マーキュリー計画で活躍したヒロインたちの物語『ドリーム』。そのスピーチが感動を呼ぶ!
東西冷戦下に、アメリカ合衆国初の有人宇宙飛行を目標に実施されたマーキュリー計画。宇宙飛行士に選ばれた7人の男たちは、映画『ライトスタッフ』(83)などでその人生が描かれ、多く人に知られる存在だが、彼らの陰で“知られざるヒロインたち”が活躍していたことをご存じだろうか。
彼女たちの存在を今に伝えた作品『ドリーム』(9月29日公開)が、多くの人に勇気と感動を与え、全米で拍手喝采を浴びた。昨年末の限定公開を皮切りに大きな反響を呼び、年明けから拡大公開を迎えると、それまで3週連続首位だった『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)を抜き去り全米映画興行ランキング1位を獲得。その後11週連続でトップテン入りし、本年度の第89回アカデミー賞では、作品賞、脚色賞、助演女優賞の3部門へのノミネートを果たした。
1961年、ソ連との熾烈な宇宙開発競争を繰り広げるNASAのラングレー研究所には、ロケット打ち上げに必要不可欠な“計算”を行うために、優秀な頭脳を持つ黒人女性のグループがあった。キャサリン、ドロシー、メアリーは、優秀であるにもかかわらず“黒人だから”“女性だから”という理不尽な差別よって、仕事上で壁に直面する。
今回、NASAの技術者を夢見るメアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)が、技術者養成プログラムを受講できる学校に通うため、裁判所で判事に訴えかけ、自ら道を切り開こうとするシーンの映像が到着した。
まだ人種差別が色濃く残っていた当時、NASAには黒人技術者の前例がなかった。それどころか、技術者養成プログラムは白人専用の学校でしか行われていなかった。その上、黒人に対する差別に敏感なメアリーの夫も、女性が技術者になるのは無理だと言う。
しかし、メアリーは諦めなかった。訪れた裁判所で「肌の色は変えられません。だから前例になるしかないのです。判事のお力が必要です。今日処理する案件で、100年後も意義があるのは?あなたが前例になれるのは?」と、判事に既存のルールに縛られず、前例となることの意義を訴える。
メアリーを演じたのは、ポップスターとして音楽シーンで活躍するジャネール・モネイ。個性派のアーティストの大抜擢となったこのキャスティングについて、監督のセオドア・メルフィは「彼女はエネルギーに溢れていて、メアリーと同じように生き生きしている。魅力的な40年代の映画スターのような雰囲気を持っているよね」とその理由を明かした。
またモネイ自身も、この大役へのチャレンジを決意した理由を「この歴史を伝える一員になれるのが、大きな刺激になったわ。メアリーは亡くなったけれど、その精神はまだ生きているの。彼女と話をするチャンスはなかったけれど、彼女は間違いなく私の心に話しかけてくれた。文字通り世界を変えた人だし、私にはメアリー・ジャクソンの役を引き受けることが何よりも一番重要なことになったの」と振り返る。
度重なる苦難に屈することのない彼女たちは、新たな時代を自らの手で切り開いていく。そして彼女たちの行動は、未知なる宇宙へ飛び立とうとする人類の夢へと繋がっていく。“知られざるヒロインたち”がすべての人に贈る勇気と感動の実話『ドリーム』。いまから公開が楽しみだ。【Movie Walker】