考えていた。でも実際に久しぶりに結衣ちゃんに会ったら、すごく久しぶりに会ったはずなのに、その時間を感じなかった。スッと友だち同士になれた気がして。『これは大丈夫だ』と撮影に入る前に思えた。根拠はないんですが、お話をいただいた時から、主演が新垣結衣さんだと聞いて『大丈夫なんじゃないか』と思った」と相思相愛の想いを打ち明け、新垣も「不思議」と声を揃えながら「ずっと知っている人という感じがした」と目尻を下げた。
さらに新垣は「私は親近感を持っているけれど、相手はそう感じていないかもしれない…とほんのちょっと思ったんです」と正直に話しながらも、「顔合わせで『わー』となったから、『あ、やっぱり』みたいな気持ちになって。撮影の合間も醍醐として現場の空気を動かしてくれて、華やかにしてくれて。槙生は醍醐に節目節目で助けてもらっているんですが、私自身も夏帆ちゃんの存在に助けられながら過ごしていました」と感謝しきり。夏帆も「撮影がとにかく楽しくて。結衣ちゃんに会うのを楽しみに、現場に行っていた」と笑顔を弾けさせていた。
また新垣は「自分に対しても、誰かに対しても正直な人」と演じた槙生の印象を吐露したが、瀬田監督は「新垣さんは、槙生そのまま。正直で誠実で、嘘がない。すごくいろいろなことを相談してくださった」と新垣とキャラクターのハマり具合について証言する場面もあった。新垣は槙生の放つセリフで「私自身、大事にしていきたいなと思った」ものがあるそうで、「私はあなたの気持ちを理解できないし、あなたも私の気持ちを理解できない。それは私たちは違う人間だから」というセリフをピックアップした。新垣は「槙生ちゃんは、だから一緒にいられないのではなくて、原作には続きがあって『だから歩み寄ろう』と言うんです。その気持ちを私自身もすごく大事にしたいなと思う」と心を込めた。
「この映画で伝えたいメッセージはたくさんある」という新垣は、「『違国日記』というタイトル。物語のなかでは、みんなそれぞれの境遇で抱えているものがあって、みんな違う人間だけれども、一緒にいることでトラウマに触れてヒリッとする瞬間もあるかもしれないけれど、一緒にいることで、やさしい時間を過ごすこともできる。それが感じられて救われる」とにっこり。「そういうやさしい物語だなというのが、原作を読んでいても感じたことです。その空気が映画のなかにも表現できたかな、感じてもらえるかなと思っています。やさしい気持ちになってもらえるとうれしいなと思います」と呼びかけて、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝