『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』鶴巻和哉監督&榎戸洋司が制作秘話を告白!「『さすがにNG』と言われると思いながら出した企画書」
スタジオカラーとサンライズの初タッグで届けるガンダムシリーズ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の大ヒット御礼舞台挨拶が2月2日にTOHOシネマズ新宿で行われ、土屋神葉(シュウジ・イトウ役)、鶴巻和哉監督、榎戸洋司(シリーズ構成、脚本)が出席した。
本作は「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」のテレビシリーズの放送に先駆け、一部話数を劇場上映用に再構築して上映する劇場先行版。2021年公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をはじめとする「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズで監督を務めた鶴巻が監督を務め、シリーズ構成の榎戸、メカニカルデザインの山下いくとら豪華スタッフが参加。女子高生アマテ・ユズリハ(マチュ)役を黒沢ともよ、戦争難民の少女ニャアン役を石川由依、その前に現れた不思議な少年シュウジ・イトウ役を土屋が演じる。
冒頭から衝撃的な展開で、大いに話題となっている本作。1月17日より公開となり、すでに観客動員100万人を突破する大ヒットを記録している。鶴巻監督は「あくまで先行上映のつもりだったので、こんなにヒットするとは思っていなかった。ファンアートも盛り上がっている。本当にうれしい」と喜びを吐露。ステージでは、土屋が本作のアンバサダーに就任したことが発表された。鶴巻監督からタスキをかけられた土屋は「『頑張るぞ』と、ガンダムが言っている」とシュウジのセリフを交えて意気込みを語り、会場も大盛り上がり。シリーズ構成、脚本を務めた榎戸は「リアルタイムで『ガンダム』をずっと観ていた世代。最初の『ガンダム』が放送された時は、アムロと同じ15歳だった。それからずっと付き合っている。今回参加する以前から、心の中に大事なものとして『ガンダム』が常にあった感じ」とガンダム愛を口にしていた。
序盤の脚本は庵野秀明が担当しているが、鶴巻監督は「もともとはもっと短い、アバンタイトル的な感じにしようと考えていた」という。「どうしても『窮屈になりすぎちゃうな』という話を脚本の打ち合わせでしていたところ、スタッフから『独立させちゃえばいいんじゃないか』という話になって。そうしたらそこで、ピキーン!と庵野が」と庵野のスイッチが入った瞬間を明かし、会場も笑いに包まれるなか「グイグイっと入っていって『プロット、書くわ』となって、もちろん、お願いしますという感じで。プロットを書いてもらうとなったら、数日で膨大なプロットが送られてきた。めっちゃノリノリでやってくれた。あそこのシーンを書くうえで、庵野より適任者はいないんだよなと思っている」と太鼓判。
榎戸は「庵野さんじゃないと、怖くてとてもできないことをやられちゃった」と苦笑いを見せると、鶴巻監督も「僕なら、あそこまでできない。もうちょっとカッコつけちゃうなと思う。『エヴァ』から解放された庵野は、リミッターが外れている状態。『トップをねらえ!』や『ふしぎの海のナディア』などオタク感全開だった時の庵野が戻ってきているなと思いました」と楽しそうに話す。榎戸は「庵野さんから見ると、鶴巻監督や僕は富野(由悠季)監督に遠慮しているように見えるらしくて。いつも『遠慮しなくていいんだよ』と言う」と続いていた。
本作の企画の経緯について、鶴巻監督は「うちのプロデューサーに、サンライズさんから『カラーで、鶴巻でガンダムをやらないか』という話があった。ガンダムには宇宙世紀とオルタナティブと言われている話があって、サンライズさんからどちらをやれという指示があったわけではないけれど、こっちでしょうと思っていた。向こうからはさすがに『NGです』と言われると思いながら出した企画書」と告白。
企画の内容を聞いて「一瞬、頭が真っ白になった」という榎戸は、「誰もやろうとしなかった試み。おもしろいなと思った。いまは『ガンダム』をやるうえで最適解かもと思えてきた」と目尻を下げ、「『ガンダム』って人を本気にさせる」と妥協せずに愛情やこだわりを込めた様子。鶴巻監督も「これくらいの男の子というか、ずいぶん歳なのであれですが(笑)、これくらいのアニメ好きな人だと『ガンダム』は骨身に染みている。ほぼ自分と一体化してるみたいな状態で『ガンダム』のある世界で育ってきた」とうなずき、「それぞれ自分のなかの『ガンダム』がある。こだわりポイントも、こだわらないポイントも人それぞれ違ったりしている。スタッフと打ち合わせをしている時も、常に発見がある」としみじみ。
シャア・アズナブルやシャリア・ブルといった往年のキャラクターも取り上げた作品となるが、アニメ「フリクリ」でもタッグを組んでいた鶴巻監督と榎戸は「『フリクリ』をやっていた20数年前から、鶴巻監督とは『ガンダム』の話をしていて。SFが好きでアニメ業界にいたら、『ガンダム』のことは意識している。そのころからシャリア・ブルでリメイクを作ったらおもしろいねという話をしていた」(榎戸)のだとか。鶴巻監督は「樋口真嗣監督も、シャリア・ブルにフィーチャーした作品があっていいんじゃないのという話をしていたらしい。1話しか出ていないキャラクターだけれど、掘り下げてみたいというのがあったんだと思う」と話していた。
すでに「3回観た」という土屋から、「マチュとニャアンが出会うシーンで、大切にしたことはありますか?」と質問もあった。榎戸は「あのシーンは、鶴巻監督のアイデア。改札を飛び越えて、2人がぶつかるのが出会い。それはすごく鶴巻監督らしい。『フリクリ』をやっていた時に、主人公の男の子がハル子というヒロインと出会うシーンで(鶴巻監督から)『ベスパに乗った女の子が、ギターで主人公の頭を殴りにくるんだよ』と言われた時に、頭が真っ白になった(笑)。アクション込みで出会うのが、鶴巻監督の主人公の出会わせ方なんだなと思った」と分析。鶴巻監督は「意識しているわけじゃないけれど、結果的にこうなっている。いま聞くと、そういうことなんだなと思った」と榎戸の言葉に納得していた。
2人のトークに興味津々で聞き入っていた土屋だが、「ガンダムに乗るとわかったのは、オーディションの段階。えっ!と思った。俺が受ける役、ガンダム作品のガンダムに乗る…最初はわからなかった」と意味がわからなくなるほど驚愕したとのこと。「これはまたとないチャンスだぞと思いながら、オーディションを受けた。受かった時には『現実かな』と思うくらいとても興奮しました」と振り返った。そして土屋から、この日が誕生日となる鶴巻監督に花束を贈呈するひと幕もあった。司会から「何歳になりましたか?」と問われると、「17歳にしておこうかな」と茶目っけたっぷりに微笑んだ鶴巻監督。最後には「映画でしか観られない繋ぎ方、シーンという感じになる。目に焼き付けてほしい」と呼びかけ、大きな拍手を浴びていた。
劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』は上映中
テレビシリーズ「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」は日本テレビ系列にて放送予定
取材・文/成田おり枝