山田尚子監督『きみの色』で主人公を演じた鈴川紗由が語る、役への愛「体が先に動いてしまうところや、マイペースなところが私と似ている」

インタビュー

山田尚子監督『きみの色』で主人公を演じた鈴川紗由が語る、役への愛「体が先に動いてしまうところや、マイペースなところが私と似ている」

「アフレコでは、山田監督の言葉が救いになりました」

山田監督は本作の製作報告会で、オーディションで出会った鈴川に“ひと耳惚れ”したと明かしている。いざ始まったアフレコでは、鈴川にとって山田監督の存在が大きな励みになったという。

それぞれに悩みを抱える3人が、音楽を通して成長していく姿を描く『きみの色』
それぞれに悩みを抱える3人が、音楽を通して成長していく姿を描く『きみの色』[c]2024「きみの色」製作委員会

鈴川は、「オーディションの時に数ページ読ませていただいた脚本からは、トツ子に対して『おとなしい女の子なのかな』という印象を抱いていました。でもすべて読んでみると、きみとルイを引っ張っていく存在なんだと気づいて、印象がガラリと変わりました。また、トツ子の明るさやチャーミングさが、3人の空気を作っているんだと思うと、アフレコの前にはどうやって表現したらいいんだろうと悩むこともありました」と打ち明けつつ、「山田監督が、『鈴川さんのままでいいですよ』と言ってくださった。迷っていた私にとっては、ものすごく救いの言葉になりました。アフレコをしていた当時、私はトツ子と同い年ということもあり、その言葉をいただいてからは自然体や等身大で演じることができたらと思って臨みました」と感謝をにじませる。

また山田監督は、「オーディションで実際にお会いしたら、鈴川さんはトツ子にしか見えなかった」とも話している。キャラクターと重なる点について「あらかじめいただいていたトツ子のイメージビジュアルに寄せられるように、オーディションには三つ編みをしてオーバーオールを着ていったんです。その印象が強かったのかなと思います」と笑顔を弾けさせた鈴川。「私は学校でもおとなしめのほうだったので、トツ子のようにすごく明るいというわけではないんですが、頭で考えるより体が先に動いてしまうところや、マイペースなところもトツ子と私は似ているなと思います。あと私も、小さなころにクラシックバレエを習っていたんです。でも運動神経が悪くて、なかなかうまくいかなくて…。そっくりだなと思うところがたくさんありました」とトツ子にたっぷりと愛情を傾ける。

山田監督ならではなの、足元に焦点を当てた演出にも注目
山田監督ならではなの、足元に焦点を当てた演出にも注目[c]2024「きみの色」製作委員会

劇中で、トツ子&きみ&ルイは、バンド活動で音を重ねることによって心を一つにしていく。アフレコも3人のシーンは、高石、木戸と一緒に取り組むことができたと話す。「今回は3人とも声優初挑戦だったので、台本の持ち方から話し合いながらやっていました。アフレコブースの中ってすごく密閉されていて、別世界にいるような感覚になるんです。まるで3人だけの時間が流れているようで、とても不思議な感覚でした。『一緒に頑張ろう』と声を掛け合ったり、2人の存在が支えになっていました」と演じたキャラクターと同様に、高石、木戸とも励まし合いながら前に進むことができたとしみじみ。


トツ子、きみ、ルイの3人で結成したバンド、「しろねこ堂」の演奏シーンは圧巻!
トツ子、きみ、ルイの3人で結成したバンド、「しろねこ堂」の演奏シーンは圧巻![c]2024「きみの色」製作委員会

「バンド練習をする教会で3人が一晩を過ごして、ルイが『僕たちは好きと秘密を共有しているんだ』と話すシーンがあります。あのシーンでは、アフレコブースを暗くして、3人で椅子に座ってコソコソ話をするようにして収録をしました。劇中のシーンとリンクさせるような状況を皆さんが作ってくださったことで、気持ちや空気感を作ることができました」と印象的なシーンに触れながら、「アフレコブースを出たところに、スタッフさんがいつもお菓子をたくさん用意してくださっていたんです。しかも映画の内容に合わせて、カラフルなお菓子がたくさんあって!休憩時間にはみんなでお菓子を食べて、気持ちをリフレッシュして『頑張ろう!』と力をもらっていました」と温かな時間を過ごしたと目尻を下げる。

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