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青島と出会い、警察組織を変えようとした室井慎次…「踊る大捜査線」シリーズで描かれた葛藤と最新作の状況を整理

コラム

青島と出会い、警察組織を変えようとした室井慎次…「踊る大捜査線」シリーズで描かれた葛藤と最新作の状況を整理

組織改革審議委員会委員長に就任するも現在は故郷の秋田に戻った室井

その後、室井は北海道や広島に左遷された時代もあったが、順調に組織のなかで出世し、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(12)では、組織改革審議委員会委員長に就任。ついに警察組織を自ら変えるポジションに就いた。それから12年。新作映画の特報で室井はいま、故郷の秋田県に帰って無職であるという衝撃の事実が明かされる。

『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』では組織改革審議委員会委員長に就任した
『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』では組織改革審議委員会委員長に就任した[c]2012フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

委員長に就任したあとの彼の経歴を見ると、5年後に警察庁長官官房審議官交通局担当へ異動し、2021年に同担当を退職している。そこから秋田に戻ったようだが、特報で警視庁長官補佐の坂村(升毅)が、「5年もやったんだから、もういいでしょう」と室井に言っている場面を見ても、彼の組織改革は思ったような成果を上げられなかったらしい。

過去シリーズに登場した重要人物も絡んでくる『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』

そして今回の2部作になるが、独身で秋田の田舎に1人で暮らす室井は、犯罪に絡んだ背景を持つ少年たちと生活を始め、そのことでも地元の人から疎まれている存在。さらには『踊る大捜査線 THE MOVIE』(98)に登場した猟奇的殺人犯で、『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』(10)では犯人を陰で操る黒幕でもあった日向真奈美(小泉今日子)の娘、杏(福本莉子)と出会い、室井は否応なく過去の事件と向き合うことになる。

『室井慎次 敗れざる者』『生き続ける者』では日向真奈美の娘、杏が物語のカギに
『室井慎次 敗れざる者』『生き続ける者』では日向真奈美の娘、杏が物語のカギに[c]2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

日向真奈美は逮捕前、Webサイト「仮想殺人事件ファイル」を運営していて、このサイトを介して犯罪に無関係な人間を犯罪者に変貌させてしまう、カリスマ的犯罪者だった。『ヤツらを解放せよ!』の主犯、須川圭一(森廉)も彼女に感化されて罪を犯した1人。この時、再度捕まった彼女は「圭一はまだいるぞ。いたるところに」と青島に捨て台詞を残している。その真奈美の娘である杏も、室井と暮らす少年たちに言葉で影響を与える存在のようで、人の心を操る“最悪の個人犯罪者”である母親の血を受け継いだ杏と、かつて組織の力を信じて変えようとした室井との関係が見どころになる。果たされていない青島との約束、室井が警察を辞めなくてはならなかった理由、秋田まで追ってくる最悪の殺人犯、日向真奈美の影響力。様々な謎を孕んで、シリーズの新たな伝説が映しだされていく。

最新作では『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』で犯人を陰で操っていた黒幕、日向真奈美の存在も関わってくる
最新作では『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』で犯人を陰で操っていた黒幕、日向真奈美の存在も関わってくる[c]2010フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

最新作では室井の人間臭い面も描かれる?


無口で常に眉間にしわを寄せた室井は、柳葉敏郎一代の当たり役だが、今回の2部作ではいつもと違った一面も確認できる。もともと室井の特技だったきりたんぽ鍋を少年たちに作ってみせる場面もあるし、彼らとの疑似親子的な関係によって、厳しいキャリア官僚であろうと努めていた時代にはない、室井の人間臭い魅力が見られそうだ。

【写真を見る】無口で常に眉間にしわを寄せた室井慎次は、柳葉敏郎一代の当たり役(『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』)
【写真を見る】無口で常に眉間にしわを寄せた室井慎次は、柳葉敏郎一代の当たり役(『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』)[c]2012フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー

柳葉は1980年代からトレンディドラマの俳優として人気を集めながら、秋田県人としてのローカル色を失わない親しみやすい人柄が魅力だった。この2部作では、室井のキャラクターと柳葉自身のイメージがより密接に重なり、一つになっている予感がある。そういう意味でも、室井慎次にとっても柳葉敏郎にとっても一つの集大成と言っていいのではないか。

現在、青島刑事がどうなっているかも気になるところだが、室井のいまを知ることで、シリーズの名物キャラクターのその後に、思いを馳せてみるのもおもしろい。恩田すみれ(深津絵里)や篠原夏美(内田有紀)は、いまなにをしているのか。それを思うと“踊るレジェンド”のスピンオフ映画は、これが新たな始まりになるかもしれない。

※記事初出時、人物表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

文/金澤誠

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