最新作が楽しみすぎた風間俊介が、“ビートルジュース愛”を語り尽くす!「積み重ねてきた年月が、映画のなかに閉じ込められている」
「予算があってパワーアップしているのに、“あえてミニマムに”というところにセンスを感じます」
バートンワールド全開となった本作は、バートン監督の過去作をごちゃ混ぜにしたような世界観でもあったと風間は指摘する。「ウィレム・デフォーが演じるウルフの脳みそがちょっと出ている感じとか、まさに『マーズ・アタック!』と思いました。ほかにも『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『(ティム・バートンの)コープスブライド』…いろいろなものを思い出させてくれました。模型のシーンで始まるのはもちろん前作と同じでしたね。『シザーハンズ』ではクッキー工場でクッキーが流れているシーンから始まりますし、こういったティム・バートンが世界観にいっきに引き込もうとする手法は本当に大好きです」
このどこか一貫するバートン監督のイマジネーション。本作でもそのこだわりと愛は発揮されており、ほとんどCGを使わない手法で撮影されたのだという。この“手作り感”ともいえる質感を、風間はどのように感じたのだろうか。「いまの技術なら、本物と見間違うようなものが描けるはずです。なのに、粘土のようなあの感じを出していて、作り手たちが素材感として大事にしたのだと思いときめきました。いまの技術なら消せるはずのものをそのまま残しているし、明らかに予算があってパワーアップしているのに、“あえてミニマムに”というところにセンスを感じます。サンドワームも出てくる砂漠で走るシーンは、絶妙にちょっとダサい!走り方もその場で足踏みしている感があって、あのシーン最高だったな(笑)」と、大爆笑で振り返っていた。
「僕のなかでは今回で『ビートルジュース』の世界は完成した」
ビートルジュースはUSJのアトラクション内でのDJとしても人気を集め、近年ではミュージカル化もされている。作品の大ファンの風間が思う、ビートルジュースのコンテンツとしての魅力はどんなところにあるのか?「まずはキャラクターとして、“残酷性”と“コメディ”のバランスが最高の配分だから。例えば、見た目が近くてこの2つを持っているジョーカーも僕は大好きだけど、ビートルジュースよりやっぱり暴力性がほしいですよね。ジョーカーには暴力性とそれを笑っていることの怖さをはらんでいてほしいけれど、ビートルジュースにはそれがなくて、ちゃんと噛ませ犬なところがいいんです(笑)。ちょっと『男はつらいよ』の寅さんのように、『最後振られてかわいそうだね。でもさ、僕たちはそういうところを愛するんだよ』みたいなところがビートルジュースにはあるんです。でも健全なキャラクターでは決してないので、『健やかなものだけじゃないのがほしい』と言う人には、ビートルジュースは最高の配分キャラクターなんじゃないかな」とニヤリ。
さらに、アンソニー・ホプキンスが自身の尊敬する俳優だと前置きしたうえで、なぜビートルジュースが世界的なホラーアイコンになったのか持論を語ってくれた。「僕も20代のころから罪を犯す役や、人の気持ちがわからない役を数多やらせてもらいましたが、その最高峰にはアンソニー・ホプキンスが『羊たちの沈黙』で演じたハンニバル・レクターがいるんです。名作だし、人気のキャラクターではあるけれど、テーマパークのパレードにハンニバル・レクターが出てきたら…(笑)。出そうと思う人はいないですよね。でもビートルジュースなら大丈夫。ちょっとダークな部分もあるけれど、出てきたら『わー!』って喜べるキャラクターというのが、最大の魅力なんじゃないかなと思います」。
最後に続編についての期待について尋ねると、「僕の解釈では、前作の『ビートルジュース』、今回の『ビートルジュース ビートルジュース』で、すでに3回名前を唱えちゃっているからここで完結かな」ときっぱり。「どんな解釈もできるし、大好きな作品だから次に『ビートルジュース ビートルジュース ビートルジュース』を作って本当に完結するのもいいなと思うし、もちろん観に行きます(笑)。でも、今回のタイトルを聞いた瞬間に、前作のタイトルと合わせて『おおおお!3回唱えた!!』ってなったし、作品の描かれ方もすばらしかったので、僕のなかでは今回で『ビートルジュース』の世界は完成したと思っています」。
取材・文/タナカシノブ