12月13日から12月15日までの全国映画動員ランキングが発表。シリーズ累計発行部数1000万部を突破し、テレビアニメ化も大好評を博した同名コミックを、永野芽郁と佐藤健のダブル主演で実写映画化した『はたらく細胞』(公開中)が、抜群の好成績を収めて初登場No. 1を獲得した。
『はたらく細胞』が、2024年の実写日本映画第3位の大ヒットスタート!
全国365劇場で、IMAXや4DXを含む494スクリーンの大規模で公開を迎えた『はたらく細胞』。初日から3日間の観客動員は61万1000人、興行収入は8億4400万円と、今年公開された実写日本映画としては『キングダム 大将軍の帰還』(公開中)と『ラストマイル』(公開中)に次いで第3位の初動成績。配給元のワーナー・ブラザース映画は、最終興収50億円を視野に入れているようだ。
本作でメガホンをとったのは「テルマエ・ロマエ」シリーズや「翔んで埼玉」シリーズなどで知られる武内英樹監督。前者は2本で興収100億円超、後者も2本で60億円超という屈指のヒットメイカーであり、今回の『はたらく細胞』はそれら4作を上回る初動成績を記録している(「テルマエ〜」は土曜日公開だったため、直接比較することはできないのだが)。この4作と今作からも分かる通り、コミック原作で、かつ特殊な世界観を舞台に大勢の登場人物が入り乱れるタイプのコメディを得意としている作り手といえるだろう。
この10年ほどの日本のコメディ映画での成功作を振り返ってみると、三谷幸喜の監督作品や古沢良太の脚本作品はオリジナルにこだわることで“作家性”というブランディングを重視し、福田雄一作品はいわゆる“福田組”と呼ばれるキャストの魅力を引き出すことに徹している印象が強い。対して武内作品の場合は、とにかく世界観重視。コメディと一口に括っても、それぞれの作り手の得意スタイルが棲み分けできていることが各々の成功の決め手となっていることはまちがいなく、それが日本のコメディジャンルを支えてくれていると考えることができる。
今回の『はたらく細胞』では原作コミックで描かれた“人体のなか”で擬人化された細胞たちの働きぶりを忠実に再現し、スピンオフ漫画「はたらく細胞 BLACK」をもとにシリーズで初めて人間側の物語を展開。このように特殊な世界観の内側と現実世界に即した外側を併行して描くスタイルは、先述の武内作品を代表する2シリーズでも取り入れられた手法であり、観客が特殊な世界観にスムーズに入るための的確なワンクッションとなり、いくつかのストーリーを一本の映画にまとめ上げる役割も果たしてくれる。
こうした娯楽映画に必要不可欠な“観やすさ”を担保し、かつ原作が持ち合わせている「身近だけど見ることができない人体の仕組みを学ぶ機会」を守り、キャスト陣の魅力もしっかりと引き立てるという3本の軸が揃った本作。永野はこれが主演映画として初のNo. 1獲得であり、佐藤は代表作「るろうに剣心」のアクション監督と再タッグを組んで大立ち回りを披露。「半分、青い。」以来となる2人のコンビネーションは両者のファンにはたまらないものだ。年末年始に年齢層を問わず観られる実写日本映画の代表として、さらなる旋風を巻き起こす可能性は充分だろう。