食べてわかった!創業74年、映画になったパンが愛される理由
東京・浅草に「ペリカン」というパン屋がある。創業74年の老舗で、売っているのは食パンとロールパンの2種類だけ。だが、朝8時の開店前に長蛇の列ができるほどの人気店なのだ。そんな「ペリカン」が長く愛される秘密に迫った映画『74歳のペリカンはパンを売る。』が現在話題を集めている。
お昼前には完売。入手のコツは?
1942年(昭和17年)の創業当初、「ペリカン」はジャムパンやクリームパンなども扱っていたという。ところが昭和30年代に入り、町にパン屋が増え始めると、人と競うことがきらいな2代目店主・渡辺多夫は、他店と競合しないよう喫茶店やホテルへの卸しを主に、食パンとロールパンに絞って販売するようになったという。
たった2種類でも、お昼前には売切必至。“入手困難なパン屋”としても有名となった「ペリカン」。そこまで人に愛されるパンの味はどうなのだろうか?実際に筆者も何度か昼前に足を運んだものの買えずじまいの日々が続いた。そこでお店の人に伺うと“予約ができる”ことをいまさらながら知り、後日やっと無事にパンにありつけた。予約購入できるのも、争いをきらった2代目の精神を受け継いでのことかも?
毎日食べられる、やさしい味わい
購入したのは、シンプルな食パン(1斤)と10コ入りの小ロール。どちらも表面はしっかり、中はもっちりとした食感で“これぞパン!”“シンプル・イズ・ベスト”とでもいうべき味わい。これは毎日食べても飽きのこない味だ。食パンはジャムをつけて食べたのだが、味の濃いジャムに負けないほどのパンのうま味がしっかり感じられた。
「ペリカン」のパンは、そのままでも十分おいしいのだが、食パンもロールパンも公式サイトの紹介では“トーストすると…”さらにおいしくなるそうだ。74年も変わらぬ味ということは、高度成長期に暮らした人々が食べていた味ということで、どこかノスタルジックな気持ちが食べながら芽生えてくる。
(映画を)観てから味わうか、(パンを)味わってから観るか?まるで何かのCMみたいなフレーズだが、まずは一度味わってもらいたい「ペリカン」のパン。予約は1か月前から前日まで電話でも対応されているそうなので、確実に入手したい人は予約してみるのがおすすめだ。【取材・文/トライワークス】