リリー・フランキー、橋口亮輔監督最新作『お母さんが一緒』公開記念特別イベントで観客に警告「迂闊にYouTubeに出ないで!」
橋口亮輔9年ぶりの監督最新作『お母さんが一緒』(7月12日公開)の公開を記念して、7月1日より監督作品が3夜連続で特別上映される。初日には『ぐるりのこと。』(08)が上映され、橋口監督とリリー・フランキーがトークショーに登壇した。
<「ひと」を描く映画監督 橋口亮輔監督 特別上映>と題した特別上映は2日に橋口監督長編デビュー作『二十才の微熱』(93)、3日は長編第2作となる青春群像劇『渚のシンドバッド』(95)が上映される。
『ぐるりのこと。』についてはこれまでにたくさん話す機会があったという2人。半年ほど前に映画公開15周年でトークをする企画もあったという。「映画で“周年”(記念)をやり出したらキリがない」と笑い飛ばしながらも、オファー当時を振り返り、リリーのベストセラー小説「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」を読んだ際に「(『ぐるりのこと。』でリリーが演じた)カナオがここにいる!と思った」と語った橋口監督。オファー前にもトークショーを一緒にやったり、交流はあったものの「人となりを知っているわけじゃない。だけど、『東京タワー』を読んで“(カナオが)ここにいる!”と感じてオファーしました」と直感があったと力を込める。
橋口監督のオファーに「即答はしなかったと思う」と語ったリリー。デビュー作以降、前作『恋人たち』(15)まで、橋口監督が発表した長編映画は全部で5本であることに触れつつ、「めったに映画を撮らない監督。監督の作品には出たくても出られない。出たい人がいっぱいいるなかで、“俺でいいんですか?”」という気持ちだったことが、即答しなかった理由だと説明。「2月にオファーしたのに5月頃まで一切返事がなくて…」との橋口監督のクレーム混じりのコメントに「すでに役作りしてたのかな?」のニヤリとしたリリーに観客は大爆笑だった。
橋口監督の現場ではリハーサルをたっぷり行う。『ぐるりのこと。』に出演し、最新作『お母さんが一緒』で主演を務めている江口のりこは、インタビューで橋口監督のリハーサルが面白いと度々話題にしていたそう。そのリハーサルは独特で、「台本の練習をするわけじゃない」と話したリリーは、リハーサルで時間をかけるのは、登場人物の関係性の構築だったと解説。橋口監督はリハーサルの効果は確実にあったと笑みを浮かべ、「リリーさんは芝居経験もほとんどないから、何回も同じことはできない。でもリハーサルをやることで(木村)多江ちゃんと信頼関係ができていたからこそ、多江ちゃんといるときの表情がすごくよくて。演技力のある多江ちゃんが、とことんリハーサルにつきあってくれたことを本当に感謝しています」としみじみ。
また「アドリブのように見えるシーンも、実はアドリブはほとんどなし」と話したリリーは、唯一のアドリブはリリー演じるカナオが木村演じる翔子の鼻を舐めるシーンだったと明かす。アドリブが誕生した経緯について「多江ちゃんが泣きすぎて鼻が痛いと言っていて。足が痛いと言っていたら足を舐めていたかも。そうなっていたら、違う映画になっていたのかな」とジョーク混じりに話し笑いを誘う場面も。さらに「ロマンティックな言い方になるかもしれないけれど…」と前置きし、「撮影中の2か月間は魔法にかかっているような感じ」とし、現場には独特の空気が漂っていて、リハーサル以上のものが出ることもあると話し、大きな拍手を浴びていた。
最新作『お母さんが一緒』にはお笑い芸人ネルソンズの青山フォール勝ちが出演している。青山へのオファー理由はリリーと同様で「直感でした!」と告白した橋口監督。「YouTubeで中川家さんと絡んでいるときにめっちゃスベってたんです。すごくスベってるのに笑っていて、本当にいいやつだなと思ったんです」と直感がさえわたったと強調した橋口監督は「さすがだよね、私」と役にぴったりの人材を探し当てる自分を自画自賛し、笑いを誘う。するとすかさずリリーが「みなさん、気をつけてね。迂闊にYouTubeに出てたら、発見されちゃうかも!」と警告すると、会場も橋口監督も大笑いだった。
取材・文/タナカシノブ