アクション超大作『十一人の賊軍』撮影現場に潜入!白石和彌監督が明かす、集団抗争時代劇へのロマンと山田孝之への信頼

インタビュー

アクション超大作『十一人の賊軍』撮影現場に潜入!白石和彌監督が明かす、集団抗争時代劇へのロマンと山田孝之への信頼

『凶悪』以来11年ぶり!山田孝之を起用した白石監督の思い

【写真を見る】白石和彌監督と11年ぶりにタッグを組む山田孝之
【写真を見る】白石和彌監督と11年ぶりにタッグを組む山田孝之[c]2024「十一人の賊軍」製作委員会

続いて見学したのは、ノロが爆弾を投げ、戦闘中だった政と新政府軍が吹っ飛ぶシーン。まずは刀を持った政と新政府軍が本丸の前で戦い始めるのだが、山田とは『凶悪』以来のタッグとなる白石監督。彼を起用した理由は「映画作りをもう1回ちゃんと自分の中に落とし込むにはどうしたらいいんだろうと、ここ数年もがき続けていて。 山田さんは『凶悪』に出演してくれて、海のものとも山のものともわからない僕をある意味“映画監督”にしてくれた人でもあるから、山田さんともう1回組むことで、僕を初心に戻してくれて、 純粋に映画作りをできるんじゃないかなと思ったんですよね」と、自らが映画と向き合うためにも山田ともう一度仕事がしたかったという。

その山田が演じる政は、新発田藩士に妻を襲われ復讐をしたことで罪人になった駕籠(かご)屋の男。体に傷跡や入れ墨のメイクを施された山田演じる政が、刀をデタラメに振って敵に立ち向かっていくシーンは、再び生きて妻と会うことを願う政の気概がひしひしと伝わってきた。本作のアクションでは、CGをほとんど使っていない分、肉体的なスピードや柔軟性が求められるなか、政が爆風で吹っ飛んでからすぐに起き上がり、ノロから火の点いた爆弾を奪って新政府軍へ投げる場面はとてもスピーディに展開。山田の身体能力の高さを改めて証明したシーンだった。

また監督によると、爆弾に火を点ける花火師の息子であるノロという少年と賊軍で唯一の女性であるなつのキャラクターには「いまの時代に作る時代劇としてメッセージを込めたかった」と、特別な意味付けがなされている。また、「笠原さんのプロットでは賊軍が最後全員死んでしまう結末で、それに対して当時の京都撮影所所長だった岡田茂さんから『そんな辛気臭いもん、やめろ』と言われたそうで(笑)。それは僕も岡田さんに少し共感するところがあって、脚本の池上(純哉)さんと一緒に練り直した部分でもあります」と元のプロットから改変した部分も教えてくれた。

鞘師演じるナツが物語の鍵を握る!?
鞘師演じるナツが物語の鍵を握る!?[c]2024「十一人の賊軍」製作委員会

子を堕ろされた恨みで男の家に火をつけ、罪人となったなつを演じるのは元モーニング娘。の鞘師里保。監督は「鞘師さんの持ってるピュアな部分や、 ダンスも含めたアーティストとしての立ち姿が美しいんですよ。なつは政と少しだけバディ感が出て、2人の相性がすごくよい」と鞘師の印象を語り、「なつ役を決めるまでいろんな人に会うつもりだったんですけど、『これ、絶対鞘師さんに戻ってくるな』と思って、鞘師さんはツアーの予定も入ってたんですけど、無理言ってなんとか出てくれませんかっていう話をして、 鞘師さんに決めました。結果、この賊軍のおじさんたちの中に紛れても違和感がなく、すごく良い方に演じてもらえたと思います」と、会心のキャスティングだったことも明かしてくれた。

笠原和夫の意志を継いだからには日本映画史に残る傑作に!

東京ドーム約1個半の広さを誇る巨大オープンセット
東京ドーム約1個半の広さを誇る巨大オープンセット[c]2024「十一人の賊軍」製作委員会

見学に訪れた時点で撮影開始から約1か月。最後に監督にいまの心境を聞くと、「もう特別な緊張感しかないですよね。やっぱり笠原さんは日本映画界で特別な存在ですし、やる以上は下手なことできないですし、もう日本映画史に残る傑作にしないとダメなんだろうなと思ってやっています。新潟にシナハン(脚本執筆のための取材)で訪れた時に地元の小料理屋さんを教えてもらったんですけど、そしたらそのお店の女将さんが東映の大プロデューサーだった日下部五朗さんの娘さんで、『もしご存命だったらこの作品にもかかわってくれていたかも』みたいな話をして。いろいろなご縁があって、映画製作の後押しにつながっている」と、緊張と期待を感じながら撮影しているようだった。

キャストと談笑する白石監督
キャストと談笑する白石監督[c]2024「十一人の賊軍」製作委員会

さらにこれまでとは違う発見や手応えもあったようで、「毎シーン10人以上のキャストが出ている映画は初めてですね。そのシーンの決め台詞を誰かが言う時に、そのキャラクターのワンショットを撮ることが当然だったんですけど、今回それが正解じゃないというか、4、5人いるグループショットで台詞を言って貰ったほうが強く響くのではないということを発見したりしています。とはいえ10人いたら10人ともきちんと撮りたくなって撮るんですけど、もうワンシーン撮るだけでもクタクタで(笑)。みんな考えていることがバラバラな時もあるんですけど、しっかりかみ合った瞬間の強さはほかの映画では違う感覚があります。毎日冒険しているような感じですね」と、純粋に映画作りを楽しんでいるように見えた。


取材・文/編集部

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