『矢野くんの普通の日々』映画単独初主演の八木勇征が語る”作品の顔”になることへの想い「みんながいるから、僕は座長にしてもらえる」

インタビュー

『矢野くんの普通の日々』映画単独初主演の八木勇征が語る”作品の顔”になることへの想い「みんながいるから、僕は座長にしてもらえる」

「数字を出すだけじゃなく、中身も伴った人間になりたい」

 「テレビドラマと映画の演技は”別物”」
「テレビドラマと映画の演技は”別物”」撮影/増永彩子

映画出演本数も順調に増え、単独主演の映画は本作が初。テレビドラマでの演技とは「別物だと思っている」と言う。「テレビドラマには放送時間という尺がある。そこにおさめるために、ここはもうちょっと間を空けたいなと思うところでも、早いテンポを求められることがあって。より“素材”であることが求められるのがテレビドラマの演技」と冷静に分析する。一方、映画は「お芝居ファースト。間もたっぷり使えるおもしろさがあるなと思いました」と手応えを掴んだ。「もちろんこれはどっちが良くてどっちが悪いということではなくて、テレビドラマにはテレビドラマの、映画には映画の難しさとおもしろさがある。そのどちらも極めていきたい」と意欲を見せる。

 いつも生傷が絶えない矢野くん(八木勇征)が心配でたまらない吉田さん(池端杏慈)
いつも生傷が絶えない矢野くん(八木勇征)が心配でたまらない吉田さん(池端杏慈)[c]2024 映画「矢野くんの普通の日々」製作委員会 [c]田村結衣/講談社

初の単独主演という本作について「座長としての責任感を持ちながら、参加してくださるキャスト、スタッフのみなさんから楽しかったと言ってもらえる現場にしたい」と熱い意気込みで臨んだ。が、実際に座長を務め上げて感じたのは「みんながいるから、僕は座長にしてもらえる。座長がみんなに支えられているんだということを初めて感じました」という感謝の想いだ。「自分が助演としてドラマに出させていただいた時、クランクアップの挨拶で主演の方が『みなさんのおかげです。ありがとうございました』とおっしゃっていた意味がようやくわかったというか。僕もクランクアップの時に『みなさんのおかげで座長としてこの作品を終えることができました。本当にありがとうございます』って自然と同じことを言っていたんです。今回、この作品で座長をできたことが、僕の一つの財産になりました」。

以前共演した三浦翔平とエンタメ業界について語ることも多いという
以前共演した三浦翔平とエンタメ業界について語ることも多いという撮影/増永彩子

エンタテインメントの中心地にいる身として、トレンドの変化にも敏感だ。最近観たコンテンツの中では「『地面師たち』がおもしろかった!あとは『極悪女王』も」と隆盛を極める配信作品から大きな刺激を得ている。「配信でこれだけおもしろい作品が出てくると、地上波のドラマはよりアイデア勝負になってくると感じます。そんな話を(三浦)翔平さんとよくしていて。昔から翔平さんとはずっとそういう話をしていたんです。でも当時は実感があんまりなかったのですが、いまは翔平さんの言ってることもわかるようになってきました。そこに自分の成長を感じるし、演者としても頑張っていかないといけないなって気が引き締まります」。

吉田さんと出会い変わっていく矢野くんを、八木勇征が繊細な演技で魅せる
吉田さんと出会い変わっていく矢野くんを、八木勇征が繊細な演技で魅せる[c]2024 映画「矢野くんの普通の日々」製作委員会 [c]田村結衣/講談社

本作に続き、来年には映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』(2025年2月21日公開)でも主演を務める。作品の顔となり、興行の責任を背負う場面も増えた。“八木勇征”というブランドに多方面から期待が寄せられていることへ「プレッシャーを感じないと言ったら嘘になる」と胸中をあらわにする。だが、その表情に不安の色はない。なぜなら、八木は知っているからだ。ものづくりには、数字以上に大切なものがあることを。


「この作品でも撮影現場に原作者の田村(結衣)先生が見学に来てくださって、僕たちのお芝居を見てすごく喜んでくださったんですよ。僕はそれがすごくうれしかったです。田村先生にとっては、どのキャラクターも自分の子どものようなもの。その愛情をちゃんと理解したうえで、真摯に役と向き合い、役を生きることができれば、結果につながるような作品になると思いました。もちろん数字を出すにはそれだけじゃ足りないこともわかっています。でも、僕たち自身がそこを忘れなければ、きっといい方向に進んでいくんじゃないかと思います」。

「数字がすべてではない」と自然体な姿が印象的だった八木勇征
「数字がすべてではない」と自然体な姿が印象的だった八木勇征撮影/増永彩子

1st写真集は、オリコン年間ランキング男性ソロ写真集部門で1位を獲得。ViVi国宝級イケメンランキングでは2度の首位に輝き、殿堂入りを達成した。輝かしい実績を残しながらも、本人は「数字がすべてではない」とあくまで自然体。だが、決して無欲というわけでもない。「もちろんなにかで1位になることも大事だと思いますし、上をねらっていきたいですが、ただ数字を出すだけじゃなく、中身も伴った人間になる。数字と実力の両方で一番になることが理想です」。頂は、遥か先に。その座に足る人間となるために、八木勇征は絶えず己を磨き続ける。

取材・文/横川良明

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