メル・ギブソン&マーク・ウォルバーグのタッグ作『フライト・リスク』が北米初登場V!オスカー候補作からは『セプテンバー5』が存在感
先週末(1月24日から1月26日)の北米興収ランキングは、上位10作品の合計興収が5300万ドルで全体の総興収が6443万ドルと、前者は昨年2月以来、後者は昨年4月以来となる低い数字をマークすることに。連休の翌週ということや、スーパーボウルの前哨戦が日曜日に行われたことなどいくつかの要因が考えられるが、めぼしいビッグタイトルがなかったというのが一番大きな理由であろう。
そうしたなかで初登場1位に輝いたのは、メル・ギブソンが『ハクソー・リッジ』(16)以来9年ぶりにメガホンをとった『フライト・リスク』(3月7日日本公開)。マーク・ウォルバーグとミシェル・ドッカリーをメインキャストに迎え、アラスカからニューヨークまで事件の重要参考人を移送する飛行機のなかで繰り広げられる騙し合いを描くサスペンス・アクションだ。
初日から3日間の成績は3161館で興収1158万ドル。“初登場1位”の作品の興収としては『マジック・マイク:ラストダンス』(23)の830万ドルに次ぐ、この2年間で2番目に低い数字に。もっとも、これは半ば押し出されるようなかたちで1位になったから低く見えるのであって、ギブソンの監督作品は『ハクソー・リッジ』とその前の『アポカリプト』(09)が共に1500万ドルほどのオープニング興収であることを踏まえれば、いつもよりやや低い程度といえよう。
ちなみに『ハクソー・リッジ』は批評家からの絶賛やアカデミー賞効果があって最終興収6720万ドル、『アポカリプト』も批評は伸び悩んだが興収5000万ドルほどでフィニッシュしている。今作は批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば批評家からの酷評が目立つとはいえ、現地メディアの報道によると観客の性別比は男女半々。おそらくキャストのパワーが集客に影響していると考えることができる。制作費は2600万ドルなので、まずはそこに到達することが大目標となるだろう。
初登場作はもう一本。6位にランクインした『Presence』は、スティーヴン・ソダーバーグ監督が“幽霊視点”で描いたホラー作品だ。1750館での公開で初日から3日間の興収は332万ドル。ソダーバーグの劇場公開作は久々ではあるが、前回の『アンセイン 〜狂気の真実〜』(18)がオープニング興収376万ドルだったので、ほぼ同水準。「ロッテン・トマト」では批評家からの好意的評価が88%なのに対して、観客からのそれは55%と、相変わらず批評家から好かれているソダーバーグ。これが興収にどのような影響をもたらすか。
第97回アカデミー賞のノミネート作品は、『ブルータリスト』(2月21日日本公開)が前週より780館、『ニッケル・ボーイズ』(2月27日よりPrime Videoにて配信開始)が前週より300館増やすなど、各々が存在感を発揮。なかでも作品賞からは漏れたものの脚本賞で候補に上がった『セプテンバー5』(2月14日日本公開)も、前週から274館増やし、興収は前週の倍以上を記録している。
1972年のミュンヘンオリンピックで起きたイスラエル選手団を狙った人質テロ事件を、テレビクルー側の視点からのみで描いた同作。昨年のヴェネチア国際映画祭でお披露目され大絶賛を集め、当初は12月中に予定されていた拡大公開が年明けに延期。おそらく現在の国際情勢が考慮されたものと考えることができるが、作品としてかなり良質なものになっているだけに、予定通りにいっていれば作品賞入りも充分にあり得ただろう。2月に再拡大が予定されているので、そこでの伸びに期待しておきたい。
文/久保田 和馬