「次これ観たい!」が絶対見つかる。エンタメのスペシャリストたちが「ディズニープラス」スターの高品質作品をジャンル別におすすめ
リアルな描写にドキリ。複雑な人間性を鋭く切り取った海外ドラマ3選
ドラマ部門では、「SHOGUN 将軍」や「一流シェフのファミリーレストラン」などのエミー賞候補や大ヒット作と並び、世界中から選りすぐった幅広いジャンルと多様なテーマを持つ作品を楽しめるのが魅力だ。ここでは、シリアスな作品からコメディまで、様々なアプローチで人間の複雑さや多面性を描いた海外ドラマ3作を紹介したい。
まずは、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(23)でアカデミー賞主演女優賞候補になったリリー・グラッドストーンが出演する「アンダー・ザ・ブリッジ」。1997年にカナダで実際に起きた少女殺人事件をドラマ化し、グラッドストーンは捜査に当たる地元の警察官キャムを演じて第76回エミー賞リミテッド/アンソロジー部門助演女優賞にノミネートされた。
厳格なインド系移民の両親に反発し、不良少女のグループに加わった14歳のリーナの失踪から物語は始まる。橋の下で仲間たちから暴行を受けた彼女は、数日後に遺体となって発見された。事件の夜にいったいなにが起きたのか?キャムや執筆のために帰郷していたジャーナリストのレベッカが真相を追い続ける。ライリー・キーオが演じるレベッカは、原作である同名ノンフィクションの著者、レベッカ・ゴッドフリーをモデルにしている。
SNSが存在しなかった90年代後半、ヒップホップに夢中でギャングに憧れる少女たちの争いが招く取り返しのつかない悲劇を描くドラマは、現在も深刻な社会問題であるいじめや差別の実態に鋭く切り込む。10代の若者たちの心には見栄や嘘、冷酷さと純粋さが同時に存在する。傷つきやすくも残酷な青春の闇を演じる俳優たちは、今後が楽しみな逸材ぞろいだ。
物語の時間軸が前後するなかで被害者と加害者それぞれの知られざる一面が浮上し、さらにリーナの家族やレベッカとキャムの物語としても広がっていく。なかには思わず身につまされるエピソードもあるはず。重いけれど、目を逸らさずに向き合いたい一作だ。
続いては明るいコメディ、南カリフォルニアの新聞社が舞台の「終わってない! 40代わたしのリスタート」を紹介したい。婚約者と破局し、かつての職場に復帰したアラフォーのネルが主人公だ。彼女に任されたのは訃報記事の執筆。不満を抱えながら仕事に取りかかったネルは、ゴーストとなった執筆対象が見える能力があることに気づく。原稿がオーダーされると同時に現れ、ネル以外の人には見えない彼らと対話を重ねて書く記事は、ほかにはないクオリティで好評となる。
各話に登場する多彩なキャラのゴーストとの交流と並行して描かれる親友や、注文の多いルームメイトとの友情、職場の人間関係も“あるある”エピソード満載で楽しい。ジーナ・ロドリゲスは仕事熱心で適当にいい加減なところもある等身大のネルを演じて共感を誘う。彼女と一緒に笑ってホロリとしながら、生きるヒントを得られる。1話20数分というコンパクトさで、隙間時間にサクッと見てリフレッシュするのに最適だ。
最後は、アルゼンチンのコメディ「管理人は知っている」。ブエノスアイレスの高級アパートを舞台に、屋上にプール建設計画が持ち上がり、職を追われる危機に直面した管理人のエリセオが、勤続30年で細部まで知り尽くした住人たちをそれとなく操りながら起死回生を図る過程を描く。
腰が低くて気配り上手のエリセオは横柄な住人にも笑顔を絶やさないが、背を向けると瞬時に無表情に。愛想笑いを浮かべながら毒を吐いて相手をひるませたり、人間の二面性が皮肉とユーモアを込めて描かれている。
グローバリゼーションが進んだいま、大都市は世界中どこも同じように見えるが、それでも地域ごとの特色はある。アルゼンチン独特の日常に触れ、舞台となるヴィンテージ・マンションのモダンなデザインや住人それぞれのライフスタイルが反映されたインテリアも見どころの1つだ。(ライター・冨永由紀)
●渡辺麻紀
映画ライター。ぴあやTVブロス等で執筆中。ずっとハリウッド映画が得意でしたが、最近やっと、韓国ドラマや映画の面白さに目覚めました。
●冨永由紀
ライター。雑誌やWeb媒体で映画紹介やコラム、俳優、監督のインタビューを執筆。新作もチェックしつつ、配信で少し前の名作を掘り起こす温故知新を楽しんでいます。
●平井伊都子
LA在住エンターテイメントジャーナリスト。ライター業から一歩踏み出し、日米のエンタメ業界をつなぐ事業に着手し始めました。