吉沢亮、中学生役に苦戦も「第16回TAMA映画賞」最優秀男優賞を獲得!藤竜也はジャック・ニコルソンとの交流秘話を明かし、会場を沸かす
映画ファンの祭典「第34回映画祭 TAMA CINEMA FORUM」にて国内映画賞のトップバッターとして注目を集める「第16回TAMA映画賞」の授賞式が11月30日にパルテノン多摩で開催され、本年度最も心に残った男優を表彰する最優秀男優賞に輝いた藤竜也、吉沢亮が登壇した。
吉沢は今年、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』、『キングダム 大将軍の帰還』、『かぞく』に出演。耳のきこえない両親のもとで育った主人公のの心の軌跡を描いた『ぼくが生きてる、ふたつの世界』において「さまざまな感情が込められた手話は親子の日常をとても自然に映し出して、観客を物語のなかへと引き込んだ」と評価され、最優秀男優賞の受賞を果たした。
「6年くらい前に新人賞(最優秀新進男優賞)をいただいた。僕にとって初めての映画賞で特別な思い出がある」と同映画祭への帰還を喜んだ吉沢は、「また30歳の年に賞をいただけたこといことで、すごく縁を感じています。本当にありがとうございます」と感謝を込めた。『ぼくが生きてる、ふたつの世界』では中学生から青年へと成長していく姿を演じており、「30歳になる男が中学生をやるので、大変でした」と苦笑い。「監督からも『声を高くしてくれ』と。『いまのちょっとおじさんかも』と言われながら、全力でやらせてもらいました」と話して会場を笑わせていた。
同作は特別賞も受賞し、呉美保監督もステージにあがった。呉監督はもともと吉沢の芝居のファンだったという。「吉沢さんのお芝居は多面的で、『もっとあるだろう』『もっと見たい』と観客として思っていた。この作品で、新しい吉沢亮が見られるんじゃないかと想像した」とプロット段階から吉沢にオファーしたとのこと。吉沢も呉監督のファンだったと相思相愛の想いを吐露しながら、「すごく光栄」と喜びをにじませていた。「監督は息づいている人が使う手話を目指していて、僕もそこを目指した。ハードルは高かったですが、手話演出のお二人と監督と、2か月くらいみっちりやらせていただいた」と充実感を握りしめながら、「いままでと変わらず、自分が好きな作品、愛せるような役をこれからもやっていきたいなと思っています。今後とも頑張ります」と意気込んで、大きな拍手を浴びていた。
認知症によって別人のようになった父の陽二と、その息子、卓(森山未來)の姿を描くサスペンスヒューマンドラマ『大いなる不在』で陽二を演じた藤は、「虚構へと溶けゆくなかで愛する者との別離を予感させる“瀕死の王”の姿を、観る者の脳裏に焼き付けた」と同映画祭から受賞理由を紹介された。
トロフィーを手にした藤は「バリバリのトップランナーたちに混ぜていただいて。私はまだ現役でいるんだと、いまちょっとうれしいです」と受賞者たちに目を向けながら、にっこり。「63年この仕事をやっていまして。いい加減くたびれてきましてね。足も痛いし」と苦笑いを見せながら、「今日は後ろから肩を叩かれて振り返ったら、TAMA映画さんの人で。私に冷たい、おいしい水を一杯出していただいたような気がして。生き返りました。ありがとう」と粋な例えを繰り出しながら、感謝を口にした。
第71回サン・セバスチャン国際映画祭コンペティション部門では、日本人初となる最優秀俳優賞を。ニューヨーク映画祭では生涯功労賞を送られるなど、海外でも高い評価を受けている。心境を問われた藤は「一本一本、やってきた。後ろを振り返るのが、嫌いでしてね。終わると、台本を割いて捨てるのが一番の楽しみ」とお茶目な表情をのぞかせつつ、「いい監督、作品に恵まれて出させていただいて。それが海外の皆さんにも観ていただいているのかなと思います。とてもありがたいですね」と目尻を下げた。
またニューヨークの思い出に話が及ぶと、「50年前に大島渚さんの『愛のコリーダ』がニューヨークに招待されまして私も行ったんですが、検閲で『上映しちゃダメだ』ということになってしまって。でもいいこともありました。別の映画に差し替えて上映することになったんです。すると、見たことがあるような人がどんどん近づいてきて。ジャック・ニコルソンさんだったんです」と貴重なエピソードを披露し、「ジャック・ニコルソンじゃん。どうしちゃったんだろうと思っていたら、私の目を見てバーッと挨拶をして。『いい映画だった』みたいなことを言ってもらったと、勝手に思っています。私は硬直しちゃいました」と続けると会場もドッと大笑いだ。
『大いなる不在』の脚本を読んだ際には、「おもしろくなかった」とぶっちゃける場面もあった。「でも出来上がった映画を観たら、年甲斐もなく興奮した。根こそぎ魂を持っていかれた。私は何年経っても、台本を読む力がないんだなと思いました」と肩を落としながら、監督の手腕に惚れ惚れ。「(演じた)陽二さんに完全にコントロールされて、あっという間に撮影が終わって。毎日体を運ぶだけで、あとは陽二さんが勝手にやってくれたので非常に楽でした」とまさに役を生きた日々だった様子の藤だが、会場は藤によるユーモアあふれるトークとチャーミングな素顔に魅了されっぱなし。観客から終始、楽しそうな笑い声が上がるなか、藤は「いつも映画を応援してくださって、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と心を込めて大きな拍手を浴びていた。