深夜のトーク番組で起きた惨劇とは?番組の歴史を辿る『悪魔と夜ふかし』本編映像チラ見せ
テレビ番組の生放送中に起きた怪異をファウンド・フッテージスタイルで描く『悪魔と夜ふかし』(10月4日公開)。このたび、放送事故の舞台となる深夜トーク番組「ナイト・オウルズ」の歩みをたどる本編映像が解禁となった。
全米でスマッシュヒットとなり、映画批評を集積、集計するサイト「Rotten Tomatoes」で97%フレッシュ(2024年7月29日現在)を記録している本作。ホラー作家の巨匠スティーヴン・キングも「実に見事だ。目が離せなかった」とXで絶賛を寄せている。深夜トーク番組と言えば、アメリカで生まれたトーク番組のジャンルのこと。ニュースが終わる23時前後から、番組の顔である司会者がその日の時事ネタに鋭く切り込み、大物セレブや人気俳優をゲストに呼ぶインタビューコーナー、コント、ハウス・バンドによる演奏で構成されている。
本作で後に惨劇の舞台となる「ナイト・オウルズ」もそのスタイルに則った番組だ。記念すべき第一回目の放送は、1971年4月4日。70年代のアメリカと言えば、ベトナム戦争での敗北、公民権運動の急激な衰退と過激化、石油危機などと結びついた経済の大混乱と、超大国でありながら未来への希望が失われた“恐れと暴力の時代”を迎え、同時に、そんな社会の不安や揺らぎに呼応するかのように、超常現象、オカルトブームが巻き起こっていた。
そんな時代において「ナイト・オウルズ」は、混沌のなかを生きる国民の慰めとなっていた。番組ヒットを担うホストとして白羽の矢が立ったのは、シカゴの人気ラジオ・アナであった主人公ジャック・デルロイ(デヴィッド・ダストマルチャン)。各回個性豊かなゲストを招き、ジャックによる軽妙なインタビューとハウス・バンドによる粋なジャズ・ミュージック、体当たりのコントで深夜のアメリカの心を掴む人気番組として瞬く間に成長していく。放送局との5年契約を締結し、番組はエミー賞候補にも選ばれるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いのジャックが次に目指すもの。それは“深夜の帝王の座”だった。
解禁された映像では、まるで70年代に実際に放映されていた番組かのように、当時を彷彿とさせるリアルでレトロな記録映像が小気味良い編集で切り取られ、冒頭からトップギアで作品の世界観に没入することができる。そして、映像のなかには、「キング・オブ・レイト・ナイト」として知られる実在するアメリカの大物司会者ジョニー・カーソンが、ジャックのライバルとして登場。ファウンド・フッテージスタイルらしく現実と虚構を行き来しながら観る者を翻弄する。
監督を務めるのは、長編デビュー作『モーガン・ブラザーズ』(13)、2作目の『スケア・キャンペーン』(16)、そして本作が3作目となる、話題のホラー作品を立て続けに発表してきたオーストラリア出身の鬼才兄弟監督、コリン&キャメロン・ケアンズ。彼らにとって深夜のトーク番組の存在は大きく、アメリカで放映されていた「ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジョニー・カーソン」のオーストラリア版「ザ・ドン・レーン・ショー」とともに幼少期を過ごした。そこで起きた、司会のドン・レーンによるセット崩壊と番組放棄という伝説の放送事故は、彼らの記憶にとどまり続け、後に本作のトーンを決定づけたと明かしている。
アメリカでは現在も尚、各局で人気コメディアンが司会を務める深夜のトーク番組が放映され、それぞれのカラーを活かしながら鎬を削り合っているが、本作ではそんな番組制作の赤裸々な裏事情や「あるある」までもがふんだんに盛り込まれている点にも注目してほしい。
ハロウィンの夜、「ナイト・オウルズ」で一体なにが起きたのか?ジャックが迎える衝撃のラストをぜひ、劇場で確かめてほしい。
文/平尾嘉浩