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【ネタバレレビュー】やっと会えた!最後のキーマン、丸神教授がついに登場。怒涛の伏線回収が待ち受ける「七夕の国」第9話

コラム

【ネタバレレビュー】やっと会えた!最後のキーマン、丸神教授がついに登場。怒涛の伏線回収が待ち受ける「七夕の国」第9話

「寄生獣」や「ヒストリエ」などで知られる漫画家・岩明均の、もうひとつの傑作である「七夕の国」の実写ドラマがディズニープラス「スター」にて独占配信中だ。ある日突如、街や人を丸くエグってしまう恐ろしい“球体”が出現し、主人公で平凡な大学生のナン丸(細田佳央太)が、ひょんなことから事件解明に巻き込まれていく姿を描きだす本作。次々と深まっていく怒涛のミステリー展開が大きな見どころとなるが、散りばめられた謎も独創的で、常識では計り知れないものばかり。それでいて“生きること”への哲学が織り込まれているとあって、回を重ねるごとに「続きが気になって仕方ない!」と視聴者をクギづけにしている。

MOVIE WALKER PRESSでは、そんな「七夕の国」の全話レビューをお届け。本稿では、岩明作品の真骨頂とも言える哲学的要素にシビれると共に、最後のキーマン、丸神教授(三上博史)がついにお目見えして怒涛のクライマックスへと突入していく第9話を、ライターの成田おり枝がレビューする。

※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。

ナン丸の言葉から浮かび上がる“哲学”にうなる!

原作は、1996年から99年にかけて小学館「ビッグコミックスピリッツ」にて不定期連載された同名コミック。“念力で物に小さな穴をあける”というなんの役にも立たない地味な特技を持ったナン丸が、出張先で消息を絶った大学教授の丸神正美を捜すために、丸神ゼミの講師、江見(木竜麻生)や研究生たちと共に“丸神の里”と呼ばれる田舎町を訪問。同じころ、街や人をエグる“●(まる)”が巻き起こす怪事件がメディアを騒がせ始め、ナン丸が自身のルーツや球体の謎に迫っていく姿を描く。次第に“丸神の里”には、“●”を作ることができる能力を持った“手が届く者”、言葉では表現しづらい、ある悪夢を見る“窓を開いた者”という、特殊能力のある人が存在すること。村を去ったかつての神官、丸神頼之(山田孝之)が、能力にまつわるすべての悪夢を終わらせるために壮絶な戦いに身を投じようとしていることが明らかとなり、ナン丸は“手が届く者”としての能力を進化させながら、あらゆる事態にまっすぐに対峙していく。

“丸神の里”の進むべき道とは?
“丸神の里”の進むべき道とは?[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

ド迫力のアクションを交え、“丸神の里”が戦場と化していく様子を映しだした第8話。第9話では、岐路に立たされた“丸神の里”の進むべき道や未来について、それぞれの想いがあふれだしていく。一体、“手が届く者”や“窓を開いた者”は、どのように生きていくべきなのか。“丸神の里”は、外の世界とどのように関わっていくべきなのか。ナン丸と、“丸神の里”の住人で“窓を開いた者”である幸子(藤野涼子)は少しずつ距離を近づけ、対話を重ねていく。

ナン丸と幸子は、対話を重ねていく
ナン丸と幸子は、対話を重ねていく[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

ある静かな夜、ナン丸は「どうしてこんなことになってしまったんだろう」と率直な想いを幸子に吐露。胸の内を明かせる間柄になっている2人だが、さらに幸子は「この世で一番寂しいこと、ナン丸さんはなんだと思いますか?」と彼に語りかける。幸子のような“窓を開いた者”には、「悪夢を見てしまう」という特徴がある。幸子は「自分一人だけが、窓の外へと行ってしまうような感覚がある」と話し、「誰かを捜しているうちに、いつの間にか深くて暗い闇のなかにいて、それからずっと一人。1000年経っても、1万年経っても、暗い場所にずっと閉じ込められている」という気がするのだという。

幸子の手を取るナン丸。ひと筋の希望の光が見える
幸子の手を取るナン丸。ひと筋の希望の光が見える[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

この悪夢の正体がどのように解き明かされていくのかと興味は尽きないが、こういった感覚は、誰もが抱えている孤独や死への恐怖にも通じるものだとも捉えられる。寂しさを告白する幸子に対して、彼女の手をパッと取るナン丸。孤独がつきまとう人生においても、相手のぬくもりを感じられる瞬間は、生きていく希望になるのではないかと実感できるようなひとコマだ。


また、“●”の力で日本中を恐怖に陥れた頼之は、連続殺人事件の容疑者として警察、そして武器商人の増元(深水元基)からも追われる存在となっていたが、彼らが“丸神の里”へと押しかけた場面でも、ナン丸が忘れ難いセリフをお見舞いしている。警察や増元は、頼之の居どころをめぐって町民と激しく対立。増元はマシンガンをぶっ放して威嚇するなど、頼之の持つ力はあらゆる人の心を揺さぶり続けている。そんななかナン丸は「まだなにかできることがあるのでは」と、ケンカ腰でぶつかる前に最悪の事態を回避する方法があるはずだ、まずは頼之に会って目的を聞いてみようと提案する。自身も対象物を丸くエグる能力を持ちながらも「能力はあくまでも“手段”に役立てるための道具であって、“目的”そのものじゃない。こんなものに人間様がいちいち振り回されてちゃいかんのです」と落ち着いた佇まいで持論を展開するナン丸の姿が、なんとも清々しい。

細田佳央太が、ナン丸の心の旅を見事に体現している
細田佳央太が、ナン丸の心の旅を見事に体現している[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

力の使い道に葛藤していた彼がある一つの答えに辿り着く道のりを、ナチュラルでありながらしっかりと体現した細田の演技もお見事だ。「力に振り回されてはいないか?」「目的を見失ってはいないか?」というナン丸の問いかけは、そのまま現実世界における権力や平和について考えさせられるものでもあり、エンタメ作品に人生の哲学をにじませる、岩明作品の真骨頂を堪能できるのが第9話と言えるだろう。

壮大な“謎”に引きずり込まれる「七夕の国」特集【PR】
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