最初から語り直すからこそ、初心者も楽しめる!『トランスフォーマー/ONE』“王道”が詰まった物語の魅力
メインキャラに抜擢された、エリータの存在感
そしてもちろん、「トランスフォーマー」ファンが喜ぶ要素も満載。どこで、どのような形で出てくるのかはその目で確かめてほしいが、ディセプティコンに加わる前のサウンドウェーブ、ショックウェーブ、スタースクリームなど、シリーズの常連キャラクターたちがしっかりと登場。彼らとの関わりが、D-16がメガトロンへと変貌してくことへもしっかり連動している。
さらに登場キャラクターのなかで注目したいのは、劇中で活躍する女性キャラクターだ。男児向け玩具が元ネタとなっているため、「トランスフォーマー」シリーズでは、女性キャラクターが少なく、これまでの実写版でも女性型のトランスフォーマーが登場してもスポットが当たることが少なかった。しかし本作では、エリータとエアラクニッドという女性キャラクターの活躍が描かれる。
本作のメインキャラクターの1人であるエリータは、最初のアニメシリーズ「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」の第40話に登場したキャラクター。ウーマンサイバトロンのリーダーで、オプティマスプライムの恋人という設定で、その後にも多数登場する女性型トランスフォーマーの元祖とも言える存在だ。その後もいくつかのアニメシリーズなどで再登場しているため、「トランスフォーマー」ファンにとってはお馴染みのキャラだが、今回は原点が描きなおされるにあたり、その声をスカーレット・ヨハンソンが演じ(日本語吹替版では吉岡里帆が担当)、キャラクターの存在感も含めて改めて大々的にスポットが当てられることとなった。本作の続編が作られることになれば、今後の女性型トランスフォーマーの描かれ方にも大きな影響を与える存在となりそうだ。
新しい「トランスフォーマー」への“継承”と“幕開け”
本作はオプティマスとメガトロンの過去の因縁が明らかになるという単なる答え合わせを超え、現代の視点でシリーズを最初から語り直すことで、サーガのアップデートを図ることを目的としながらも、前述したとおり様々な角度からサイバトロン星での出来事を描き、変わっていくオプティマスとメガトロンの関係性をきっかけに「トランスフォーマー」の世界を通して現代社会を透かしてみせるような、社会的な要素を含めたメッセージ性が込められた1作となっている。
「トランスフォーマー」シリーズを知らない方でもここから触れ始めることができ、生粋のファンであればよりディープに楽しむことができる作品というポジションや条件をしっかりと守りつつ、テーマ性の強さが際立つ1本の映画としても楽しめる仕上がりとなっているのだ。
文/石井誠