鬼才ヨルゴス・ランティモス最新作『憐れみの3章』で“4役”に挑んだ逸材、マーガレット・クアリーを知ってる?

コラム

鬼才ヨルゴス・ランティモス最新作『憐れみの3章』で“4役”に挑んだ逸材、マーガレット・クアリーを知ってる?

女王陛下のお気に入り』(18)や『哀れなるものたち』(23)の鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の最新作となる『憐れみの3章』(9月27日公開)。エマ・ストーンやジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォーといった実力派が顔をそろえた本作で、「すばらしく、とても具体的なアプローチができる」とランティモス監督が舌を巻くのは、『哀れなるものたち』に続いてタッグを組んだ逸材マーガレット・クアリーだ。

【写真を見る】ミステリアスな女性、友人、双子。マーガレット・クアリーが『憐れみの3章』で魅せる“4つの表情”
【写真を見る】ミステリアスな女性、友人、双子。マーガレット・クアリーが『憐れみの3章』で魅せる“4つの表情”[c]2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

モデルとしての活動を経て『パロアルト・ストーリー』(13)でスクリーンデビューを飾ったクアリーは、Netflix映画『Death Note/デスノート』(17)で原作の弥海砂役にあたるヒロインのミア・サットン役を熱演。さらにクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)では、ブラッド・ピット演じるクリフを“マンソン・ファミリー”が集まる牧場へと連れていくヒッピーの少女プッシーキャットを演じ注目を集めた。

その後「フォッシー&ヴァードン 〜ブロードウェイに輝く生涯〜」で第71回エミー賞(リミテッド・シリーズ部門)助演女優賞に、「メイドの手帖」では第79回ゴールデン・グローブ賞のテレビドラマ部門で主演女優賞にノミネートされるなどドラマシリーズで実績を積み、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた『Stars at Noon』やコーエン兄弟の弟イーサンが単独でメガホンをとった『ドライブアウェイ・ドールズ』(24)など主演作が相次いでいる。

ドラマ賞レースで注目を浴び、近年は主演映画が立て続けに公開されているマーガレット・クアリー
ドラマ賞レースで注目を浴び、近年は主演映画が立て続けに公開されているマーガレット・クアリー[c]2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

元々ランティモス監督の大ファンだったというクアリー。『哀れなるものたち』ではストーンが演じたベラと同様に“生まれたての女性”として蘇生されたフェリシティ役を演じていた。その制作中に本作のことを聞かされたようで「脚本を読む前からぜひキャスティングしてほしいと思っていました」と振り返り、「とても奇妙で楽しく、バカバカしくもあり激しくもあり、悲しい。すべてがある映画。脚本を読んで興奮したし、みんなが演じているのを見てさらに興奮しました」と語る。

本作は、“自分の人生を取り戻そうと格闘する、選択肢を奪われた男”、“海難事故で失踪した妻が、帰還後に別人になっていた夫”、そして“卓越した宗教指導者になるべく運命付けられた特別な人物を懸命に探す女”という3つの奇想天外なストーリーによって構成されており、それぞれのストーリーで同じキャスト陣が異なる3つの役柄を演じているという、これまでに例のないタイプの作品だ。


エマ・ストーンやウィレム・デフォーら豪華俳優陣は、3つのストーリーで3つの異なる役柄を演じている
エマ・ストーンやウィレム・デフォーら豪華俳優陣は、3つのストーリーで3つの異なる役柄を演じている[c]2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

そのなかでクアリーだけは、“4つの役柄”を演じ分けるという大きな挑戦をしている。第1章ではデフォー演じるレイモンドのそばにいるミステリアスな女性ヴィヴィアン役。第2章ではストーンとプレモンスが演じる夫婦の友人であるマーサ役。そして第3章では、特殊能力を持つ可能性を秘め、カルト集団が探し求める人物である双子のルースとレベッカの2役。クアリーは一本の映画のなかで4つの役を演じたことについて「まさに“贈り物”と呼べるエキサイティングな体験で、本当に特別な機会でした」と充実感たっぷりに振り返っている。

そして「ヨルゴスのような人や、このすばらしいキャストと仕事をすることの贅沢なところは、作品をつくっている間が本当に安全で自由でいられるということです。なにを目指しているのかがわかり、私自身も私がやっているのなら大丈夫だという感覚になります」と、鬼才と熟練の共演者たちのなかで、自信をもって4つの役に臨んだことを明かすクアリー。彼女がこの異色な世界観のなかで、どんな輝きを放っているのか。劇場でじっくりと目撃してほしい。

文/久保田 和馬

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