石原さとみ、ある共演者のリピート鑑賞に歓喜!『ミッシング』ティーチインイベントで語られた裏話まとめ
2022年の出産後、1年9か月ぶりの芝居に臨んだ石原さとみが主演を務め、『ヒメアノ〜ル』(16) 『空白』(21)の吉田恵輔がオリジナル脚本でメガホンをとった映画『ミッシング』(公開中)のティーチイン付き上映会が新宿ピカデリーで開催。主演の石原さとみ、共演の森優作、細川岳、吉田恵輔監督が登壇し、本作の撮影エピソードを語り合った。
ある日突然いなくなった幼い娘の帰りを懸命に待ち望みながらも、自分たちの力ではどうすることもできない現実との間でもがき苦しみ、マスコミと世間の声に翻弄される母親とその家族の苦悩を描く本作。公開3週目にして興行成績の順位が上がるという口コミ効果絶大の本作は、6月5日時点で興行収入が4億円を超え、観客動員数も29万人を突破した。
口コミの熱さとリピーターの多さでも話題の本作だが、本日のイベントには3回以上鑑賞しているという観客が多く、石原は「精神的な負担も大きい作品なのに体力がすごい!」とツッコミつつ、喜びの表情を見せる。
司会者による周囲の人からどんな反応があったかという質問には、レギュラー番組で共演している濱田マリが観てくれたことを明かし「1回目に観た時は本当に苦しくてつらかっただけど、一筋の光を感じた。その光をもっと欲しい、とおっしゃって。なんと、その2日後に2回目を観に行ってくださったんです!結末も知ってるし、最初からラストのあの光や優しさを求めて観たら、本当にそれをキャッチできたと言ってて。いまはその感覚を自分の中に染みつけたいから、3回目を観に行きたいと思っている!って言ってくださってるんです。一番近くにいる共演者の方が、そんなふうにリピートしてくださるのがすごくうれしくて!」と笑顔がこぼれた。
森は「大学生の甥っ子から『まじスゲー!』って言われたのが一番うれしかったです」と喜びをあらわにする。細川は役者仲間から多くのリアクションをもらったそうで「本当に良い映画だったと言ってくれて、それとセットで『虎舞竜、良かったな』と連絡をもらいます(笑)」と自身の見せ場である台詞について思わぬ反響の大きさを感じたという。
吉田監督は「初日に友人を連れて鑑賞して、みんなにひたすら褒めてもらうという会をしました!」と明かし、会場からは笑いが起きていた。笑顔であふれる観客からは、さっそく質問の手があがる。
撮影現場での森、細川のすごさを実感したエピソードを尋ねられた石原は「2人は一瞬にして溶け込みますよね。その生活感といいますか、空気に。それが本当に羨ましいなって」と2人の佇まいを称賛。
さらに森との撮影で、クライマックスの車中でのシーンにて森からハグを求められたエピソードを披露。「ハグを求められて、私、ショックだったんです…私から言うべきだった…!そして、そういう演技へのアプローチがあるのかと尊敬ししました」と悔しい表情を見せた。
対して森は「撮影上、何回も撮ってると自分は毎回新鮮にやるテクニックがない役者なので、なんかしないとって思って、僕のなかの“リトル森”が姉ちゃんだからお願いしても大丈夫!って言ってたんで(笑)」と当時の心境を茶目っ気たっぷりに振り返った。
映画全体はシリアスな内容にも関わらず、この映画を観た人のほぼ全員が共感するのが、細川演じるカメラマン、不破がふと発する「虎舞竜…」という台詞だ。中村倫也演じる砂田率いる地元テレビ局の取材クルーがインタビューするシーンで、石原演じる沙織里が娘との日常について「なんでもないような日常が…」と真剣に語るなか「頭に虎舞竜が浮かびますよね」と水を差す箇所だ。厳しい現実と独特のユーモアが共存する吉田監督ならではシーンについて「虎舞竜のくだり、あれは笑っていいのかどうか、悩みました。あの場面を撮影した時の現場の雰囲気を知りたい」という質問が。
映画を観た人全員が気になっているであろうこの「虎舞竜」問題について細川は、「中村さんがおもしろく受けてくれてたから、本当にありがとうございます!と思いました」とコメント。さらには、「石原さんの演技に血が通い過ぎていて、言葉全部が生きていた。その演技を見ていたら、台本を読んで想像していたものとはまったく違う形で『虎舞竜』が口から出てきた」と石原の熱演ぶりに圧倒されたことを明かした。
海外の映画祭に続々と招待されている本作。「虎舞竜」などは果たして理解されるのか、翻訳の苦労や実際の反響について尋ねられた吉田は、先週、ドイツで開催された「第4回日本映画祭ニッポン・コネクション」に参加した際のリアクションについて、「なにに対してどう笑ってんのかわかんないけど、日本よりもクスクスってしていた」と語り、「日本人は世界で一番、劇場で笑わない。その環境で育っているので、海外へ行くとウケてるのがうれしいなと思うんだけど、なかなか笑いが収まらないから、そのあとのシーンでもずっとクスクスしてた」と日本とはまた違った、海外ならでのリアクションを振り返った。
石原は本作について「観たあと、絶対良かったって思うから観てほしい!と勧めています」と、森は「吉田監督の作品に共通してると思うのは、生きづらさを抱えてる人たちに対しての眼差しがすごい温かい。この作品に関しては、失踪事件に注視せずにもうちょっと広げて大きい枠で見てみようかなって思ってもらえたら、必ず届くものがあるなって思います」と、おすすめポイントを語った。細川は「別に重い映画ではないというか、映画としてやっぱり良い作品だと思います。大事なものが1つ増えるような感覚がある作品。映画を観るのに1900円から2000円しますが、この映画は、それだけの価値があるものだと信じているので、勧めていただきたいです!」と語った。
また、パンフレットを読んだ質問者からは「様々な場面の脇役に、ワークショップで選ばれた個性的な人がキャスティングされていると知った。私のお気に入りは印刷会社のおじさんだが、それぞれすごいと感じた人やお気に入りのキャラクターは?」という質問が。
石原は、夫の豊(青木崇高)と警察署を訪れた際に対応する「警察官」を挙げ、「そのシーンは実は、ほとんどアドリブだったんです。台詞以外のところもずっと(カメラを)回していて、全部に対してリアクションしてくださるんですよ」と撮影の裏側を明かした。さらに、「打ち上げの時に、沙織里と同じく娘が失踪してしまう母親役の方と、水難事故で子どもを亡くしてしまう母親役の方のママ3人で、号泣しながら励まし合うみたいなことがあって!」と驚きのエピソードを披露。撮影を終えてもなお役そのままの気持ちで苦しさを抱えながら助け合いたいという想いを言い合ったと語り、吉田も思わず「それはおもしろい対談だったかもしれない!」とコメントした。
続いて、森が「細川の次に登場するカメラマン」を挙げると、細川も「俺も!」とシンクロ。森は「あのなんとも言えない顔の感じ。見る人によって、捉え方が変わる顔というか、それってすごい表現としてすばらしい」と大絶賛し、細川が、「2人でカメラの練習をしました」と撮影時を振り返った。
さらに、吉田はワークショップの参加者のなかで一番最初に決めたのがそのカメラマンだったという裏話も明かした。最後に吉田は「沙織里と豊がビラ配りをしている時に遭遇する、サボテンを持ってるおばちゃん」をチョイス。「全然笑わせようと思ってないから。普通に真面目にやってんのにああなっちゃうから」とモノマネを交えながら語ると、役に入りきっていた石原は当時を振り返って「イライラした~」と語った。
最後の挨拶では、吉田は「だいぶ広がってはいるんですけど、それでもまだもっと多くの人に観ていただきたいなっていう欲が止まりません。なので、もっと1人でも多くの人に届くように、皆さんの力を貸していただけたら幸いです。今日楽しいと思ったり、いいなと思ったら、なにかお勧めしていただけるとありがたいです」とさらなるヒットへ向けて拡散をお願いした。
石原も重ねて、「観てくださってあったかい気持ちになれたとか、光を感じられたっていう言葉がすごく大事な気がするんですね。もし落ちたとしても、そこから上がる光があるんだよってあったかいんだよってことを伝えていただいて、勇気を出して映画館に足を運ぼうっていう気持ちになってもらえたらいいな、とすごく思います。ここから皆さんの口コミだったり、SNSの力だったり、友達や家族を誘ったりということを行動に移してもらえたら本当に助かります。今後ともよろしくお願いします」と、“宝物”だという本作へのあふれんばかりの熱い想いを語り締めくくった。
文/山崎伸子
※吉田恵輔監督の「吉」は「つちよし」が正式表記