【ミニシアターランキング】名匠ペドロ・アルモドバルの新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が初登場1位!1月31日~2月2日の成績を紹介

【ミニシアターランキング】名匠ペドロ・アルモドバルの新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が初登場1位!1月31日~2月2日の成績を紹介

1月31日から2月2日までのミニシアターランキング(公開30館以下スタートの作品が対象)が興行通信社から発表された。今週も新しい3作品が上位に食い込み、順位にも大きな変動が。スペインの名匠ペドロ・アルモドバルの新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(公開中)が堂々の1位に輝き、3位にアルゼンチンの鬼才デミアン・ルグナのオカルトホラー『邪悪なるもの』(公開中)がランクイン。5位に数々の世界の映画賞に輝くマレーシア・台湾の合作映画『Brother ブラザー 富都のふたり』(公開中)が飛び込んだ。だが、そんな新勢力の波にも揺れ動くことなく、公開3週目の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(公開中)が前週と同じ2位の座を死守する大健闘!先週1位の『SK∞ エスケーエイト EXTRA PART』(公開中)も順位を3つ落としたものの、多くの熱狂的なファンに支持され、まだまだ勢いがある点にも注目したい。

【ミニシアターランキングトップ5】(1月31日~2月2日)

1位『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』(NEW)

2位『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(先週2位)

3位『邪悪なるもの』(NEW)

4位『SK∞ エスケーエイト EXTRA PART』(先週1位)

5位『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』(NEW)

1位の『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』は、1999年の『オール・アバウト・マイ・マザー』で第72回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したペドロ・アルモドバル監督が、誰もが等しく迎える人生の終焉にスポットを当てた崇高なヒューマン・ムービー。重い病に侵され、安楽死を望むマーサ(ティルダ・スウィントン)と、彼女に「“その日”がくる時に隣の部屋にいてほしい」と頼まれて寄り添う親友の小説家イングリッド(ジュリアン・ムーア)。そんな短い数日間のドラマを通して、アカデミー賞女優のスウィントンとムーアがかけがえのない友情を繊細に紡ぎだしていく。果たして、“その日”が訪れた時に、どんな想いが胸に湧き上がるのか?アルモドバル監督初となる全編英語劇としても話題の本作を観ながら、死を理解し、生と死の問題をいま一度じっくり考える。そんな時間を求める大勢の人たちが映画館に足を運んでいるようだ。

【写真を見る】『テリファイド』のデミアン・ルグナ監督が“悪魔憑き”の感染を描いたオカルトホラーが3位に登場
【写真を見る】『テリファイド』のデミアン・ルグナ監督が“悪魔憑き”の感染を描いたオカルトホラーが3位に登場[c] 2023 Digital Store LLC

3位の『邪悪なるもの』は、『テリファイド』(17)で注目を集めたデミアン・ルグナ監督が、悪魔に魂を乗っ取られて肉体が腐敗してしまう“悪魔憑き”の感染が蔓延した世界を舞台に描く絶望のオカルトホラー。村外れで変死体を発見したペドロ(エセキエル・ロドリゲス)とジミー(デミアン・サロモン)の兄弟は、古くから伝わる7つのルールに従って近隣住民の家族に出た“悪魔憑き”を処理しようとするが、伝承を信じない人々の軽率な行動で“悪魔憑き”が逆に増大。兄弟は愛する家族を守るために、アルゼンチンの街を彷徨い歩くことになる。生々しい物語と手加減なしの残虐描写で2023年シッチェス・カタロニア国際映画祭ではラテンアメリカ作品では初となる最優秀長編映画賞を受賞。米映画レビューサイトRotten Tomatoesでも96%の大絶賛という高評価を得ているだけに、日本でもホラー映画ファンが公開を待ち望んでいたに違いない。

スラム街で暮らす兄弟の過酷な運命を描いた『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』
スラム街で暮らす兄弟の過酷な運命を描いた『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』

5位の『Brother ブラザー 富都(プドゥ)のふたり』も兄弟の映画だが、こちらはホラーではなく、マレーシアの首都クアラルンプールのスラム街・富都(プドゥ)で暮らす兄弟の過酷な運命を描いた力作。身分証明書(ID)を与えられなかったせいで、貧しい生活を強いられたろう者のアバン(ウー・カンレン)とアディ(ジャック・タン)の兄弟。アバンは市場で働きながら生計を立てていたが、裏社会とつながるアディの行動は常に危険と隣り合わせ。そんなある日、実父の所在が判明したアディにはID発行の可能性が出るが、ある事件が、兄弟の未来に暗い影を落とす。重苦しい物語でありながらも、確かな描写と俳優陣の力強い芝居で世界中の映画ファンを魅了し続けてきた。兄のアバンを演じた台湾の人気俳優ウー・カンレンが2023年の第60回金馬奨で最優秀主演男優賞を受賞したのを皮切りに、イタリアのウディーネ・ファーイースト映画祭でマレーシア映画として初の最高賞含む、3部門を受賞。その後もアメリカ、スイス、中国、香港、台湾、フィリピン、そして日本と、全世界16の映画祭で19の賞を獲得。本作はその完成度の高さと力量が静かに浸透し、今回のスマッシュヒットにつながったようだ。

続いて、今週末に公開予定のミニシアター映画をピックアップ!2月7日(金)には俳優、北村匠海の短編映画監督デビュー作『世界征服やめた』が待望の公開。2011年に不慮の事故で逝去したポエトリーラッパー、不可思議/wonderboyの同名曲に強い影響を受けた北村が、プライベートでも親交が深い萩原利久を主演にどんな映像世界を作り上げたのか興味深い。舞台挨拶なども予定されている公開初日には熱狂的なファンの熱気で映画館は包まれるに違いない。また、翌8日(土)には第77回カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品されて話題を集めたチリの監督コンビ、クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの長編第2作『ハイパーボリア人』も登場。「クトゥルフ神話」に登場する架空の民族“ハイパーボリア人”をタイトルの掲げた本作は、実写、アニメ、人形、16ミリフィルム、ビデオ、デジタルなどあらゆる映像表現を駆使して描く、なにが飛びだすかわからない“闇鍋”映画。その独創的な世界は観た人にしかわからない。この快作が、来週のランキングにどんな影響を及ぼすのか楽しみだ。

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文/イソガイマサト

●全興連ミニシアター支援プロジェクト「#ミニシアターへ行こう」
詳細:https://moviewalker.jp/special/minitheater/

●#ミニシアターへ行こう 公式アンバサダー募集ページ
詳細:https://reg18.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=ocnf-maqfkc-83d9b2cf8fbc22ac3cabe97c4e047659

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