古代ローマ帝国を舞台に、苛烈を極める皇帝の後継者争いに巻き込まれた男の壮絶な復讐を描き、第73回アカデミー賞で作品賞など5部門に輝いた『グラディエーター』(00)。その24年ぶりの続編となる『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が、11月15日(金)より公開される。
前作に引き続きメガホンをとるリドリー・スコット監督といえば、『エイリアン』(79)や『ブレードランナー』(82)など映画史に燦然と輝く傑作を世に送りだしてきた、言わずと知れた現代映画界の“レジェンド”。これまで数多の作品で唯一無二の世界観を創りあげてきたスコット監督だが、なかでも実在の人物や有名事件をテーマにした史劇映画との相性は抜群。そこで本稿では、圧倒的スケールと映像美の“リドリー節”が炸裂した至高の史劇映画を紹介していこう。
エルサレムに刻まれる英雄譚で“真実の平和”を探る!
オーランド・ブルームとリーアム・ニーソンが共演した超大作『キングダム・オブ・ヘブン』(05)の舞台は12世紀、十字軍が支配するエルサレム王国。若き鍛冶屋のバリアン(ブルーム)は、故郷での悲劇を経験し、自らの出自を知るために聖地へと旅に出る。信仰と欲望が渦巻く混沌のなか、シビラ姫(エヴァ・グリーン)やエルサレムの王ボードワン4世(エドワード・ノートン)と出会ったバリアンは、次第に大きな運命に巻き込まれていくことに。
史実に基づきつつも、スコット監督特有の視点から中世の時代精神を描き出した本作。『グラディエーター』でアカデミー賞撮影賞にノミネートされたジョン・マティソンが撮影監督を務め、広大な砂漠や要塞都市エルサレムの描写など物語の背景に真実味と迫力を与える圧巻の映像美は見どころのひとつ。ディテールまでこだわり抜かれた美しい衣装も相まって、中世ヨーロッパと中東世界に没入してしまうこと間違いなし。劇場公開版よりも約50分長いディレクターズ・カット版で観れば、さらにそのスケールを堪能できることだろう。
歴史家の間で議論が絶えない事件を、3つの視点で描き切る!
一つの事件を当事者3名それぞれの視点で描くという、黒澤明監督の名作『羅生門』(50)を彷彿とさせる構成が大きな話題を呼んだ『最後の決闘裁判』(21)。14世紀のフランスで起き、600年以上経った現在でも多くの歴史家たちの間で議論されている実話をベースに、スコット監督の解釈を交えながら綴られた重厚な人間ドラマだ。
ノルマンディーの騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)は、従騎士で夫の親友でもあるジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)に強姦されたと訴える。カルージュはル・グリを重罪犯として処刑することを望むが、ル・グリは無罪を主張。さらに領主のピエール伯(ベン・アフレック)がル・グリに味方をしていたため、彼を裁判で追い込むことは不可能と判断したカルージュは、決闘での決着=決闘裁判に臨むことに。現代社会の問題にもダイレクトに通じるテーマ性は、従来の史劇映画とは一線を画している。