ピーター・ジャクソン版「ロード・オブ・ザ・リング」との関係はこんなところに!最新作『ローハンの戦い』トリビアまとめ
J・R・R・トールキンの名作をピーター・ジャクソンが映画化した「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ最新作の長編アニメーション映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(公開中)。舞台はトリロジーから遡ることおよそ200年前の中つ国の人間の王国、ローハン。主人公は、シリーズ第2作『二つの塔』(02)に登場する同国のセオデン王のセリフ「槌手王ヘルムの角笛が渓谷に響き渡る!」で知られるヘルム王と、彼の末娘ヘラだ。
ベースになっているのは、トールキンが「指輪物語」で書ききれなかったエピソードなどをまとめた「指輪物語 追補編」に登場する槌手王ヘルムの物語。腕をひと振りするだけで敵を殺すことができたといわれるヘルム王が、末娘の姫君を息子であるウルフの嫁に欲しいと申し出た褐色人(ダンレンディング)の王フレカの命を最強の槌手で奪い、それがきっかけで戦争が勃発したというエピソードだ。これに様々な要素やキャラクターを加えて創造したのが今回のストーリー。それはつまり、多くのシーンで「ロード・オブ・ザ・リング」を継承しているということになる。
そんなこだわりを詰め込んだのは、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで共同脚本を務め、本作では原案を担当したフィリッパ・ボウエンと、この大作を任され、シリーズの大ファンを自認する監督の神山健治。そこで本稿では、ファンの心をくすぐる『ローハンの戦い』のトリビアの数々を紹介する。
※本記事は、映画のネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)に該当する要素を含みます。未見の方はご注意ください。
『二つの塔』とオープニングから重なる…美術からキャラクターまで細部に注目!
「ロード・オブ・ザ・リング」ファンは冒頭から息を吞むかもしれない。ハワード・ショアによるシリーズのテーマ曲が(ちょっぴり)流れるなか、俯瞰から雪が残る岩肌をカメラが舐めて行くのだが、それがもう『二つの塔』のオープニングと重なり合う!しかも「これってもしかして実写の映像?」といいたくなるようなリアリティ!トリロジーでは随所で重要な役割を果たした大鷲がスクリーンに入って、やっとアニメーションであることがわかるというほど。ここでファンは心を掴まれること必至だ。
今回の舞台と物語は中つ国の人間の国、ローハン王国が中心なので登場人物もほぼ人間だけ。『二つの塔』にでてきた丘の上のローハン国王の居城、メドゥセルドが、その外見も内部も映画と同じデザインで登場する。玉座の後ろにタペストリーが飾られているのも同じ。そこで威光を放つのは時のローハン王、槌手王と呼ばれたヘルム。彼の彫像は『二つの塔』の角笛城に飾られているものの、ひとりのキャラクターとして映像化されたのは本作が初めてになる。彼の2人の息子、ハレス(Haleth)とハマ(Háma)は「追補編」に登場するが、末娘の姫君は存在は記されているものの名前はない。今回、ボウエンのアイデアで、父親ヘルム(Helm)と2人の王子の頭文字がHなので、それに準じてヘラ(Héra)と命名された。
今回のメインの主人公はこのヘラで、彼女のキャラクターは『二つの塔』に登場したセオデン王の姪、エオウィンと重なる部分が多い。王に愛されているところや、実は男勝りで剣に長けているものの、女性ゆえにそれを認めてもらえない部分、最後は剣を持って闘うことになるなどがあげられる。そういうことも意識してか、今回のナレーションを担当しているのは「ロード・オブ・ザ・リング」でエオウィンを演じたミランダ・オットー。エオウィンが200年前の戦いを語っているというスタイルになっている。そしてヘラの侍女である最強のおばさん、オルウィン。意外なほどの大活躍を見せる彼女は“盾の乙女”という設定。エオウィンは“ローハンの盾持つ乙女”と呼ばれていたことを思い出してほしい。
またヘラの下の兄、音楽好きのハマが口にする「私たちの話が歌として残るだろうか」というセリフは、『二つの塔』でフロドの従者サムが口にする「オレたちのことが歌や物語にならないでしょうか」を思い出させてくれる。本作でそのサムに似ているのがヘルム王の従者リーフ。この男子、ついサムを連想してしまうのはぽっちゃりした体型とその忠実さ。そして、ちゃんと頼りになるからだ。