劇場アニメ『ルックバック』完成披露の前夜に完成!「2人の声を発見できたのは幸運」押山清高監督、声優初挑戦の河合優実&吉田美月喜を絶賛

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劇場アニメ『ルックバック』完成披露の前夜に完成!「2人の声を発見できたのは幸運」押山清高監督、声優初挑戦の河合優実&吉田美月喜を絶賛

藤本タツキによる同名コミックを劇場アニメ化した『ルックバック』(6月28日公開)。本作の完成披露舞台挨拶が6月1日にユナイテッド・シネマ豊洲で開催され、声優を務めた河合優実吉田美月喜押山清高監督が登壇した。

『ルックバック』の完成披露舞台挨拶が開催された
『ルックバック』の完成披露舞台挨拶が開催された

原作は、「ファイアパンチ」、「チェンソーマン」といった話題作を手掛けている藤本による渾身の青春物語。藤野(声:河合)と京本(声:吉田)という2人の少女が漫画へのひたむきな想いでつながりながらも、ある日すべてを打ち砕く事件が起きる。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(09)、『借りぐらしのアリエッティ』(10)、『風立ちぬ』(13)など、数多くの話題作に主要スタッフとして携わってきた押山清高が監督、脚本、キャラクターデザインを担当した。

監督の押山清高
監督の押山清高

初お披露目の日を迎えた本作だが、押山監督は「昨日のお昼まで絵を描いていました」と出来立てほやほやだと告白。「今日はイベントがあるけれど、着ていく服がなくて。今日のお昼に頑張って買ってきました」と新品のスーツだと話して、周囲を笑わせた。「あまりに過酷な日々」だったそうで、「ずっとハードなトライアスロンをやっていたような感覚」とこれまでの過程を振り返りながら、「毎日スリリングすぎて、ようやく終わって。まだ終わり立てすぎて、終わった感じがしていていない。今日、皆さんにご覧いただいて、やっと終わった気持ちになれるのかなと思っています。絵を描き終わったのが昨日の昼で、完成したのは昨日の夜。2か月半くらいはずっと、会社に泊まっていました。ようやく昨日、家の布団で寝ました」といまの率直な気持ちを明かしていた。

藤野役を演じた河合優実
藤野役を演じた河合優実

原作を読んだ時に、特別なエネルギーや力を感じたいう河合と吉田。本作で2人は、初めて声優業に挑戦した。河合は「オーディションで選んでいただいて、すごくうれしかった」と切りだし、「本当にやりたいと思えた作品。声優というお仕事の技術がない自分になにができるんだろうと、すごく考えました。でも考えても、やってみるまで答えは見つからないなと思いながらアフレコ現場に行ってみて、いままで自分が培ってきたもの、自分の持っている感性を素直にキャラクターに吹き込むことができれば、それで精一杯かなという想いでした。全部、頑張りました」と全身全霊を注いだと回想。「台本も普段、見ている台本と違った」と驚きを語った吉田は、「プロの声優さんが実際に収録されている動画も、インターネットで調べてみた。実際にやってみると、あんなにスムーズに声を当てられるというのはすごいことなんだなと驚きました」と必死になって取り組んだという。

京本役を演じた吉田美月喜
京本役を演じた吉田美月喜

押山監督は、そんな2人の演技を「初めてという感じはまったくしなかった。プロの声優さんと、なんら変わりのないお仕事をされた」と大絶賛した。「河合さんは、藤野というキャラクターを想像して『こういうふうにしゃべるのが定石だよね』というところから、もう一歩踏み込んだ存在感、しゃべり方、ニュアンスを含めるのがすごく上手。オーディションでいろいろな方の声を聴いたんですが、明らかに違っていた。皆さんすごく上手で、錚々たるメンバーの方がオーディションに来てくださったんですが、そのなかでも明らかに輝いていた」と熱弁。

続けて「京本役は訛りを表現してもらいたいと思った」と吉田の演じた京本について説明し、「吉田さんには(声優業が)初めてなのに、早口で秋田弁をしゃべってもらった。かなり練習が必要な状況に追い込んでしまったけれど、本番になったら完璧に仕上げてきていて。びっくりしました。京本が引きこもっていたというバックボーンなど、(劇中では)見えないところをどう見せていくかというところも、吉田さんの声がめちゃくちゃハマっていた。ハマり役」と惚れ惚れ。「吉田さんは、声の印象として陰キャ感というか…」と評して、吉田が「あながち間違っていない」と笑うひと幕もあったが、押山監督は「裸のままぶつかっていくというか、藤野に体当たりでぶつかっていく感じなど、唯一無二の声」と分析し、「河合さんと吉田さん、2人の声を発見できたのはすごく幸運なこと」と賛辞が止まらなかった。

「すごくよかった」と完成作の感想を語り合った2人
「すごくよかった」と完成作の感想を語り合った2人

押山監督も大満足のキャスティングとなったが、河合と吉田も演じたキャラクターに共感を寄せる部分が多かったという。河合は「藤野と京本でいうと、藤野に共感できるなと思っていた。完成作を観たら、自分の子ども時代を見ているようで、ああいう子でしたね。プライドが高いというか、人よりできることに天狗になりかけて、それをへし折られるみたいなことも、子どもの時に身に覚えがありますし、見栄っ張りな感じとか、生意気な感じとか」とにっこり。「藤野の人としての弱さ、欠点だなと思えるようなところを、私は愛おしく感じていました。自分のなかにもそれを見た感じがしています」と愛情を傾けていた。


そして話題の原作に挑んだ押山監督は、改めてもっとも苦労したことについて「圧倒的な物量の作画」とコメント。「原作の藤本さんの絵は描き込みの多い、リアルタッチな絵柄。できる限り原作に近づけたいなというのは、僕のなかのテーマになっていました。普段のアニメのデザインではやらないような表現に踏み込んでいる。多くあるアニメーションの映像とは、ちょっと異質なものに仕上がっていると思います。それは大人数でつくるとできないものでもあったので、大半は自分で描くということにチャレンジしてしまった。圧倒的な物量で、毎日ハードワークでした」と自身を追い込みながら、新たな境地を開いていったと話す。河合は「心からすばらしいものだと思う。押山監督の映画を、これから世界中の皆さんが発見していくことが楽しみ」、吉田も「大好きな作品」と目を輝かせていた。

取材・文/成田おり枝

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