『正体』横浜流星×森本慎太郎が対談。共演シーンでは「お互い言葉では言い表せないような感覚が湧き上がった」
「『横浜流星、マジハンパねぇ!』とずっと思ってました」(森本)
――森本さんは、横浜さんの現場での佇まいに触れるコメントも出されていましたが、実際に共演して肌で感じた横浜さんの印象は?
森本「なんでもできる人というイメージがすごくあったのですが、実際にその通りでした。今回は5つの顔を演じ分けているけれど、一人の人間がやっていることだから、どこか似てしまうところがあると思うんです。でも、ちゃんと違う5つの顔になっていて『ガチすげぇ!』と思いました」
横浜「ありがとう(笑)」
森本「僕は和也として、ベンゾーとしての鏑木と、裁判の時に会った鏑木しか知らないけれど、本編を見るとほかにも3つの顔がある。それを観た時に『俺、この顔知らない』ってなるんです」
横浜「アハハハ、本当に?」
森本「うん!だから本当にすごいなって。横にいるのに、こんなこと言うのもなんだけど(笑)、なんか横浜流星、やっぱやべえなと思いました」
――すごいとは思っていたけれど、という感じですか?
森本「本当にそう!『やっぱすごいわ』というより、『なんかマジ、ハンパねぇ!』みたいな感じです」
――横浜さん、かなり照れていらっしゃいますが、森本さんとのお芝居はいかがでしたか?
横浜「まっすぐなんですよね、なんか」
――ここまでのお話でも、横浜さんへの印象なども含めてまっすぐさを感じますよね。
横浜「そうなんです。和也という人間が魅力的に見えるのは、森本くんの人柄があってこそだと思っています」
森本「ありがとうございます、恐縮です(笑)」
横浜「本当にまっすぐ。藤井監督が森本くんのことをナイスガイって言ってたけれど、本当にその通り。妥協しないという根性や芯を持っているのはすごく感じたし、初めての藤井組で何度も『もう一回』と言われながら必死に食らいついていく姿を見て、すごく応援したい気持ちになったし、演技を見て『おっ、いいね!』と思う瞬間もたくさんあって。鏑木を演じながらも僕自身の心もそこにはあるので、和也と面会室で再会したシーンは一番グッときたんだよね。『うわっ』みたいな、言葉では言い表せないような感覚が湧き上がってきた感じがあって」
――やっと会えたという感じですよね。
横浜「そう!やっと会えたなって。鏑木は逃亡中にたくさんの人からいろいろなものを与えてもらったけれど、その中で一番最初に出会ったのが和也。和也の存在はやっぱり大きかったし、先に出会ったから、その後の会わない時間も長かった。だからこそ、会えた時になにか込み上げてくるものがあったのだと思います」
――横浜さんのお話にもありましたが、藤井監督の「もう一回」を経験された感想は?
森本「いや、もう必死ですよ。『頑張って食らいついていた』と言ってくれたけれど、食らいつけていたのかもわからないです」
横浜「しっかり食らいついてたよ!」
森本「マジで必死だったし、いまだから正直に言っちゃうけど、ずっと不安でしたもん」
横浜「本当に?」
森本「うん。毎日不安だったし、怖かったですね。でも監督は僕のそんな気持ちもうまく使いながらいろいろと指導してくれていた気がします。これが藤井組なんだ、これが藤井さんなんだなって。いい経験をしました」
「森本くんの、パッと周りを明るくさせるような笑顔がすごく魅力的!」(横浜)
――現場ではベンゾーと和也の関係性を保つため、横浜さんはあえて距離をとっていたと伺っています。森本さんはその距離感をどのように感じていましたか?
森本「僕の体感言ってもいいですか?」
横浜「うん、全然いいよ。聞きたい」
森本「流星くん、ベンゾーの時、会話が“文”で返ってこなかった…」
横浜「あぁ、そっか。確かにそうだ」
森本「なんか喋っても『うん、そうだね』とか『全然、大丈夫』とか短い一文で終わる感じ。無口な役柄のベンゾーだから会話もしないし、ボソボソと喋る。和也はベンゾーなら友達になれるって思ってるし、ベンゾーも和也だったら大丈夫かも…という思いもあるけれど、逃げなきゃいけないからそんなに心を開けない。休憩中の流星くんとの会話からは、なんかその『近づけそうで近づけない』を感じていて。まともな会話はしてないという思い出があります(笑)」
横浜「ある程度の距離感は持っておく必要があるかなと思って。役に影響しちゃうこともあるから、距離感は意識していたんだよね。『もう一回!』の時は遠くで見守っている感じだったし、だからこそ面会のシーンでは余計に込み上げるものがあったんじゃないかな」
森本「面会で初めてちゃんと喋ったっていう感じだよね」
横浜「そうそう。もっと言えば、面会シーンの撮影後に、ちゃんと話した感じかも」
森本「そうだった!クランクイン前に一緒にご飯を食べに行ってある程度会話はしているけれど、流星くんは人見知りであまり目が合わなかったという印象で。僕の親友が流星くんと仲良しなので、優しい人だというのもわかっていたけれど、撮影が始まったら一気に雰囲気が変わるから、どんな人なのかなって気持ちはありました」
横浜「そっか…」
森本「ベンゾーになった途端、掴めそうで掴めないみたいになって、本当に会話もなくなる。たまに見える鏑木の芯のようなものを感じながらも、あまりキャッチボールできない感じはあったなぁ」
――横浜さんについてどこか掴めない存在とコメントしていましたが、撮影も終わり、面会のシーンも終えて、さらに本人同士できちんと会話を交わしたいま、掴めたことはありますか?
森本「笑顔がかわいいですよね!」
――食い気味に(笑)。映画ではこの笑顔は見られなかったですもんね。
森本「そうなんです。ベンゾーだとヒゲも生えてるし、メガネもかけていて髪もボサボサで。表情が本当にわからないから、彼の表情が見えた時の和也の『お前、そんな顔してたのかよ』という劇中のセリフは、本当にその通りだなって。そこはちょっと自分自身と重なる部分もあったので、撮影が終わったあとに普通に喋ってる時がすごく楽しくて!」
横浜(ニッコリ)
――この笑顔を見てホッとしたんですね。
森本「ホッとしたし、かわいいって思いました」
――横浜さんは森本さんが見せる顔、表情などで好きなところはありますか?
横浜「森本くんの絶妙な笑顔があるんですけれど」
森本(表情を作って見せる)
横浜「それじゃないかな(笑)」
――「もう一回!」ですね(笑)
森本「やり直す!これ?」
横浜「そうそう、それ。すごくいいよね。映画だと和也の『お前、そんな顔してたのかよ』のあとの顔。あの表情がすごく好き。パッと周りを明るくさせるような、あの笑顔は僕にはないところなので、すごく魅力的だなと思って見ちゃいます」
――二人ともお互いの笑顔が好き。
森本「本当だ!」
横浜「笑顔いいよね。笑顔が好きです」
取材・文/タナカシノブ