『イロイロ ぬくもりの記憶』(13)のアンソニー・チェンがメガホンをとる青春ドラマ『国境ナイトクルージング』が10月18日(金)より公開される。今回、本作の本編映像の一部とアザービジュアルが解禁となった。
第76回カンヌ国際映画祭〈ある視点部門〉に出品され、ハリウッドレポーターが選ぶ〈カンヌで見るべき20本〉に選出された本作。第96回アカデミー賞国際長編映画賞では、シンガポール代表となった。舞台は、中国の東北地方にある町、延吉(えんきつ)。朝鮮半島との国境がすぐ近くにあり、漢字とハングルが混在し、両国の文化が混じりあう街並みは、国内外から多くの観光客が訪れるほど人気の場所だ。知人の結婚式に出席するため上海からこの地を訪れたハオフォンだったが、お祝いムードになじめずその場を離れ、暇つぶしで観光ツアーに参加。しかし、その途中で携帯電話をなくしてしまうことに。偶然の出会いから、冬の延吉をクルーズ(ぶらぶらと観光)することになった男女3人に起こる心の変化を、煌めく映像美と叙情的音楽で綴る青春映画。深入りせずに、この瞬間をひたすら楽しむ、それが3人の暗黙のルールだった。
今回解禁された本編映像は、上海から来たエリート会社員のハオフォン(リウ・ハオラン)、バスガイドとして観光案内をしているナナ(チョウ・ドンユイ)、叔母の食堂を手伝っている料理人のシャオ(チュー・チューシアオ)の3人が出会い、酒を交わし、酔っぱらった状態でナナの部屋になだれ込んだ後の様子を捉えている。シャオが部屋の端にあったギターを手に取り、おもむろに「Susan's Dancing Shoes」という歌を口ずさむ。すると、静かにシャオの歌に耳を傾けるナナとハオフォン。カメラは、まどろんできた彼らの姿をゆっくりと映し出す。その後、それまで明るく振舞っていたナナの目に涙が光るのだった。チューシアオ本人が得意なギター、歌唱を披露しているという点でも注目の場面だが、なんといっても歌詞が自分に向けられているように感じている切ない姿を表情だけで表現しているドンユイの見事な演技に注目してほしいシーンだ。
また、あわせて今回解禁となるアザービジュアルは全部で4種。本作で描かれる、誰もが一度は経験するであろう、葛藤を抱える若者たちの行き場のない感情を表現している。それぞれに「走らせるのさ ペダルを踏んで、さぁ」、「過去の自分なんて無意味でしかないよ」、「この<一瞬>が、永遠だと思ってた」、「生きたいように生きる、それが人生だろ?」とコピーが添えられている。
数日間、目的もなく一緒に過ごした3人にはどのような結末が待っているのだろうか?心から笑い、冒険する若者たちの姿をぜひ劇場で見届けてほしい。
文/鈴木レイヤ