「留学を経て、自分にもちゃんと選択肢があると知った」
濃密な撮影の日々から約1年。本作は第37回東京国際映画祭のオープニング作品としてワールドプレミアを迎えたのち、ようやく公開の時を迎える。「この物語のなかで生きたという実感は確かにあるので、やっと多くの人に届けられることを感慨深く思っています」と現在の心境を明かす鞘師だが、一方で「いまだに自分が本当にこれだけのスケールの映画に出ているのかと信じられない部分もあります」とも。
そんな鞘師にはひとつだけ心残りがあるという。それは時代劇・活劇の花形ともいえる殺陣をはじめとしたアクションシーンだ。劇中には派手なアクションシーンが数多くあるものの、サポート役に回っていたなつは戦闘には参加しておらず、鞘師自身アクションに挑む機会には恵まれなかったという。「(仲野)太賀さんたちが殺陣をやっているのを、羨ましそうな目で見学していました。現場では『アクションやりたかったー』ってずっと言い続けていましたね(笑)」
そうしたこともあって、鞘師が女優として次にやってみたいことは「アクション映画に挑戦すること」だという。「最近、別の作品でアクション指導の方とお話しする機会があって、殺陣や、銃を使うアクションをやりたいから教えてほしいと頼み込んでいます!」とアピールする鞘師。「でも銃を使う映画は日本では限られていますよね…。そういう作品に出られたらうれしいんですが、例えば広島ヤクザ…。『孤狼の血』の3とか…(笑)」。
12歳でモーニング娘。の一員となった鞘師も現在26歳。「年齢で成長したのか、それとも留学で成長したのかはまだわからないですが、自分にもちゃんと選択肢があるんだと知ることができました」と、最後にあらためて留学から現在までの歳月を振り返る。「モーニング娘。の時には求めてもらえることで目標が定まっていた。でも同時に、大人になった時に選べなくなることや、選んじゃいけないという恐怖感もありました。でも外に出てみたら、みんなやりたいことを選んでいる。それに気付けただけで、大きな学びになったんです」。
そして「私がハロー!プロジェクトにいた時代には出せなかったような“個”の強さを持った後輩たちが頑張っているのを見ると、とてもすてきに感じるし、羨ましくもあります。私も“こうしなきゃいけない”というイメージをどんどん崩して、いろんなことに挑戦していきたいですね」と、さらなる進化を誓った。
取材・文/久保田 和馬