「監督のおもしろい演出がありました」
――6人の交流会を兼ねた飲み会のシーンでも、人見知りで、他人と話すのがあまり得意ではないと言っていた森久保の素の顔が見え隠れします。
「『内定、取れるよね、俺たち』って森久保が初めて自分から言葉を発するシーンですね。あそこは、森久保の素の部分が、お酒を飲んだことで少し出ている、みたいなテイストで臨んだような気がします」
――あのシーンでは、九賀(佐野)に向かって「前に貸したマッキンゼーの本、返品頼むよ」と言う森久保のセリフに攻撃的なものも感じました。
「攻撃的な意図は僕の中にはあまりなかったけれど、森久保って、攻撃的なことを意図せずに言っちゃうタイプだとは思っていました。プライドも高いだろうし、ちゃんとしていない奴は許せない側の人間だと思うから、悪気はなくても、ついついキツい言い方になるんだろうな、とイメージしていました」
――そんなプライドの高い森久保が告発文によって糾弾され、孤立してしまいます。お芝居とはいえ、つらかったんじゃないでしょうか?
「あそこも監督のおもしろい演出がありました。監督が現場で『ひとりぼっちの森久保に膝を抱えて座らせたらおもしろいかも』と言ったので、『やり過ぎじゃない?』『コメディに寄っちゃわないですか?』といったことをみんなでディスカッションしたんですけど、結局はやることになって。みんなが『俺たちは仲間じゃないか!』というやりとりを、森久保はもういないものとして語り合っていたり、彼らの後ろでひとり悲しそうにしている森久保のワンショットが監督の狙い通りになっていて、ちょっとおもしろかったですね」
――ほかにも印象に残っていることはありますか?
「僕が袴田に突き飛ばされるところですね。テストではそんな感じでもなかったのに、本番になったら袴田役の西垣くんが全力でぶつかってきたから、ペットボトルの水はこぼれるし、椅子から転げ落ちてしまって。でも、そのおかげでダイナミックな動きのある、見応えのある画になったのでよかったです」
――最終ディスカッションの自分の見せ場のシーンの撮影前日は緊張して寝られなかった人もいたみたいですけど、倉さんはどうでした?
「僕は撮影の疲れもあって、けっこうぐっすり寝れました」
――自分がみんなから責められるシーンを撮る前日も?
「はい。セットに入った時は空気がちょっとピリッとしていたけれど、僕は緊張するというより、“どうすればいいかわからないな”となってしまうタイプなので。監督に実際『どうしたらいいかわからないですよ。いや、やってみますけどね』と言ってから撮影することもありました」