戦場カメラマン・渡部陽一のルーツはチェ・ゲバラだった!?

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戦場カメラマン・渡部陽一のルーツはチェ・ゲバラだった!?

オダギリジョーが主演を務める日本・キューバ合作映画『エルネスト』の公開直前イベントが9月26日、東京・日本橋のTOHOシネマズ日本橋で行われ、戦場カメラマンの渡部陽一とタレントの吉木りさがゲストとして登壇。「楽しみにしておりました」と、おなじみのスローで丁寧な口調で挨拶した渡部は「様々な国の言葉の通じない地域で、知っている単語をゆっくり喋っていたら、ゆっくりさに拍車がかかりました」と、独特な喋り方の誕生秘話を明かし、会場は穏やかなムードに包まれた。

『エルネスト』は、今年で没後50年を迎えるキューバ革命の英雄、エルネスト・チェ・ゲバラとともに闘った日系人、フレディ前村ウルタードの生涯を描いた歴史ドラマ。医師を志す青年・フレディが、憧れのチェ・ゲバラと出会い、母国ボリビアで起きた軍事クーデターに参加することを決意。革命戦士のひとりとして“エルネスト・メディコ”という戦士名を授けられた彼は、激しい戦いに身を投じていく。

作品を鑑賞した渡部は「チェ・ゲバラというと、そのスタイルが前面に際立っているイメージがあると思います。でも、この作品の中では、チェ・ゲバラが大切にしていた“言葉の力”への思いがはっきりと伝わっていました」と、本作が描く、チェ・ゲバラという存在のヒューマニズムに心を打たれた様子。

一方で、吉木も「そこまで(キューバについての)知識が深くなかったけれど、ドキュメンタリーのようにリアルで丁寧に描かれているこの映画を観て、主人公たちの生き様に感銘を受けた」と、徹底的な役作りで本作に挑んだオダギリジョーを絶賛。歴史知識が浅くても共感できる作品だと語った。

劇中でオダギリが演じるフレディが、チェ・ゲバラから強い影響を受けたように、渡部もまたチェ・ゲバラから影響を受けたことを明かした。「中東の地域ではヒゲを伸ばすことが成人男性の身だしなみで、駆け出しカメラマンだった20代の頃に、無意識的にゲバラのヒゲの生やし方に惹きつけられました」と、まずは形からチェ・ゲバラに近づいた渡部。

つづけて彼は、写真家としての一面もあるチェ・ゲバラについて「一撮入魂。自分が向き合った瞬間にすべての思いを載せている」と表現。そして「被写体に語りかけたり、生活を共にしていくことで、一瞬のものではなく、感情を自分で感じながら撮っている。彼の写真家としての生き様からも、学ぶことがいっぱいあったと感じている」と、いつもよりも少しだけ早口で熱弁した。

フレディやチェ・ゲバラのような信念を持っているかと問われた渡部は「世界中から紛争や戦争がなくなり、戦場カメラマンがいらなくなったときに、学校カメラマンになることが夢です」と穏やかな表情で語った。「出会ってきた子供たちの表情を、学校カメラマンとして撮っていきたいと、いつも思っています」と、現在の緊迫する世界情勢を前に、平和への思いを馳せた。

吉木もまた「タレントとして、あまり知られていないことを伝えていける人になりたい」と自身の信念を掲げ「チェ・ゲバラやフレディという人たちがいたことを、この作品を通じてもっと若い人たちに伝えていきたい」と述べた。

50年前に歴史を築き上げた男たちの生き様は、きっと現代を生きる私たちにも、一歩踏み出すきっかけを与えてくれることだろう。チェ・ゲバラという革命家が目指した信念を、本作から感じ取ってほしい。

『エルネスト』は10月6日(金)より、全国ロードショー。 【取材•文/久保田和馬】

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