「人体損壊描写は、物語のために必要」『ソウX』監督が問いかける、“肉体の本質”というテーマ

インタビュー

「人体損壊描写は、物語のために必要」『ソウX』監督が問いかける、“肉体の本質”というテーマ

デスゲーム・スリラーの大ブームを引き起こした『ソウ』(04)から20年。10作目となる「ソウ」シリーズの最新作『ソウX』(公開中)が公開となった。本作で監督を務めたケヴィン・グルタートはシリーズの1作目から編集を務め、『ソウ6』(09)、『ソウ ザ・ファイナル 3D』(10)では監督を担当。その後もシリーズ全作になんらかの形で関わりを持ってきた、いわば「ソウ」ワールドを知り尽くした人物だ。PRESS HORRORでは、そんな彼が新作に込めたものを探るためインタビューを敢行した。

ジョン役のベルとグルタート監督は、長年コラボレーションを重ねてきた
ジョン役のベルとグルタート監督は、長年コラボレーションを重ねてきた[c]2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

「ジグソウが凶行におよぶことを回避できた、そういう世界もあり得た」

本作で描かれるのは、1作目と2作目のあいだに起こった出来事で、天才殺人鬼ジグソウこと、ジョン・クレイマー(トビン・ベル)がまだ生きていたころの物語。謎の多いキャラクターだったジョンを初めて物語の中心に置き、そのドラマを語るという点で新鮮な驚きが宿る。もちろん、ジョンが仕掛ける凝りに凝ったトラップの鮮烈さは健在だ。

末期ガンに冒されたジョンは画期的な治療を求めてメキシコに飛ぶが、その治療は高額な医療費を奪う詐欺に過ぎなかった。大金も希望も奪われたジョンは、この詐欺に加担した人々を拘束し、“ゲーム”を仕掛ける…。以上が『ソウX』のざっくりとしたあらすじだ。劇中にはガンが完治したと思い込んだジョンが、トラップをデザインしたノートを破り捨てる描写がある。つまり、ジョンが本当に完治していたら2作目以降の凶行は存在しなかったかもしれないのだ。「僕もそう思います。そういう風に感じてほしくて演出したシーンです。スタッフのなかにはこのシーンを入れることに納得していない人もいたけれど、僕にとっては重要なシーンだった。残酷なゲームを回避することをできたかもしれない、そういう世界もあり得たことを想像してほしかったんです」とグルタート監督は語る。ジグソウの人間像にふれるドラマの妙の一端だ。

ジグソウことジョン・クレイマーは、ふたたび“ゲーム”をスタートする
ジグソウことジョン・クレイマーは、ふたたび“ゲーム”をスタートする[c]2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

しかし、彼の怒りによって新たな“ゲーム”は開始される。人体の損壊を免れない恐ろしいトラップは、今回も大きな見どころだ。毎回よく考えつくものだと感心させられるし、拷問の専門家がアドバイザーになっているのでは?とまで思ってしまう。それについて尋ねると「メキシコの撮影に参加したスタッフにも、“トラップを考える専門家がいるのか?”と訊かれたけれど、そんなことはありませんよ。毎回スタッフ間で話し合いをしてアイデアを練るんです」との答えが。「トラップの創作にはいくつかルールがある。まず、いままでの繰り返しであってはならない。また、これはジグソウのゲームの特徴だけれど、常に生き延びる可能性があるもの。そしてゲームを強いられるキャラクターの短所を反映したものであることです」。

本作のなかだけでもさまざまなトラップが用意されており、宙吊り状態で放射線を浴びせられるような、大掛かりで手の込んだものもある。「トラップを考えついても、実際に撮れるのか?という問題はある。そういう意味で、『ソウ』シリーズの撮影はテクニカルな側面が大きく、撮影や美術、特殊メイクなどのスタッフと密にコラボレートしていかないといけない。トラップの場面はその点でもっとも時間も手間もかかるので、撮影の後半に撮りました」とのこと。観客を驚嘆させるバイオレントな見せ場の裏側には、作り手の苦心と工夫が秘められているのだ。

【写真を見る】閲覧注意…新たな死のゲームは、目玉を吸いだす!?
【写真を見る】閲覧注意…新たな死のゲームは、目玉を吸いだす!?[c]2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.


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