岸本誠&ジャガモンド斉藤&野水伊織、『クワイエット・プレイス:DAY 1』のドラマ性に驚き!「大号泣した」
「クワイエット・プレイス」シリーズの最新作『クワイエット・プレイス:DAY 1』(公開中)のスペシャルトークショーが7月12日にTOHOシネマズ 池袋の轟音シアターで行われ、怪奇ユニット・都市ボーイズの岸本誠、YouTubeチャンネル・シネマンションで知られるジャガモンド斉藤、声優の野水伊織というホラー映画好きのゲストたちが出席。上映後の会場を前に「まさか泣けるとは!」と本作を鑑賞した興奮や、今後の展開予想など息ぴったりにトークを繰り広げた。
本作は、音を立てるものすべてに襲い掛かる何者かに支配され、崩壊した世界を舞台にしたサバイバル・ホラーシリーズ「クワイエット・プレイス」の最新作。物語は、ひとつの家族を襲ったあの衝撃から471日前、世界が沈黙した日“Day 1”へとさかのぼる。謎の生命体が突如として大都市ニューヨークに襲来し、フロドという猫を抱えた女性、サミラ(ルピタ・ニョンゴ)が、同じく1人でニューヨーの街を彷徨っていたエリック(ジョセフ・クィン)と共に、究極のサバイバルを余儀なくされる姿を映しだす。『クワイエット・プレイス』(18)、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(21)で監督と出演を兼任したジョン・クラシンスキーは製作と共同脚本にまわり、『PIG/ピッグ』(20)で初監督・初脚本を務めたマイケル・サルノスキが監督に抜擢された。
※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
上映後の熱気冷めやらぬ会場から、拍手と共に迎えられた登壇者陣。本作を観た率直な感想について「びっくりした」と切りだした斉藤が「まさか泣けるんかい」と話すと、大きくうなずいて共鳴する観客の姿も。「1作目、2作目を観て、劇場でこんなにポップコーンを食べるのが気まずい映画ってないなと思った。3作目も“無音大喜利”というか、新しいジャンル映画として、どういったことをやってくれるんだろうという気持ちだった」とこれまでのシリーズのように、“音を立ててはいけない”というルールのゾクゾク感を描くものかと思いきや、それにとどまらず「ルピタ・ニョンゴ演じるキャラクターには、余命の設定があって。後半のピアノの場面など、結構泣いちゃって。『ルックバック』とこれ、めっちゃ泣いちゃった」と本作のドラマ性に「泣いた」と告白する。すると「今回の登場人物はルールを知らないから、どれだけの人が死ぬんだろうと思って観にいった」という野水も、「そうしたら『え?』『え!?』と思うことばかり。フロドとエリックが出会うあたりから、ずっと泣いていた。大号泣した。その日は1日、目が腫れていた」と同調した。
さらに「もちろん大虐殺シーンや、そういった点でのカタルシスもある」とホラーとしての見どころもしっかりとあると3人が口を揃え、斉藤は「劇中のみんなは(シリーズの)1作目と2作目を観ていないから、(どうすれば襲われないかの)ルールを知らない。こっちは『ダメ、ダメ、ダメ!』と思いながら観て」、野水も「『ダメだよ!』と思った」とシリーズファンとしての特別な視点も堪能した様子。野水が「監督が、1作目、2作目のジョン・クラシンスキーから、マイケル・サルノスキに変わった。サルノスキ監督の前作『PIG/ピッグ』は、ブタを取り戻しに行く(主演の)ニコラス・ケイジの復讐劇かと思ったら、静かな男のドラマだった。今回もサルノスキ監督らしいドラマチックな展開だと思いました」と分析すると、斉藤も「『PIG/ピッグ』では、ニコラス・ケイジが自分のブタを執拗に追い求めて、その先で自分の原点を取り返していく。今回はルピタ・ニョンゴがピザを執拗に追い求めている(笑)」とサルノスキ監督作の共通点に触れていた。
2人の話に大いに共感していた岸本は、これまでの「クワイエット・プレイス」シリーズが「生き残るための戦い」だったとしたら、本作は「どう生きるか」を描いた作品だと話した。岸本は「1作目、2作目は、いかにして無音というルールを使って、おもしろく映画を作るか。クリーチャーに対してどうやって戦って、彼らの習性を見抜いて、弱点をついていくかという、対決ものでもあった。生き残るための戦いだった。本作では、もともと死に場所を探している感じの人が主人公。どういう人生を歩むべきなのかを考える映画だった」とコメント。斉藤は「ルピタ・ニョンゴ(演じる主人公)は、冒頭から世の中がクソだって思っている。ちょっと、(北野)武映画のたけしさんみたい。『ソナチネ』みたいな雰囲気もある」、岸本も「儚さがある。前作とはだいぶ違う」とうなずき合い、斉藤は「確かに1作目、2作目で、バトルものとしての形式は結構やり尽くしている。いま考えてみると、同じことはもうやらないよなと思った」、野水も「もう弱点もわかっているし」、岸本も「方向性を変えるのは、すごいアイデアですよね」と舵を切った製作陣の手腕に舌を巻いていた。
印象的なシーンに話が及ぶと、斉藤は「みんなが静まり返って身を潜めていたけれど、そこからちょっとずつ人が移動し始めるシーン」と集団心理が垣間見える場面をセレクト。続けて「エリックがずっとかわいい。ずっとルピタのあとを追いかけていて、猫っぽい。猫が2匹、出ているよう。彼の成長譚でもある」と語る。野水は「エリックとフロドが出会うところがすごく好き」と目尻を下げ、「エリックがフロドと出会って、なんとなくこの子に付いていこうと思うシーン。フロドは誰かを探していたのかなと考えると、伏線のようでもある。運命のよう。あとで思い返して、泣いていました」と振り返って泣けるポイントでもあるという。岸本は「大雨が降っているなかで、雷に合わせて叫ぶシーン」とのこと。「人間って、話さないとか、声を出さないとか、そういう状況にいるとすごくストレスになるんだろうなということがわかる。リスキーなことをやらないといけないくらい、ちょっとやっていられないという感じになっている。僕もパチンコで5万以上負けた時、やっていた(笑)」と極限状態の行動について心を寄せ、周囲を笑わせていた。
また好きなキャラクターについては、斉藤が「予告編では、本編で襲われる人とはちがうおじいちゃんが殺されている」と本編とは異なるシーンが登場していると説明。「聞いたところによると、(予告編では)ルピタが最初に行ったショーで、人形使いをやっているおじいちゃんが殺されているらしい。本編ではあのおじいちゃんのおいしいシーンが、カットされている。それを聞いた途端に、人形使いのおじいちゃんがすごくステキなキャラクターに思えた」と熱弁しながら、「別バージョンがあるのかもしれない」と妄想した。
野水は「フロド、かわいかったですね」と愛情を傾けながら、「サミラ役のルピタ・ニョンゴさんは、『アス』といったスリラーでもビビったりする役をやっていますが、本作では悲哀をたたえている。どこか諦めているところから、覚悟を自分で決めていくという、変遷のお芝居がすごく沁みた。真逆の存在であるエリックもすごくよかった。エリックの弱さをサミラが支えたり」としみじみ。斉藤も「エリックと出会って彼を救うことで、サミラも救われていくみたいなところがありますよね」と2人の関係性の良さに触れると、岸本は「サミラはそもそも命に対してそこまで執着がない人だったけれど、どうせ死ぬなら、カッコいい死に方をしたいという粋な選択をする。それがすごくよかった。あと、音を出してはいけない(なかで絞りだすような)叫びというリアクションが、みんなすごくうまい」と役者陣の演技も絶賛した。斉藤は「こんな複雑な設定は、ルピタ・ニョンゴじゃなければダメ」とニョンゴだからこそ、演じられた役柄だと称えていた。
この世界に迷い込んだら「自分ならどうする?」という話に花を咲かせる場面もあり、劇中世界のルールについて考察を深めたメンバー。「倒し方はわかっていますからね」と水が苦手、泳げないというクリーチャーの生態に関しても思いを巡らながら、斉藤は「世界中のどこにいてもおかしくない。いろいろな国でやってほしい」と舞台を変えながら、シリーズの継続を希望。国民性として日本人は有利では?という意見もありつつ、野水は「渋谷のスクランブル交差点とかに来たら、終わり」とズバリ。岸本が「映画としては爽快かも」と話すと、斉藤は「ハロウィンの時かなんかにね」、岸本が「ハロウィンに嫌な思い出でもあるんですか」と突っ込むなど、終始息の合ったトークで会場を盛り上げていた。
最後には「ぜひ予告編を」と再びアピールした斉藤が、「映画完成までには、いろいろな試行錯誤があったはず。予告編から、こういうことだったのかといろいろなことが見られる。あと『PIG/ピッグ』を観ると、より理解が深まる。予告編と『PIG/ピッグ』を観て、もう一度本作を観ていただければ」と猛プッシュ。野水は「1作目と2作目を、ぜひ観ていただいて。特に2作目を観ると、エリックは…といろいろとわかる部分や、より泣けるところもあると思います」とオススメし、「みんなで応援すれば、まだわからないクリーチャーの秘密を解き明かせるかもしれないので、盛り上げていきましょう」と続編を願った。岸本は「クリーチャーはもう、世界に出てきています。各地に出てきています。映画を参考にしながら、どういうペットを飼うか、生き延びるためにはどうすればいいかを考えていったほうがいいと思っています」とオカルト&都市伝説系YouTuberとして呼びかけ、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝