「すみっコぐらし」脚本家・角田貴志も『ブルー きみは大丈夫』に共感!「実生活と結びついて描かれているからこそ、惹きつけられた」
「結末は“ここにたどり着くんだ…!”という感じで、結構意外でした」
「映画 すみっコぐらし」の1作目はサプライズと感動を呼び起こす終盤の展開も話題に。本作も後半の伏線回収が注目を集めている。「カルが何者なのかは、ずっと気になっていました。僕の想像ではビーのお父さんとなにか関係があるのかな?とか、頭のすみっこに置きながら観ていたのですが、結末は“ここにたどり着くんだ…!”という感じで、結構意外でした。最後の最後までわからなかったので、タネ明かしはシンプルに驚きながら楽しめました(笑)。まさにサプライズです。おばちゃんのイマジナリーフレンドもサプライズだったし、ビーがイマジナリーフレンドが見えなくなっていくところの描き方も上手だなと思いました」。
角田が育った時代とは見るものも、触れるものも違っている現代の子どもたちは本作をどのように観るのか想像してもらった。「主人公は12歳。すでに大人な部分もあって、イマジナリーフレンドを想像することもなくなっている年ごろのような気がします。でも、本当はそのぐらいの年齢の子こそ実は不安定でイマジナリーフレンドのような存在が必要だったりするのかなと思ったりもします。インターネットやSNSをやっている子も多いだろうから、それこそ自己肯定感を満足させるために、なんでも肯定してくれるキャラクターがいたらいいとか思ったりするのかな、なんて想像したり。ビーの年齢よりもちっちゃい子たちは、いろいろなキャラクターを見て単純に楽しめると思うけれど、逆に、ビーくらいの年齢の子がどのように観るのか興味があります」。
本作では脚本も務めているクラシンスキー監督は、頭のなかで脚本を書き進めながら、監督目線で演出も同時につけ、映画全編が見えた時点で一気に書き上げるというやり方だ。「僕はイラストも描くので、すごく近いやり方かもしれません。ただ、頭のなかで描くので、映像はすべて僕の頭のなか。だから、プロットの段階では説明不足で伝わらなかったりすることもあります(笑)」と苦笑い。
大事にしているのは「どんな作品でも、キャラクターなり物語なりの配置は結構考えます。『すみっコ』であれば、単純に無邪気にかわいいとかそういうことだけじゃなく、いまの時代、現実に接続できればと頭のすみっこに置きながら書きました。それが出来上がった作品への感想につながっていることもしっかり実感できています」とのこと。脚本家、大人など様々な目線で『ブルー』を楽しんだ角田だが、「いろいろなバリエーションのキャラクターを楽しんでほしいですね。僕もわりとそこですごく満足したところもあるので(笑)。キャラクターを楽しむって、言語化したり、批評のポイントにはならなかったりするけれど、それだけで楽しいってすごくいいなと思えました」と満面の笑みを浮かべ、「そういった部分こそ、大人も単純に“現実逃避”できるポイントです」とおすすめした。
取材・文/タナカシノブ
角田貴志
俳優、脚本家、デザインナー。1978年生まれ、大阪府出身。2004年、第16回公演より京都を拠点に活動する劇団「ヨーロッパ企画」に参加。Eテレ「銀河銭湯パンタくん」シリーズでは、人形デザインと脚本を担当し、脚本として参加した『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(19)と『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』(23)も大きな話題を呼んだ。8月31日(土)から11月9日(土)まで12都市を巡演するヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」に出演する。