岡田将生が最低のクズ男に!『伊藤くん A to E』の撮影に密着
柚木麻子の同名恋愛小説を、岡田将生×木村文乃W主演、廣木隆一監督で実写映画化した『伊藤くん A to E』(18年1月12日公開)の撮影現場を直撃。8月某日、都内のオープンテラス付きカフェで撮影されたのは、イケメンだが自意識過剰で女たちを振り回す“伊藤くん”役の岡田と、彼から都合良く扱われる女・島原智美役の佐々木希との共演シーンだ。伊藤くんのクズぶりと、尽くす女・智美の健気さに何ともやるせない気持ちになる一幕だった。
好きになった女にはとことんのめり込むタイプだが、それ以外の女には周りがドン引きするような扱いをしてしまう伊藤くん。本作は、彼を巡る5人の女の恋心や苛立ち、嫉妬、執着、優越感などを赤裸々に描いた恋愛ミステリーだ。
佐々木演じる女・Aをはじめ、志田未来演じる自己防衛女・B、池田エライザ演じる愛されたい女・C、夏帆が演じるヘビー級処女・D、そして木村文乃演じる崖っぷち脚本家の毒女・矢崎莉桜が女・Eとなる。莉桜がA~Dの女の体験を脚本化していくという構成で、莉桜視点から描かれた同名深夜連続ドラマも全8話で放送された。
カメラは最初にカフェの客を演じるエキストラがドアを開けて入ってきたところを捉えた後、奥にいる伊藤くんと智美の方へとゆっくり移動していく。その一連の動きを何度か撮り直した後、改めてふたりの会話を長回しで撮り上げていく。廣木組で特筆すべき点はこういう流麗なカメラワークだ。
佐々木が演じる智美は高級バッグ店で働く販売員で、伊藤くんに呼び出されるといつでも飛んでいく都合のいい女。そんな智美は、脚本家志望の伊藤くんのためにセミナーの受講料20万円を用意してきたが「そういうの、息が詰まる」と冷淡に突っぱねられてしまう。
伊藤くんは智美の顔をきちんと見もせずに、面白くなさそうな顔でコーヒーカップをかき混ぜる。その様子を見るだけで、伊藤くんの智美に対する無関心さが伝わってくる。さらに「ここまでしてもらったって困る」と逆ギレしそうになる伊藤くん。智美は「じゃあ、私が使う。自分のために」と立ち上がり「じゃあね」と颯爽と出ていくが、その表情は何かが吹っ切れたような清々しさが感じられた。
撮影の合間に佐々木にインタビューし、岡田の印象や、本作の共感ポイントについて聞いた。「私自身からすると伊藤くんというキャラクターは本当にひどいなと思います(苦笑)。こんな男性いるのかな?というか、いるだろうとは感じますが、演じていて心がズキズキと痛みました」。
佐々木と岡田は、ドラマ「小さな巨人」以来の共演となったが、そのドラマとは全く違うキャラの痛い男ぶりに驚いたそうだ。「岡田さんがとてもハマっていて、実際にとても嫌な人に見えました。撮影前日にスタッフさんから『岡田くん(演じる伊藤が)、けっこうむかつくと思うから早く一緒にお芝居をしてみてほしい』と言われていたので、私もそういう岡田さんを見るのが楽しみでした」。
初めて廣木組に参加した佐々木。「ドラマは細かくカットを割るという印象が強かったのですが、廣木監督はドラマの時から1シーンを最初から最後まで全部通しでやるという映画のような撮り方をされていたので、すごく新鮮でした。また『お芝居を大きくしなくていい。ストレートでいいんだ』とも言われ、ナチュラルなままで演じられたことも良かったです」。
佐々木は智美を含めた5人の女たちについて、要所要所で共感できたそうだ。「様々なキャラクターがいるので、どこかで『この気持ちはわかる』と部分的に引っかかってくれるのではないかと。伊藤くんに関しても『ああ、こういう男性いるなあ』と思っていただけるのではないでしょうか」。
痛々しい智美役を演じた佐々木は、廣木監督から「悲しい役が似合うね。佐々木希のイメージと真逆な切ない役、健気な役が似合う」とお墨付きをもらったものの「この前もどなたかに言われたのですが、自分では意識していませんでしたし、意外でした」と苦笑い。
「今よりも若い時はきらびやかな役をいただくことが多かったので、そう言われたことはちょっと嬉しかったです。今までの経験が活かされているのであれば良かったなと思います。役柄を演じることで普段の自分では味わえない経験ができますからとっても楽しいです」。
伊藤くんを取り巻く4つのエピソードが絶妙に絡み合い、予想もできない結末が待ち受ける『伊藤くん A to E』。リアルな“恋愛あるある”がちりばめられた作品となりそうで今から楽しみだ。【取材・文/山崎伸子】