江口のりこ、主演映画『愛に乱暴』舞台挨拶で「たくさん働いたな」としみじみ。小泉孝太郎は「10年後が楽しみ」と再共演に期待
映画『愛に乱暴』(8月30日公開)の完成披露舞台挨拶が7月22日、丸の内ピカデリーにて開催され、主演の江口のりこ、共演の小泉孝太郎、風吹ジュン、馬場ふみかと森ガキ侑大監督が登壇した。
「悪人」「怒り」の吉田修一による同名小説を映画化した本作は、いびつな愛の暴走が日常を侵食するヒューマンサスペンス。第58回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭クリスタルコンペティション部門に選出され、森ガキ監督らが登壇したワールドプレミア上映で喝采を浴びた。
2024年3本目の主演映画となる本作が公開される頃には、主演舞台も控えているという江口。「江口のりこイヤーと言っても過言でない2024年。いまの心境は?」とのMCの質問に、江口は「どうかな」といった表情でちょっぴり首を傾げながら「昨年たくさん働いたんだな、という感じ。みんなで作ったものが公開されることは当たり前のことではないので、うれしいですね」と淡々とした口調で回答。江口の様子に小泉は「本当にいつも変わらないからすごい。その現場でも平常心だよね」と感心していると、「孝太郎さんもね」と切り返し、息の合ったトークで和ませた。
この日の舞台挨拶は上映前。本作でいつもの爽やかなイメージとはガラリと違う役を演じている小泉は「みなさんがご覧になる前でホッとしています。映画を観たら、いま感じているみなさんの優しい眼差しは一切なくなると思うので…」と苦笑い。森ガキ監督とは、かなりの時間を費やし、江口演じる桃子の夫、真守のキャラクターを作り上げたそうで、「前髪はミリ単位で調整。撮影前に監督がイメージする真守をしっかり擦り合わせすることができたのは、とても大きかったです」と役作りを振り返った。森ガキ監督は「最初に(真守を)見た人が、“小泉さんだよね?”と思ってくれたら制作陣の勝ちだと思ってました」とのこと。
実際、真守の母親で桃子の姑を演じた風吹は「私も気づかなくて。実際にお芝居で目を見るまで、小泉さんだとわからなかったです」と明かし、「内面も真守になっていたので、会った時はとてもとっつきにくい息子でした(笑)」と印象を語り、笑いを誘っていた。
脚本は原作に比べて、削ぎ落とされ、スマートになっている印象があったと話した江口は「自分が小説で感じたおもしろさを映画で表現できるか」という思いがあったそう。しかし、風吹とのシーンで「ここに義理のお母さんがいるんだ、というのを感じて。それまでは常に原作を近くに置き、何度も原作を読み返していたのですが、映画の『愛に乱暴』を作ろう!という気持ちになれました」と背中を押してもらったと笑顔で感謝した。
ドラマ「名もなき毒」で共演経験のある江口と小泉。「10年前のドラマでは孝太郎さんを追いかけ回す役をやりました。ストーカーでした」とニヤリとした江口は、「今回はこういう役で小泉孝太郎を追いかけるのか…なんなんだと(笑)」と笑い飛ばしながらも「おもしろい方なので、再び一緒の時間を過ごせてよかったです」と共演を喜んだ。「10年に一度のサイクルで追い詰められているのがうれしくて」と笑顔の小泉は「芸能界でいろいろな方と作品をやるけれど、共演や再会はありそうでない、奇跡的なこと。しかも今度は夫婦役で追い詰められる。なにかの巡り合わせというのかな。10年後も楽しみです!」と再共演への思いを語り、観客も期待の拍手を送っていた。
真守の浮気相手を演じた馬場は「私自身の緊張感と役柄の緊張感が相まって、ぴーんと張り詰めた感じでした」と撮影時の心境を吐露。真夏の撮影だったが、暑さを感じないくらいだったそうで「指がかじかむくらい、かなり緊張していて。膝の上で手がずっと震えていました」と説明し、夏とは思えないような体の反応があったと明かしていた。
「シンプルでわかりやすい映画ではないけれど、感じてもらえるものがすごくあると思います。新しいエンタテインメントになりました」と満面の笑みで語った森ガキ監督は、ワールドプレミア上映を振り返り、「ヨーロッパでの反応がとてもよくて。笑うポイントは想像していたのとは違ったけれど、上映後に答え合わせをしたがる人がたくさんいて自信になりました」と胸を張り、「会話と共に、ビジュアル、画で楽しんでいただければ!」と呼びかけ、舞台挨拶をしめくくった。イベントでは大ヒットを祈願して映画にちなみチェンソーでの鏡開きも行われた。
取材・文/タナカシノブ