ホアキン・フェニックスが語る「ジョーカー」の役作りで大切しているもの「“この男はどうなるのか?”を突き詰めた」
「僕がキャラクターの感情をナビゲートできたのは、監督と共演者がガイドになって導いてくれたから」
フェニックスのエンジンがかかったのは、脚本を目にした時だった。「とてもすばらしい内容でした。そんな脚本に導かれ、現場ではトッドが的確に指示を出してくれ、すばらしい共演者とコラボレートできました。僕がキャラクターの感情をナビゲートできたのは、彼らがガイドになって導いてくれたからなんです」。
前作で主要映画祭の主演男優賞を総なめにしたフェニックス。アーサーを演じるうえで大切なのは、アーサーは何者かを突き詰める作業だという。「前作もそうですが、掘り下げたのはアイデンティティ。役作りで“この男はどうなるか?”を突き詰めました。名声という意味でアーサーはジョーカーになることで望みを果たせました。しかし1人の男としての人生、つまり愛や家族を望んだ時に彼はどんな行動をするのか。もし自分に分身がいたら、彼は自分を見てどう考え行動するか。そこからキャラクターを掘り下げていきました」。
病みキャラとして知られるジョーカーは、メイクや衣装などエキセントリックなルックスも魅力。キャラクターデザインに加え、前作では20キロ以上も減量したフェニックスの肉体も話題を呼んだ。もちろん今作でもフェニックスは肉体を改造しアーサーを再演した。「正直、今回もきつかったですね(笑)。準備段階に行うことの多くを占めていたのが減量。ランチやディナーを抜くなど極端な方法で体重を落とすと、感情が不安定になるなどメンタル面にも大きく影響した気がします」。
前作はフェニックスのダンスシーンも話題を呼んだが、今作は全編に歌やダンスが散りばめられている。「若いころはともかく、ふだん歌ったり踊ったりすることはないですね」と笑うフェニックスや、リー役のガガの華麗なショーがハードなドラマを盛り上げた。「ミュージカルに近いスタイルですが、ミュージカル映画ではありません。制作プロセスでおもしろかったのは、キャラクターの観点から音楽を使用していること。ミュージカル映画のように“ここは大きなナンバーで盛り上げよう”という使い方はしていません」とフェニックス。
現場ではセリフ同様、歌もライブレコーディングされた。「例えばリーが歌うシーンでも、ステファニーはキャラクターの心情に合わせて声を調整してました。ご存じのように彼女はとてもパワフルな声の持ち主ですが、単にすばらしい歌を披露するのではなくキャラクターの感情に合わせて瞬間ごとに声量を調整していたんです。とても興味深いアプローチだと思いました。キャラクターがけん引する、感情ベースの音楽映画ということですね」。音楽を担当したヒドゥル・グドナドッティルの楽曲はもちろん、『バンド・ワゴン』(53)などハリウッドの名作を飾ってきたスタンダードナンバーを取り入れているのもお気に入りだという。