『青春18×2 君へと続く道』がアジア全域で大ヒットを記録!キャスト、主題歌、カルチャー…国境を越えた3つのポイント - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『青春18×2 君へと続く道』がアジア全域で大ヒットを記録!キャスト、主題歌、カルチャー…国境を越えた3つのポイント

コラム

『青春18×2 君へと続く道』がアジア全域で大ヒットを記録!キャスト、主題歌、カルチャー…国境を越えた3つのポイント

桜井和寿が脚本を読んで書き下ろした「記憶の旅人」が、映画の“ブレない芯”に

2つ目は主題歌だ。手掛けたのは、世代を超えて愛され続ける日本の国民的バンドMr.Children。日本での人気は誰もが知るとおりであり、台湾でも1990年代後半ごろに巻き起こったJ-POPブームを牽引したアーティストとしていまなお支持されている。そんな彼らの楽曲を10代から愛聴していた藤井監督が、ダメ元でオファーを出し、脚本を読んだ桜井和寿がすぐさま書き下ろしたというのが「記憶の旅人」という楽曲だ。

主題歌はMr.Childrenの書き下ろし!作品の本質をとらえた魅力的な楽曲に
主題歌はMr.Childrenの書き下ろし!作品の本質をとらえた魅力的な楽曲に[c]2024「青春18×2」Film Partners

この楽曲について桜井は「「かつて自分のなかに『確かにあったもの』、そしていまも自分のなかに『あってほしいと強く願うもの』が、この映画の冒頭から終わりまで、ずっと流れていて、その懐かしさ奥ゆかしさ温かさは、すぐ近くにあるのに、もう手が届かないようで、もどかしくてもどかしくてたまらなく人恋しくなる。この映画に関わる上で、不純なものは極力取り除いて音楽として抽出したつもりです。それだけが私たちに出来ることでした」と強い想いを語っている。

まだ脚本の段階で作品の本質を捉えた楽曲が生まれたことによって、本作の撮影中にはこの楽曲が一つの“ブレない芯”となったという。そのため映画の世界観との一体感は、これまでMr.Childrenが手掛けてきたさまざまな映画主題歌のなかでもずば抜けて高いものがある。まさに“主題歌までが映画”と言い切れる、理想的なコラボレーションといえよう。

時代に合うカルチャー要素が満載!思わず感情移入してしまう

「記憶の旅人」を聴くと、もう一度2人の初恋の記憶をたどりたくなるはず
「記憶の旅人」を聴くと、もう一度2人の初恋の記憶をたどりたくなるはず[c]2024「青春18×2」Film Partners

そして3つ目は、時代設定に合わせて劇中に散りばめられた様々なカルチャーの存在だ。この要素が作品のリアリティを高め、物語や劇中で起こる出来事に説得力を与え、そして観客が登場人物たちに感情移入するための入り口にもなる。2006年という時代設定を描くため、藤井監督は当時の台湾で流行っていたものを現地のスタッフに教えてもらい、そこから劇中で使用するものを選んでいったのだとか。

ジミーが愛読している漫画はアジア圏でいまなお絶大な人気を集める井上雄彦の「SLAM DUNK」。遊ぶゲームは「Devil May Cry」や「桃太郎電鉄」で、ジミーとアミが一緒に観にいく映画は1999年にアジア圏で公開され大流行となった岩井俊二監督の『Love Letter』(95)。カラオケではモーニング娘。が歌われ、ジミーはアミに台湾の国民的バンドであるMaydayの初期の名曲「ピーター&マリー」を勧める。

【写真を見る】「SLAM DUNK」にモー娘。や「桃鉄」!当時流行りのカルチャーがリアリティを与える
【写真を見る】「SLAM DUNK」にモー娘。や「桃鉄」!当時流行りのカルチャーがリアリティを与える[c]2024「青春18×2」Film Partners

藤井監督をはじめとした30代のクリエイターがリアルタイムで経験したこれらは、日本や台湾に限らずほかのアジア各地域でもブームを巻き起こしたものが多数。主人公たちと同時代を過ごした観客にダイレクトに刺さるだけでなく、その影響を受けた次の代のカルチャーを享受している若い世代の観客にとっても届くものとなっているはず。こうしたディテールへの抜かりないアプローチが本作の世界をより強固なものにし、国境を超えて多くの人々の心を掴む作品へと昇華させたのだ。

「宝物のような映画になった」「映画館でこんなに泣いたのは久しぶり」、「結末に近づくと感情のコントロールができなくなる」など、日本のみならずアジア中から絶賛の声が鳴りやまない本作。現在本作の公式サイトの特設ページでは、映画の大ヒットを記念して全18種のスマートフォン用壁紙が配布されている。劇場で本作を観て切なくも儚い恋模様に魅せられたら、心に残ったシーンの壁紙を入手して、またもう一度ジミーとアミの初恋の記憶をたどってみてはいかがだろうか。


文/久保田 和馬

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